第42話

#40「地獄の切符は既に手に」
116
2026/07/21 15:00 更新





考えないようにしていた。
クラスのみんなを見殺しにするということを。


あなた
( 私のせいじゃない )


だって、手一杯なの。私はもうこれ以上、
あの家に、あの人たちに耐えきれなくて、
大好きな彼に幸せになってもらいたくて、
  それに。江ノ島盾子が起こす絶望を、
たかだか私なんかに止められるなんて思わなかった。




あなた
( ―――私のせいだよ )


傘を差しながら歩く。小さい日傘じゃ肩が濡れた。
でもそんなのどうだってよかった。
苦しかった。

あなた
( 私のせい )


江ノ島盾子の絶望を、私に止められない。
そう思って何もしないことはただの思考放棄だ。

救おうともしないことの、
何が「私のせいじゃない」の?
私のせいだ。私は、みんなを、見殺しにする。

でも、それでも、私は言えない。
江ノ島盾子が何をするか分からないから。
私がもしみんなにこのことを伝えて行動した時、
彼女がどんなことをするか分からないから。



それで彼が死んだりでもしたら、
私はきっと、耐えられない。


あなた
( 命に優劣を付けるのって、
こんな気分なんだ )
あなた
( 知りたく、なかったな )


きっと地獄に落ちるから。許されるなんて思わない。
彼を見送ってから、私はあの人を殺して、
ちゃんと自分も死ぬ。
たくさん汚いことをして生き延びた罪も、
みんなを殺した罪も、全部罰を受けるから。

だから、それまでは。彼と、もう少しだけ、





あなた
………狛枝くん?



そんなこと考えていた矢先、道の先に彼が見える。
彼は傘を差していなかった。雨に濡れて、
ずぶ濡れになった髪を鬱陶しそうにかきあげている。

私は彼に駆け寄った。

あなた
狛枝くん、どうしたの?
狛枝 凪斗
…………ああ、キミか。


彼は私に振り返って、なんてことなさそうに言う。

狛枝 凪斗
面倒で傘は持ち歩かないんだよね。
あなた
また風邪引くでしょ、狛枝くん……


………彼は、誰かを傷付けないように、
あんな風に怖がられても無視して、それに安心して、
こうして一人で生きてきたんだろうか。

私は、それを、否定したくない。できない。でも、

あなた
( それなら、
誰があなたを守ってくれるの )


誰かを傷つけないようにしてきた彼が、
その為に一番傷付くのが私は嫌だ。
私は傘を彼に差し出す。

あなた
あげる。なんか今暑いから
私濡れたい気分なんだよね。
あなた
あ。あとハンカチもあげる。
髪拭いてね。マシになるかもしれないし。
狛枝 凪斗
ちょっ、待、


私は雨の中を軽く走って、彼から離れる。


狛枝 凪斗
キミだって風邪引くだろ!


彼がそう大きく口を開くのを見て、笑う。







あなた
――私には、これくらいが丁度いいから。




―――あなたの名字あなたは、ずっと、罰を欲している。






#44「地獄の切符は既に手に」




プリ小説オーディオドラマ