沖縄旅行2日目の朝は、カーテンの隙間から差し込む、強烈な太陽の光で始まった。その光は、本土のそれとは明らかに違う種類のもので、肌を優しく通り越して、体の芯まで直接届くような力強さがあった。
ラテがうめき声と共に目を覚ます。昨夜、潮騒をBGMに眠りについた「カヌチャリゾート」のアゼリアスイート。ふかふかのベッドに深く沈んでいた意識が、ゆっくりと浮上してくる。重い瞼をこじ開けると、視界に飛び込んできたのは、白いレースが優雅に揺れる天蓋だった。
寝起きの不機嫌さも吹き飛ぶほどの絶景に、ラテは思わず感心したような声を漏らした。手すりに寄りかかり、ただぼんやりと、その完璧な南国の朝の景色に見入っていた。
部屋に戻ると、バスルームからシャワーの音が聞こえてくる。ぜんこぱすだ。彼は朝起きると、まずお風呂に入るのが習慣だった。昨日、部屋のオープンバスにはしゃいでいた彼の姿を思い出し、ラテは小さく笑った。
(…朝から元気なやつ)
ラテがそんなことを考えていると、入れ違いで外からすっきりとした顔のめめんともりが現れた。
めめんともりはそう言うと、部屋に備え付けられていたコーヒーメーカーのスイッチを入れた。すぐに、コーヒーの香ばしい香りが部屋に広がり始める。
やがて、バスルームからさっぱりとした顔のぜんこぱすが、Tシャツと短パン姿で出てきた。
彼は、濡れた髪をタオルでガシガシと拭きながら、バルコニーを指差した。その表情は、子供のように輝いている。
ラテが、少し呆れたように、でもどこか楽しそうに言うと、ぜんこぱすは「あ、はい!」と素直に頷き、再びバスルームに引っ込んでいった。その素直な反応に、ラテとめめんともりは顔を見合わせて笑った。
めめんともりがパンフレットを手に取る。
ラテが、バルコニーのデッキチェアに寝転がりながら即答する。
髪を乾かし終えたぜんこぱすが、再び興奮気味に部屋から出てきた。
結局、三人の意見は満場一致でルームサービスに決まった。めめんともりが慣れた手つきで電話をかけ、沖縄食材をふんだんに使ったアメリカンブレックファストを注文する。
料理が届くまでの間、三人はバルコニーで思い思いの時間を過ごした。めめんともりは、今日の計画を最終確認するように、タブレットで那覇市内の交通情報や祭りのスケジュールをチェックしている。ラテは、デッキチェアの上で目を閉じ、ただ潮風と太陽の光を浴びている。ぜんこぱすは、手すりのそばに立ち、遠くを行き交う船や、空を飛ぶ鳥を、飽きることなく眺めていた。
やがて、ワゴンに乗せられた朝食が部屋に運ばれてきた。焼きたてのパンの香ばしい匂い、ベーコンが焼ける音、そして色とりどりのフルーツやサラダ。バルコニーの大きなテーブルにそれらが並べられると、そこはもう海辺の高級レストランだった。
「「「いただきます!」」」
海を眺めながらの朝食。そのあまりの贅沢さに、三人は言葉もなく、ただただ感動していた。
食事をしながら、今日の計画について話す。
めめんともりの優しいパスに、ラテは
と素っ気なく返すが、その瞳は好奇心に輝いていた。
朝食を終え、それぞれが出発の準備を始める。スーツケースに荷物を詰めながら、ラテはふと、この美しい部屋をもうすぐ去らなければならないことに、一抹の寂しさを感じた。
そんな感傷を吹き飛ばすように、めめんともりの明るい声が響いた。
ぜんこぱすも、元気よく返事をする。
ラテも気持ちを切り替え、スーツケースのキャスターを引いた。
チェックアウトを済ませ、ヤリスクロスは再び走り出した。名残惜しそうにリゾートを振り返るぜんこぱす。その横顔は、楽しかった時間の終わりを惜しんでいるようだった。
めめんともりが、励ますように、そして自分にも言い聞かせるように言った。その言葉に、ぜんこぱすは「はい!」と力強く頷いた。
車は、沖縄の太陽を浴びて輝く海沿いの道を、北へ向かって走り始めた。旅の2日目が、最高の形で幕を開けた。
カヌチャリゾートのゲートを抜け、ヤリスクロスは再び国道58号線を北へと向かった。ハンドルを握るめめんともりの横顔は、完璧な朝を迎えた満足感と、これからの冒険への期待感で輝いている。
車は名護市の市街地を抜け、本部町へと入っていく。海岸線を走る道からは、左手にエメラルドグリーンの海が広がり、時折、小さな漁港やサトウキビ畑がのどかな風景を作り出していた。ラジオからは、沖縄のローカル局の番組が流れ、三線の音色を使った陽気なCMや、うちなーぐち混じりのDJのトークが旅のムードを盛り上げてくれる。
やがて、「海洋博公園」を示す大きな看板が見えてきた。広大な駐車場に車を停め、三人が外に出ると、じりじりと肌を焼くような強い日差しと潮の香りを乗せた風が吹き抜けた。
