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第1話

"死に戻り"
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2026/06/14 14:09 更新
◆◇◆◇◆◇
天馬司
いやー、今日の公演も素晴らしかったな
最後の公演が終わった帰り道。アクロバットな動きを多数行ったためくたびれ切った体をゆっくりと動かしながら、皆と今日のことを振り返る。
神代類
そうだね。三日月組でも、とても貴重な体験をさせてもらったよ
鳳えむ
うんうん!。えっと………次はたしか
草薙寧々
………『森ノ宮歌劇団』
神代類
まさか、あんな場所で修行をさせてもらえるとはね
草薙寧々
うん……。少し……緊張するけど。
次の公演も、頑張ろう
鳳えむ
もーっともーっと、
たのしい公演にしようね!
天馬司
あぁ、そうだな!
夢を語る度。次の修行の場での意気込みを告げる度。段々と皆の呼吸が一つになり、纏う熱量が大きくなる。着々と、少しずつでも確実に夢へ繋がる一歩を、踏み込めている。
天馬司
(………ここまで長かったような、あっという間だったような)
天馬司
(沢山………壁に衝突することもあったが、
 今は皆、肩を並べ夢への道を歩んでいる)
天馬司
(この仲間となら、きっと……………)
信号が青に変わる。夢への気持ちと今回の公演の達成感を噛み締めながら、横断歩道を渡たり始めたその時だった。




神代類
っ………………司くん、後ろ…………!!
天馬司
_______え
 
時が、止まって見えた。
男と目が合う。片手にはハンドル、そして片手にはスマホ。
電話でもしていたのだろうか。スマホの画面が光っている。その青白い光がどこか不気味に見えた。
気付けばオレの体は後方へと呆気なく吹っ飛ばされ、アスファルトの地面に強く打ち付けられていた。痛みを感じるより先に体が壊れ、赤黒い血が静かに服を濡らす。

衝撃で体を起こすことができない。指一つ満足に動かせない体勢のまま、首をゆっくりと起こして周囲を確認する。
天馬司
…………な、にが………起こ"っ……て
鳳えむ
つ、司くん!!!
草薙寧々
…………ぁ………つか………つか、さ!!!
天馬司
(えむ…………寧々………?)
必死にオレの元へ駆け寄ってくる2人の顔が歪む。視界がぼやけ、脳が五月蝿く警鐘を鳴らしている。体の異常を脳が察知した途端、尋常ではない痛みが襲いかかる。
天馬司
ぐ……………かはっ…………
天馬司
こんな…………ところ、で
天馬司
オレ………は
意識が遠のく。思考が薄れていく。声は消え、音は途絶え、そして痛みでさえ感じなくなっていく。
そうして、呆気なく、中途半端な所でオレ__天馬司の人生は終止符を打たれる。




________はずだった
 
◆◇◆◇◆◇
鳳えむ
みんなでやったほうが楽しいもんね!
それじゃ、さっそく探しにいこー!
天馬司
……………………
天馬司
は、
えむがオレに微笑みかけている。
純粋無垢なその目で。いつもと変わらないその笑顔で。オレを見て、手を引き、何かを促している。
鳳えむ
司くん………?。びょびょびょーんってお顔してるけど、なにかあったの?
天馬司
あ……………いや………その
天馬司
………って、ここは
ワンダーステージ………ではないか?
天馬司
なぜオレはこんな所に………
鳳えむ
……………?。司くん、どうしちゃったの!?
天馬司
いや……、どうしたって。さっきまでオレ達は
天馬司
オレ………達は
心臓の鼓動が速まる。どくどくどくどく、数秒前の恐怖や痛みが鮮明に頭をよぎり、オレの体を侵食していく。
天馬司
(あの時…………オレは、トラックに)
天馬司
(なのになぜ…………。これは、夢なのか)
天馬司
(それとも、今までの方が夢……………?)
天馬司
…………………
鳳えむ
……………司くん、大丈夫?
えむは困惑と恐怖で頭を抱えるオレの顔を心配そうに覗き込み、そっと手を差し伸べた。オレより何回りも小さな手が、あたたかくオレの手を包み込む。
鳳えむ
ごめんなさいっ。無理………言っちゃったよね
天馬司
えむ…………
鳳えむ
でもでも!。あたし、ずっと夢見てたんだ
鳳えむ
いつかみんなで、ここで
とーーーっても楽しいショーをしたいって
鳳えむ
見てる人、みーんな笑顔にできちゃう
鳳えむ
そんなショーを!
天馬司
…………………
えむの言葉はこんなに真っ直ぐで、明るくて、あたたかくて。いつもオレ達の心を支えてくれる。前を向かせてくれる。そのはずなのに。
ひどく、恐怖してしまう。
天馬司
(えむは…………えむは一体、
 何を言っているんだ………?)
天馬司
(どうして、こんなに必死に
 ワンダーステージに…………)
天馬司
(これではまるで……………)
 
