第38話

第 36 話
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2023/11/23 13:48
 

───確かあれは、私が8歳くらいの頃だったと思う



































私の友達に、結月ゆづきという子が居た
 
結月
いたっ…やめてっ…
もぶ
お前が弱いのが悪いんだろーw
羽月 あなた
おい!結月ちゃんを虐めるな!
もぶ
げっ!羽月が来たぞ!逃げろ!


あの子はいつも、虐められていた




学校でも、公園でも、帰り道でも。





おそらく、あの子が内向的な性格で反撃してこないと思われていたからだろう




私はそんな結月ちゃんが放っておけなかった




だから、いつも一緒にいるようにした





結月
いつもありがとう、あなたちゃん!
羽月 あなた
大丈夫だよ!
羽月 あなた
いつでも私を頼ってね!









羽月 あなた
私があなたのヒーローになるから!!




















今思えば あの頃から歯車が狂い始めていたのかもしれない



















私が10歳になった頃
この頃も変わらず、結月ちゃんのことを守っていた









ある日、いつも通り学校に行くと──────


























私の机に沢山の悪口が書かれていた


























皆がニヤニヤしてこっちを見ていた





この日から、いじめのターゲットは私へと変わった





心の底から あいつらが気持ち悪かった





きっと皆、あの子を虐めようとしても私がいつでもどこでも助けに来るって分かったからだろう





まあでも、結月ちゃんがこれでターゲットから外れるのなら問題ない





あの子は例え私が虐められていようと、前と同じように私と仲良くしてくれるだろう





………そう思っていたのに





虐められ始めてから





結月ちゃんが口を聞いてくれなくなった





だから、仲良くしたくて





何回も何回も、話しかけた


















───そして1ヶ月が経った頃





バシャッッッ!!





羽月 あなた
………え





結月




                          結月ちゃんに水をかけられた





羽月 あなた
なんで…結月…ちゃ…
結月
もうやめてよ!!
結月
あなたが私に関わってくると、また私が虐められちゃう!!

結月
やっと解放されたのに!!!!

羽月 あなた
……
結月
気づいてなかったの?!
私はあなたを身代わりにしたのよ!!
結月
もうわかったでしょ?!私に話しかけてこないでよ!!
羽月 あなた
ご…め、…ん




























……あぁ、そっか





きっと…最初から結月ちゃんは…





私の事、友達なんかじゃなくて……



















都合が良い人間だって思ってたんだ



















よく考えたら、あの子に一回も友達なんて言われてない





「ずっと友達だよ!」って言っても、あの子は気づけば違う話にすり替えていたな





話す時も、何処か遠くを見ていた気もする





…私は、何をしてたんだろう





1人で勝手に友達だって思い込んでただけだったんだ




…1人で勝手に、ヒーロー気取ってただけだったんだ





【結月は、私を売った】





その事実は変わらない





そう、絶対に。





所詮、それくらいの存在だった
…気づかなかったなんて、馬鹿だな





本当に笑っちゃうよね










私が虐められ始めてから、結月ちゃんは一瞬でクラスの輪に馴染んだ





どうして?貴方はその人たちに虐められてたのに。





ハブられているのは私1人





その時私は知った





人は簡単に裏切るものだって





私は虐められていることよりも





結月に裏切られたことのショックの方がずっと大きかった





虐めの内容も悪化していって





毎日毎日、私の外見を否定された





「白髪とか病気じゃんwww近づいてくるなよww」
「左右で目の色違うとかきもちわるーいw」





周りの皆は黒髪で





何故か白い髪の毛の私





周りの子は茶色だったり、黒なのに






私の目は、水色と白





でも外見を否定されるなんてまだ序の口で





酷い時には暴力もされた





だから、その傷を隠すために始めたのが化粧だった





幸いにも私の家は母が化粧品会社で働いていた





だから化粧品は家に持て余すほどあった





声真似だって…




" いじめられている自分 " を忘れるためだった





他の、キラキラしたキャラクターになりたかったから





























そして、中学校に入った頃





この頃に東リベに出会った





皆かっこよくて、強くて、仲間思いで、助け合って。





私が憧れているもの、そのものだった





皆みたいになりたくて





自分に自信を持ちたくて





私はコスプレを始めた





なりきっている時は、いじめの事なんて忘れられた





酷い日常なんて、視界に入れなくてよかった





いつしか、コスプレは私の心の拠り所になった





"コスプレイヤーの自分"になら、自信をもてた





だから、試しにネットに写真を投稿してみた





そうするとたくさんの反応をもらえて





心が満たされていく感じがした





長い間、否定しかされてこなかった私にとって、ネットの評価というものはとても響いた





──いじめは"反抗してこない人"がターゲットになる





理由は簡単、反撃されるのが怖いから





自分より弱い奴を虐めることで、自分が"強い人間"と偽る





私は結月に裏切られたショックで反抗する気になれなかった




だからいじめは続いていった




でも私はコスプレに出会って変わった





今まで私の心を蝕んでいった闇を、少しづつ無くしてくれた





私に、反抗するための原動力をくれた





「反抗しよう」





そう決意してから、私はとことんアイツらからの暴力にも、暴言にも。





全てに抵抗した




殴られた時には、リーダー格の奴の顔面をぶん殴ってやった




驚いた顔が滑稽だった




1度思い切り反抗してしまえば、あいつらはいじめをしなくなった




本当に小さい人間だと思った




そして、こんな小さな人間にやられっぱなしだった自分が情けなく感じた





コスプレにもし出会って居なければ



東リベに出会っていなければ




私は自分で自分を殺していたのかもしれない。



























いじめが無くなってから、また結月と話す機会が合った


結月
あなたちゃん…
羽月 (なまえ)
羽月 あなた
………なに?
結月
あの…また、お友達になってくれるかな?
羽月 (なまえ)
羽月 あなた
……



何を言ってるんだろう、この人は


結月
ほら…前は私の事守ってくれてたりしたじゃない?
結月
一度は離れちゃったけど、私はまたあなたちゃんと仲良くしたいなって…!!



…この人は同じ人間なの?

裏切ってきた癖に
また私を都合のいいように使うつもりの癖に。



騙されるわけないじゃん



羽月 (なまえ)
羽月 あなた
…聞きたいんだけど
羽月 (なまえ)
羽月 あなた
君はさ、一度裏切ってきた人間とまた仲良くしたいって思える?


結月
…え
結月
そ、れは…
羽月 (なまえ)
羽月 あなた
私は思わないよ
羽月 (なまえ)
羽月 あなた
もうあんな思いはしたくない
結月
でっでも、もう二度と私はあんな事しないからっ…!!
羽月 (なまえ)
羽月 あなた
口ではなんとでも言えるよ
羽月 (なまえ)
羽月 あなた
今こうして話すことすら嫌なのに
羽月 (なまえ)
羽月 あなた
信じろっていうの?
結月
っ…
羽月 (なまえ)
羽月 あなた
…まあそういう事だから


羽月 (なまえ)
羽月 あなた
私に二度と話しかけないでね





…この会話をしてから1週間後くらいに



私は結月が虐められているのを見かけた



その時目が合ったけど、私は助けに行かなかった



裏切ったあの子の自業自得



一人の人間にトラウマを植え付けた



その報いを、今くらっているだけ























──そう思ってしまう私は、あいつら虐めてきた奴と一緒なのかな
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