ラテが、思わず手で顔を覆う。
ぜんこぱすが心配そうに声をかけた。
めめんともりに促され、三人は車道を渡る歩道橋へと向かった。橋の上からは、亜熱帯の木々が生い茂る広大な公園とその先に広がる紺碧の海が一望できる。
そして、水族館のエントランスへと続く長いエスカレーターを降りていく。目の前にはコバルトブルーの東シナ海が広がる。その先の水平線には平坦な島、伊江島が見えた。島の中央からぽっこりと突き出たの城山独特なシルエットもはっきりと見て取れる。海に向かって吸い込まれるように下っていく感覚は、まるでこれから海の世界へ潜っていくプロローグのようだった。
そしてジンベエザメの巨大なモニュメントを通り過ぎ、涼しい館内へと足を踏み入れる。
ぜんこぱすは、入り口の前で深呼吸をし、まるで聖地に足を踏み入れるかのように、期待に胸を膨ませていた。
館内に入り、まず現れたのは「イノーの生き物たち」と名付けられたタッチプールだった。水槽の中にはヒトデやナマコといった沖縄の浅瀬、珊瑚礁に囲われたいわゆる礁池に住む生き物たちがいる。
ぜんこぱすが子供のようにはしゃいで水槽に手を伸ばす。
ラテも最初は少し躊躇していたが、ぜんこぱすの楽しそうな様子につられ、おそるおそるナマコに触れてみる。
と言いながらも、その口元は好奇心で緩んでいた。
その先の「サンゴの海」エリアは圧巻だった。屋根のない巨大な水槽に沖縄の強い太陽光が直接降り注ぐ。その光を浴びて、約70種450群体の生きたサンゴが色とりどりの複雑な地形を作り出していた。光が水中でキラキラと揺らめき、本当に海の底を歩いているような気分にさせた。
そして順路を進み、少し薄暗くなった通路を抜けた先に、それは現れた。
「「「うわぁ…」」」
三人の口から同時に感嘆の声が漏れた。
目の前に広がっていたのは、高さ8.2m、幅22.5mの巨大なアクリルパネルの向こう側に広がる、圧倒的な「黒潮の海」。
全長8.8mを超える巨大なジンベエザメが、まるで空を飛ぶ巨大な飛行船のように悠々と目の前を横切っていく。数千匹のグルクンやカツオが銀色の巨大な生き物のように群れをなし、一糸乱れぬ動きで水槽内を駆け巡る。そして世界最大のエイであるナンヨウマンタが、翼を広げて優雅に舞っていた。
三人は言葉を失い、ただただその光景に見入っていた。
ラテがぽつりと呟く。その声は感動に少し震えていた。
ぜんこぱすも目をきらきらと輝かせながら、食い入るように水槽を見つめている。
午後12時 オキちゃん劇場と、青い海のステージ
「黒潮の海」の感動を胸に、めめんともりがパンフレットを見て言った。
ぜんこぱすが即答する。
ラテもまんざらでもない様子だ。
三人は再び屋外へと出た。ショーの会場であるオキちゃん劇場は、東シナ海の青い海を背景にした開放的なステージだった。すでに多くの観客が席を埋めている。
陽気な音楽が流れ始め、飼育員のお兄さんとお姉さんが登場すると、会場から大きな拍手が湧き起こった。そして主役のイルカたちが、水しぶきを上げてプールに姿を現す。
ショーはイルカたちの驚くべき能力の紹介から始まった。飼育員の出すサインに合わせて歌うように鳴き声を上げたり、水中でスピンしたり、尾びれでバイバイと挨拶したり。その賢くて愛らしい姿に会場はすっかり魅了されていた。
ショーのハイライトはイルカたちの大ジャンプだった。青い海と空を背景に、イルカたちが次々と水面から高く飛び上がり、美しいアーチを描く。そのダイナミックで美しい光景に、会場のボルテージは最高潮に達した。
ぜんこぱすは目を輝かせながら、スマホの動画撮影に夢中になっていた。
約20分間のショーはあっという間に終わった。イルカたちの素晴らしいパフォーマンスに、会場からは惜しみない拍手が送られた。
午後1時 腹ごしらえと、南へ
水族館を存分に満喫し、一行は名残惜しさを感じながらも海洋博公園を後にした。時刻はすでに午後1時を回っている。
めめんともりが提案する。
車で数分の距離にある、備瀬のフクギ並木。その中にひっそりと佇む沖縄そばの名店「きしもと食堂 八重岳店」。昔ながらの赤瓦の古民家を改装した店構えは、観光客だけでなく地元の人々にも愛されている雰囲気が漂っていた。
三人が注文したのはもちろん名物の「きしもとそば」。薪の火でじっくりと炊き上げたという、カツオの風味が強い独特のスープと、コシのある手打ち麺。
三人は夢中でそばをすすった。空腹の体にその素朴で力強い味わいが染み渡る。
ぜんこぱすが満足げにお腹をさする。
めめんともりの言葉に二人は「はい!」と元気よく頷いた。
