事故現場を見て、じんたんはそう言った。
そこには花束や、お供え物、じんたんへの手紙が沢山置いてあった。
こういうのを見ると、じんたんは本当に愛されていたんだなって実感する。
じんたんは幸せを噛み締めるかのような顔をしている。
そんなじんたんの横顔を見て胸が苦しくなる。
じんたんはひとつ息を吸うと、道路に向かって大声で叫んだ。
じんたんを見ると、足の方が薄ら透明になってきている。
あぁ、やっぱりこれが現実なのか。
じんたんは…あと少しで消えてしまう。
いいのか、この気持ちを伝えずにサヨナラしても。
でも怖い、最後の最後でじんたんに拒絶されたら、どうしようって。
恐怖心と焦りが俺の心をジワジワと侵食していく。
どうすればいい、どうすればいい。
でもそんな時、ふとじんたんの顔を見たんだ。
凄く、悲しそうな、辛そうな顔…
俺との別れを惜しんでいる顔。
そんなじんたんを見て、吹っ切れた。
もう後悔はしたくない。
だから、だから…
今、伝えるよ。
俺はじんたんを抱きしめた。
力強く、消えてしまわないように。
俺の心臓はありえないほどバクバしている。
でも、そんな事今はどうでもいい。
ありったけの気持ちを全部、じんたんへぶつけるんだ。
俺はゆっくりとじんたんから離れた。
じんたんは黙っている。
引かれたか、気持ち悪いと思っているのか。
すると、じんたんはゆっくりと口を開いた。
じんたんが首から下げていたネックレスのチェーンには、俺が最後に入れた指輪が入っていた。
本当は渡すはずだった、未練タラタラの指輪が。
下を向いているじんたん。
夏の暑いアスファルトに雫が落ちる。
じんたんは肩を震わせながら
ゆっくりと、俺に伝わるように言葉を紡いだ。
じんたんは俺に勢いよく抱きついた。
そして、涙でボロボロの顔を上に上げながら大声で言った…
俺はじんたんを抱き締め返した。
もう、時間がやってくる。
じんたんは俺の腕の中で泣いた。
今、世界一幸せ者だと思う。
だって…叶うはずのない恋が実ったから。
じんたんと見つめ合い、そして目を瞑る。
じんたんの唇と自分の唇が重なった。
じんたんは涙を流しながら何度も頷いてくれた。
じんたんは最後に満面の笑みでピースをした。
力いっぱい叫んでピース。
じんたんは段々薄くなっていき…
光の粒となって消えていった。
俺はその場にしゃがみ込んで泣いた。
これは悔し涙じゃない。
幸せな涙だった。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
スカイハウスに帰ると、俺はあるものを見つけた。
見覚えのないSDカード。
俺はすぐにカメラにセットして再生した。
画面に映ったのはじんたんだった。
じんたんはずっと喋っていた。
俺が寂しくならないように、言葉を切らせないように。
そして、動画が終盤に差し掛かった時…
ブツっ…
動画は終わった。
俺は涙が止まらなかった。
いつか必ず、必ず、もう1度2人で会いたい。
俺はベランダへ出て、空を見上げる。
満点の星空だ。
一瞬、空高くに浮かんでいる星が光ったような気がした。
俺は高く高くピースを掲げる。
君との思い出を忘れないように。
ありがとう、じんたん。
愛してる、じんたん。
この3日間、本当に幸せだった。
俺はこの幸せを一生忘れない。
また、どこかで君に会えたら、どんな事をしようかな?
END
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。