第56話

M❤︎占い師1
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2025/10/18 11:00 更新




みなさんは占いを信じますか?

私は信じています。


私の両親は、私以上に占いのみを信じてならないのです。






私はとても病弱です。


さらにはお父様が会社経営をしており、

財産や人にはとても恵まれた環境で育ってきました。



私は一歩も外に出られず、病院にも行けず、

両親と付き人、易者様にのみ会える、とても小さな世界に住んでいます。

*易者…占い師のこと



みなさんが住む情報社会とは違い、

まだ大正の時代ですから、何もすることがないのです。


毎日窓の外を眺めては小鳥の囀りを聴き、

木々を眺めて四季の移ろいを感じることだけが私のできることです。




そんななかで私のお友達でもある、付き人の若井は

私に広い世界を教えてくれます。




h
お嬢様、本日はかすてらというもののお話をいたします。
Me
かすてらとはどういうもの?
h
かすてらとはお菓子でございます。
Me
和のものではなさそうね…?
h
はい、南蛮菓子だそうです。
Me
色は?形は?味はどんな感じだったの?
h
長方形で、上辺、底辺が茶色、それ以外は黄色でした。
味は蜂蜜のように甘くて、特に茶色の部分は砂糖が溶けたような味で美味しかったです。
Me
そう…。
私も元気になったら食べてみたいわ。




若井が食べたもの、見たもの、行ったところ。

若井の全ては私の全てに変わっていくの。



それが私の、小さいけど愛のある素敵な世界だったわ。






︎︎
お嬢様。
私はもう充分にお勤めを果たすことができなくなりました。
代わりとして明日からは新しいものが参ります。
私よりも遥かに若く、卜占ぼくせんにも富んでいます。
*卜占…占いのこと
Me
そうなのね…。
あなたにはとても世話になったわ。
また顔を見せてちょうだい。




これが転機だったのかもしれません。



生まれてから17年間私の未来を見続けてくれた易者が

私のそばを離れることになったの。



m
初めまして。
本日からお嬢様の卜占をいたします、大森元貴と申します。
師匠から受け継ぎ、同じ術法を使って卜占を行います。
よろしくお願い申し上げます。
Me
…よろしく。



私の知る人は両親と齢25の若井、62の易者のみだったのに

前触れもなく、新しい人がずかずかと私の世界に入ってきた、とこの時は思いました。


Me
若井、いつものようにしてちょうだい。



若井もきっと、

私が混乱していることに気づいているのでしょう。



易者が来る時はいつも、ドアのそばにいるのに

今は私のベットの横から離れない。



m
私が卜占をする際は、当人以外は部屋から出ていってください。
h
Me
若井、言われた通りに。
h
はい。




初めて会った人とこれから2人きりになるというのに怖くない理由がないわ。


それでも私が少しでも元気になって、私に関わる全ての人がもっと自由になれるのなら、

できることはなんでもしたいの。




m
はぁ…。
こんな口調やってられない。
Me
へ…?
m
端的に言うけど、卜占なんてただのお遊び。
そんなんで病気なんて治りゃしない。



心のどこかではわかっていたけれど、

直接言われてしまうととても心が痛かったわ。



だって

私の17年間はどこに行くと言うの?




Me
私の…私の17年間はなんだったの?泣
m
あなたはもっと世界を見た方がいい。
こんな窓一つの部屋から見える景色なんてものは、この世界の一寸にも及ばない。
Me
そんなの…そんなのわかってるわよ!
私だって外に出たいし世界を知りたいわ!
かすてらも食べたいし、桜を見ながらお団子を食べたいの。



それから彼は少し黙って、それから言ったの。


m
この薬であなたは自由になれる。





少し長くなると思いますが、お付き合いください

お話を書きながら、付き人若井と結婚したくなったので(私が勝手に)これが書き終わったら、付き人若井とのお話も書きたいと思います♪

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