_____出会ったばかりの頃と同じじゃないか
 
鳳えむ
司くん!。それじゃ、いっしょにショーをしてくれる人を探しにレッツゴー☆
天馬司
おわっ………ちょ、えむ。
そんなに強くオレの腕を引っ張るな
考えている隙も与えず、えむはオレの手を引いてぐいぐい進んでいく。この強引さ、必死さ。初対面の時と同じだ。
天馬司
おい………すまんが、状況を
鳳えむ
早くみんなでたっくさんショーをしようね!
天馬司
ちょ、人の話を聞けええ!!!
鳳えむ
司くん、見て見て!。
小さいロボットがいっぱいいる!
天馬司
…………ロボット、だと
気付けば、あっという間にワンダーステージから離れた、フェニランの中央である噴水前まで連れ出されていた。

えむがはしゃぐ方を見ると、見覚えしかない紫色の青年が楽しげに機械たちと戯れている。
神代類
フフ、今日の彼らは上機嫌だ。
何故って?。もちろん、
ここでショーができるからさ
天馬司
…………お前は何を言ってるんだ?
神代類
さあ、機械仕掛けの名優達、
ショウタイムの始まりだ
我らが『ワンダーランズ✕ショウタイム』の演出家である男は、怪しげな笑みを浮かべ周りを飛び回るロボット達に合図を送った。

その瞬間ロボット達は男の指示に合わせ、飛び回り、軽やかに踊り、小さく舞う。どこか既視感ある光景だった。
鳳えむ
ねぇ、司くん。あの人____
警備員
コラーーー!
神代類
おっと。邪魔が入ってしまったね。
この続きは、また次回にしようじゃないか
警棒を持ち追いかける警官から余裕そうに逃げ、男は微笑みながらそう言う。
天馬司
…………おい、待ってくれ!
神代類
さて、錬金術師のショーは成功したのだろうか?。想像して待っていてくれたまえ!
天馬司
あ………こら、待てと言っているだろう!!
男を必死に引き止めようとしたが、逃げ足が速すぎる。おまけに、こちらに見向きもしないと来た。
天馬司
(おかしい………。類の視界に、オレ達は確実に入っていた。なのに話しかけもしないとは)
天馬司
(それに………まず、オレはなぜフェニックスワンダーランドにいるんだ。
オレ達はとっくにここを離れ…………)
おかしい。非現実的だ。夢としか言いようがない。非科学的で、とてもじゃないが真実とは思えない。
だが____えむの反応、この場所、類の行動から、
嫌でも理解するしかない。
天馬司
(オレは………死んで、戻ってきたというのか)
天馬司
(それも、『ワンダーランズ✕ショウタイム』結成前のこの時に)



これを、"死に戻り"とでも名付けようか。
生命に絶対的な終焉をもたらす死を回避し、そして過去へ飛ばすこの不可思議な現象。
これが後にオレを絶望へと誘うとは、この時のオレは思いもしなかった。

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