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第2話

西洋風な家の中で
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2022/04/11 11:11
……クラく、ツメたく……


「ッはっ!」

レナは目を覚ました。
天井は木製。学校ではない。明らかに違う。
ふかふかなベッドの上にいる……
匂いも少し図書室とは違い、美味しそうな海鮮料理の匂いが今は漂っている。

(……起きるか)

目の前は西洋風な家の中。

(本当にここは異世界なのかな……)

レナは本当に異世界に来てしまったかもしれないと思った。

ふと、隣を見たら……

「……なっナオくん!?!?」
(あっ……大きい声出しちゃった……)

「はっ!あ、入羽方いりはねがた!お前無事だったんだな!」

「……うん…………」

「なんだよ。入羽方。そんなにオドオドしちゃって。まあこんな所に来たら無理もないのはわかるが……」

「いやそういう訳じゃ……いいやなんでもないんだけどッ……こんな私と一緒にいるのは絶対嫌だろうな……って」

「あぁ……別に俺はそんなの気にしないぞ?もし俺がお前を裏切ったら殺してやっても別に構わない。それを宣言してやる。それとここまで来て気にするやつが居たらそいつの気が知れん。」

(はあ。こう言ってもきっと嘘なんだろうな……けど今はナオくんしかいないから信じるしかないか……)
「うん。」

「起きたのかい……君ら……」

上からどことなく不思議な、少しカタコトな声が聞こえてきた

「エッアッ……」
レナはこの言葉を発してから沈黙をしてしまった。言葉が出ない。

「誰だ……まずは自己紹介しろよ……」

「私は……」

ドサッ
と、大きな音がした。

「え!?」
「は!?」
「まさか……」

不思議な声の主は下へと駆け下りた。
そして

「まだ2人、人が来るとはねえ……
まあ予想通り気絶してるなあ2人とも。」
「おーい!そこの2人!少し待っててくれるかね?」

「分かった。とりあえず待ってるよ」

「……」

「入羽方。俺らは異世界に来ちゃったのかもな……」

コクッ
「……どうしようかなこれから……」

「それは俺らで考えていこうぜ。前の世界より辛かったら戻れるように探すしかないしな。」

「うん。」


こう会話して少し時間がたち……
まあ、2人の心の中では永遠のように長い時間だと感じていたが……

「おーい!おふたりさん下に来てな〜!」

「はーい!
入羽方!下に行くぞ!」

「うん……」


2人は下に駆け下りた。

「あっ!ナオだ!それと入羽方さん!」

「うーん……まだ地味に頭が痛いなあ……
あっ!レナちゃんとナオくん!」

「エッアッ………」
(えぇ……陸希ろくきくんってあいつの友達だよね……どうしようこの逃げ場のないところでされたら……)

「あっやっぱりか……というかこの2人も来たんだな……俺達も来たばかりでまだ全然このこと把握出来ていない。」

「会話してる中お邪魔するけど4人とも。並んでおくれ。」

「うん……」
「おう」
「はーい」
「うん」

「あたしの名前は 李 繫(リー ケイ)って言うんだ。少し日本語は不自由だけどよろしくな。
お前さんたちも名を名乗ってくれると有難い。」

「……っ私は入羽方いりはねがたレナって言います……」

「俺はナオだ。趣味はゲームをすること。」

「私はアオイ。趣味は手芸です!」

「僕は陸希ろくき。趣味は……まあ弓道とかかな……?」


繫「分かった。ありがとう。じゃあさ、ここについて知りたいよな?教えるわ」


―ここは上海幻朧街。
清の上海という街にある場所だね。
今ここら辺は租界をしてるから西洋風なところも沢山あるのよ。―
あっ。君らは2000年代から来たんだよね?年代を教えてあげるよ。


―今ここは1855年さ。―


アオイ「え。」

ナオ「は!?」
(え。異世界までは行けてないのかよ……)

レナ「!?」
(え……まだこの時日本って江戸時代よね……黒船来航から2年後……)

陸希「は!?嘘だろというか世界線は僕らのところと同じなのかよ!?」



(ここの方が……居心地は少しいいな……このまま戻れなかったらいいのに。タノシイ生活に……カナシイは無くなったらな。)

(……魔法とかそういうのはないんだろうな……
けど……いや、でもあいつを今なら……私も救われるかもしれないし……いやでもそうしたら……
っはあ……
テンシとアクマ。改めて再認識できたよ。)

(……ここでもどうせ私なんかは受け入れられない。むしろ前の方が理解されてるのかもしれない。それなら戻りたいな……こう思ってしまうのもココロとカラダが……)

(……ここに居れたら。ずっと居れたら。ホントは知られない。だからこそミンナから疎外されない。オモテだってたてるさ。秘密にすれば……)


みんなのココロは

……少しアカるく、少しツメたく……



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