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最後の公演が終わった帰り道。アクロバットな動きを多数行ったためくたびれ切った体をゆっくりと動かしながら、皆と今日のことを振り返る。
夢を語る度。次の修行の場での意気込みを告げる度。段々と皆の呼吸が一つになり、纏う熱量が大きくなる。着々と、少しずつでも確実に夢へ繋がる一歩を、踏み込めている。
信号が青に変わる。夢への気持ちと今回の公演の達成感を噛み締めながら、横断歩道を渡たり始めたその時だった。
時が、止まって見えた。
男と目が合う。片手にはハンドル、そして片手にはスマホ。
電話でもしていたのだろうか。スマホの画面が光っている。その青白い光がどこか不気味に見えた。
気付けばオレの体は後方へと呆気なく吹っ飛ばされ、アスファルトの地面に強く打ち付けられていた。痛みを感じるより先に体が壊れ、赤黒い血が静かに服を濡らす。
衝撃で体を起こすことができない。指一つ満足に動かせない体勢のまま、首をゆっくりと起こして周囲を確認する。
必死にオレの元へ駆け寄ってくる2人の顔が歪む。視界がぼやけ、脳が五月蝿く警鐘を鳴らしている。体の異常を脳が察知した途端、尋常ではない痛みが襲いかかる。
意識が遠のく。思考が薄れていく。声は消え、音は途絶え、そして痛みでさえ感じなくなっていく。
そうして、呆気なく、中途半端な所でオレ__天馬司の人生は終止符を打たれる。
________はずだった
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えむがオレに微笑みかけている。
純粋無垢なその目で。いつもと変わらないその笑顔で。オレを見て、手を引き、何かを促している。
心臓の鼓動が速まる。どくどくどくどく、数秒前の恐怖や痛みが鮮明に頭をよぎり、オレの体を侵食していく。
えむは困惑と恐怖で頭を抱えるオレの顔を心配そうに覗き込み、そっと手を差し伸べた。オレより何回りも小さな手が、あたたかくオレの手を包み込む。
えむの言葉はこんなに真っ直ぐで、明るくて、あたたかくて。いつもオレ達の心を支えてくれる。前を向かせてくれる。そのはずなのに。
ひどく、恐怖してしまう。
_____出会ったばかりの頃と同じじゃないか
考えている隙も与えず、えむはオレの手を引いてぐいぐい進んでいく。この強引さ、必死さ。初対面の時と同じだ。
気付けば、あっという間にワンダーステージから離れた、フェニランの中央である噴水前まで連れ出されていた。
えむがはしゃぐ方を見ると、見覚えしかない紫色の青年が楽しげに機械たちと戯れている。
我らが『ワンダーランズ✕ショウタイム』の演出家である男は、怪しげな笑みを浮かべ周りを飛び回るロボット達に合図を送った。
その瞬間ロボット達は男の指示に合わせ、飛び回り、軽やかに踊り、小さく舞う。どこか既視感ある光景だった。
警棒を持ち追いかける警官から余裕そうに逃げ、男は微笑みながらそう言う。
男を必死に引き止めようとしたが、逃げ足が速すぎる。おまけに、こちらに見向きもしないと来た。
おかしい。非現実的だ。夢としか言いようがない。非科学的で、とてもじゃないが真実とは思えない。
だが____えむの反応、この場所、類の行動から、
嫌でも理解するしかない。
これを、"死に戻り"とでも名付けようか。
生命に絶対的な終焉をもたらす死を回避し、そして過去へ飛ばすこの不可思議な現象。
これが後にオレを絶望へと誘うとは、この時のオレは思いもしなかった。







![# 攻略対象より悪役に惚れました . [ 冬司ver ]](https://novel-img-gcs.prepics-cdn.com/prcmnovel-tokyo-prod-converted-images/p/463Ienje96SMnaxqeg7tvIaFh9p1/cover/01K566339R5TNCGP01WCWNSK9G_resized_240x340.jpg)




編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。