車は再び沖縄自動車道を一気に南下する。旅のハイライト、「那覇大綱挽まつり」が、彼らを待っていた。
沖縄そばの名店「きしもと食堂」で、心もお腹も満たされた一行は、再び青いヤリスクロスに乗り込んだ。名残惜しさを感じながらも、備瀬のフクギ並木の涼やかな木陰を後にする。
めめんともりがハンドルを握りながら言う。
助手席のぜんこぱすが、まるでこれから戦いに向かう兵士のように拳を握りしめた。
後部座席のラテは、窓の外を流れるサトウキビ畑の風景を眺めていた。午前中に見た美ら海の深い青と、イルカたちの躍動感。そして、薪の香りがする力強い沖縄そばの味。その一つ一つが、すでに忘れられない思い出として心に刻まれていた。
(沖縄、来てよかったかもな…)
飛行機への苦手意識も、旅の始まりのドタバタも、今はもう遠い昔のことのようだ。そんなことを考えていると、心地よい揺れに誘われて、彼女はうとうとと眠りに落ちていった。
車は沖縄自動車道を快調に南下していく。ぜんこぱすは、スマホで「那覇大綱挽まつり」の歴史や見どころを熱心に調べていた。
めめんともりは、静かに答えた。
やがて、那覇インターチェンジを降りると、街の雰囲気は一変していた。中心部へ向かうにつれて、道路は渋滞し始め、歩道には色とりどりの法被や浴衣を着た人々が溢れかえっている。遠くから、鐘や太鼓の音が、熱気を帯びた風に乗って聞こえてきた。
後部座席で目を覚ましたラテが、驚きの声を上げる。
ホテルにたどり着くまでも一苦労だった。ようやくチェックインを済ませ、部屋にスーツケースを文字通り放り込むと、三人は逸る気持ちを抑えきれずに、祭りのメイン会場である国道58号線、久茂地交差点へと向かった。
午後4時 熱狂の渦の中心で
ホテルを一歩出ると、そこはもう日常の空間ではなかった。地鳴りのような人々のざわめき、体の芯に響く太鼓の音、そして時折空気を切り裂く鋭い指笛。街全体が、一つの巨大な生き物のように、興奮と熱気で脈打っていた。
普段はひっきりなしに車が行き交う片側4車線の巨大な国道が、完全に人で埋め尽くされている。その光景は、圧巻の一言だった。
ラテが、人の波に圧倒されて声を上げる。
三人は、なんとか人波をかき分け、祭りの中心である久茂地交差点へと向かった。汗ばんだ人々の間をすり抜け、ようやく視界が開けた場所に出ると、そこには信じられない光景が広がっていた。
道路の真ん中に、巨大な、本当に巨大な藁の綱が、二本に分かれて横たわっている。それは、まるで巨大な龍が二匹、熱気にあてられて眠っているかのようだった。一本一本の藁が人の腕ほどの太さで編み込まれ、それがさらに束になって、直径1.5メートル以上はあろうかという極太の綱を形成している。
ラテが、呆然と呟く。
ぜんこぱすが、興奮気味に調べた知識を披露する。
綱の周りでは、東西それぞれの陣営の衣装をまとった人々が、気勢を上げていた。東は男綱、西は 女綱と呼ばれ、それぞれの象徴となっている。
やがて、祭りの開始を告げる鐘の音が、カンカンカン!と甲高く鳴り響いた。会場のボルテージが一気に最高潮に達する。
まず始まったのは、「旗頭ガーエー」と呼ばれる、各地域を代表する旗頭の演舞だった。高さ7メートルから10メートル、重さ50キロを超える巨大な旗頭を、一人の男が「むちでぃー」と呼ばれる帯で腰に固定し、天高く掲げて舞う。
「うおおおおお!」
担ぎ手の雄叫びと共に、旗頭が大きくしなり、天を突く。その先端につけられた飾りが、西日を浴びてきらきらと輝いた。その勇壮で美しい姿に、観客から「サーラ!」という独特の掛け声と、割れんばかりの拍手が送られた。
めめんともりが、感嘆の声を漏らす。
次々と、意匠を凝らした14本の旗頭が登場し、その技と美しさを競い合う。その力強い演舞は、これから始まる大一番への気運を、否が応でも高めていった。
そして、いよいよ大綱挽のメインイベントが始まる。東西それぞれの綱に、数え切れないほどの「手綱」が取り付けられていく。その手綱を、法被を着た男たちが持ち、ゆっくりと綱を中央へと引き寄せていった。
地響きのような掛け声と共に、男綱と女綱の先端がじりじりと近づいていく。そして、中央で二つの綱の輪が重なり合うと、ひときわ大きな歓声が上がった。そこに、「カヌチ棒」と呼ばれる巨大な丸太が、数人がかりで運び込まれる。
「あれで、二つの綱を一つにするんだ…」
ラテが、固唾を飲んで見守る。
カヌチ棒が、男綱と女綱の輪を貫き、完全に結合される。その瞬間、会場の興奮は頂点に達した。東西の力が、一本の綱となって結ばれたのだ。
やがて、開始の合図となる花火が打ち上げられた。
ヒュルルルル…
ドォォォン!!!
