朝。今日も変わらずだるそうな声が道のあちこちから聞こえてくる。
登校を嘆く高校生たちのぼやきである。
声を掛けてきたのは幼馴染の菜乃花。
僕が唯一信頼できる友達だ。
物心ついたときから仲が良くて、1人のときと同じように振る舞えるのは菜乃花だけ。
こいつは辰巳。クラスメイト。
菜乃花の次に仲が良いのはこいつかもしれない。
菜乃花が耳元でこそっと囁いてきた。
菜乃花以外の人の前だと俺はある程度ノリが良くなる。
と、そこへ。
菜乃花は、そのまま手を引かれて行ってしまった。
菜乃花が去り際に見せた苦しそうな表情は、僕の胸の中で黒いもやとなり立ち込めていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。