第129話

#126「同情に限りなく近い、それは」
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2026/10/15 15:00 更新


あなた
だからお酒買って
現実逃避しようかなって。
狛枝 凪斗
ちょっと待って本気で言ってる?
あなた
私嘘ついたことないよ。
狛枝 凪斗
どの口が??


まぁ、現実的に考えて、
こんな状況じゃなければ行政とかから
避難場所を提供してくれるのかもしれないが、
こんな状況である。

私より避難が必要な人はいくらでもいるのが現状で、
住むところが無い程度なんとでもなるだろうから、
国や機関からの助けは期待できないだろう。
だから早めにどこか家が必要だが、
生憎そこまで私はお金がないので、
本当にどうしようかなと言うところである。
あなた
( お金は節約しなきゃ駄目なんだけど )

なんか、全部、結構忘れたい。
だからお酒を買いに来たんだけれど、
彼は私の前で立ち塞がったまま黙ってしまった。

あなた
狛枝くん、えっと、ごめんね、
どいてもらってもいい?
狛枝 凪斗
…………買い忘れたものがあるから、
ボクもついてくよ。
あなた
あ、そう?


やっと喋ってくれた。
彼はもう一度コンビニの中に入り、カゴを取る。
彼が買い忘れるなんて珍しいこともあるものだな、
と思いながら、私も彼と並んで歩いた。

狛枝 凪斗
あなたの名字さんって、お酒飲むんだね。
あなた
人並み……くらい、かな。
飲むとよく眠れるから、
たまに嗜む程度だよ。
狛枝 凪斗
へえ。



その時、丁度ピコンと通知が鳴る。
苗木くんからだった。


  「ごめんね。
霧切さんは人に見られちゃいけない書類が
たくさんあるらしくて、
朝比奈さんも昨日から出張らしくて厳しいそうなんだ。
腐川さんはちょっと、どうしても嫌らしくて……」
あなた
…………


一旦現実逃避でスマホを閉じる。どうしようか。
やっぱり会社で寝るのが一番マシだろう。
身体痛くなるんだけどなぁ。と思いつつ、
お酒コーナーから数本適当なアルコールを手に持つ。

狛枝 凪斗
カゴ入れていいよ。
あなた
あ、ごめんね、ありがとう。
狛枝 凪斗
それで、キミどこで寝るの。
あなた
会社かな。
狛枝 凪斗
は?


急に低い声が聞こえてきて肩が跳ねる。
彼を振り向くと、
心底有り得ないとでもいいたげに眉を顰めていた。

狛枝 凪斗
まさかオフィスで寝るつもり?
あなた
え、えっと、そう……

ずももも、と何だか大変な空気を彼は纏っていく。

怒っているようだ。彼の怒るポイントがわからない。
多分、私のために、怒っている……かもしれないけど。

狛枝 凪斗
確かキミのところのオフィスは
鍵が電子じゃなかったよね?
それで、鍵は閉めたあと
霧切さんのデスクの引き出しに入れる。
狛枝 凪斗
つまり誰でもそこに入れる訳だ。
そんな所で女の人一人寝るなんて、
狛枝 凪斗
何されても文句は言えないよ。


……。
私はなんて言葉を返せばいいか
わからなくなって、黙る。困ったように笑った。

あなた
私にとって寝るって、
そういうことだから。

そんな、言うつもりのなかった言葉が、漏れ出た。
  思い出す。父と過ごした日。眠るのが怖かったこと。
眠っている間に何があるかわからなかったこと。
次起きた時が最中でなければいいと思ったこと。
目を瞑るのは諦めの表れで、
同意と変わりないのかもしれない。

私は眠るのが怖くて、けれどいつからか、
ずっと眠っていたくなった。

あなた
他に寝るところもないしね!
まぁ大丈夫だよ。機関だし、
あなた
酷いことにはならないと思うよ。


それでも、彼に言うべきことではなかった。
こんな話聞きたくないだろうに。
私は軽く笑って彼を見る。

狛枝 凪斗
…………
狛枝 凪斗
………
狛枝 凪斗
……………


彼はそれを見て、思いっきり顔を顰めて、頭を搔く。
「あ゛ー」と乱暴な声を出して、数秒黙って、それで、

狛枝 凪斗
……………家(うち)、来る?


それはもう嫌そうに、そう言った。

狛枝 凪斗
何されても文句は言えないよ。


とは言いつつ、多分何かあったら、
一番狛枝が文句を言うし、手も出ます。

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