その音を合図に、地響きのような雄叫びと共に、綱引きが始まった。
「「「ハーイヤ!ハーイヤ!」」」
数万人の声が一つになり、空気を震わせる。東西合わせて1万5千人以上の人々が、一本の綱に全ての力を込め、大地を蹴る。
「うおおおおおおお!」
「わあああああああ!」
会場全体が、エネルギーの塊となって揺れていた。三人は、その圧倒的な光景に、ただただ立ち尽くすことしかできなかった。
ラテが、興奮して叫ぶ。
ぜんこぱすが、メインの綱から枝分かれした「かちゃーしー綱」を指差した。
三人は、周りの人々に混じって、その綱へと駆け寄った。太い藁でできた手綱は、汗で湿り、ずっしりと重い。
めめんともりの掛け声に合わせて、三人も力の限り綱を引いた。老若男女、地元の人も観光客も、外国人も関係ない。誰もが、ただ一つの目的に向かって、心を一つにしていた。
「ハーイヤ!ハーイヤ!」
周りの人々の掛け声に合わせて、声を張り上げる。足を踏ん張り、全身の力で綱を引く。汗が噴き出し、腕が悲鳴を上げる。しかし、不思議と辛くはなかった。周りの人々の熱気、笑顔、そして一体感。その全てが、三人の体に力を与えてくれるようだった。
叫び、笑い、汗を流す。その瞬間、三人は、ただの観光客ではなく、この祭りを構成する、熱狂の渦の一部となっていた。
約30分間の死闘の末、綱引きは西の勝利で幕を閉じた。勝敗が決した瞬間、会場は勝鬨と、健闘を称え合う拍手に包まれた。勝ち負けなど関係なく、そこにいた誰もが、達成感と高揚感に満ちた笑顔を浮かべていた。
祭りの興奮冷めやらぬまま、三人は歩行者天国となった国際通りへとなだれ込んだ。普段の賑わいとは全く違う、祭りの後の特別な熱気が、夜の街を支配していた。道のあちこちで、カチャーシーを踊る人々の輪ができていた。
ラテが、まだ興奮した様子で言う。その顔は汗と熱気で上気し、キラキラと輝いていた。
ぜんこぱすも、満面の笑みだ。
夕食は、「国際通り屋台村」でとることにした。20軒ほどの小さな屋台がひしめき合い、祭りを終えた人々でごった返している。空いている席を見つけるのも一苦労だった。
三人は、なんとか席を確保すると、それぞれ好きな屋台から料理や飲み物を買ってきた。ジーマーミ豆腐の揚げ出し、ヒラヤーチー(沖縄風チヂミ)、てびちの煮付け、そしてもちろんオリオンビール。
めめんともりが、沖縄風のイントネーションで言うと、二人は笑ってグラスを合わせた。
「「かんぱーい!」」
冷えたビールが、汗をかいた体に染み渡る。
祭りの感想、美ら海水族館の感動、そして明日にはもう帰らなければならないという寂しさ。様々な感情が入り混じりながら、三人の会話は尽きることがない。
那覇大綱挽まつりの圧倒的な熱狂と、国際通り屋台村の陽気な喧騒。その全てを全身で浴びた三人は、心地よい疲労感と高揚感を胸に、タクシーで今夜の宿へと向かった。祭りの影響で、那覇市内の道路はまだ混雑していたが、その渋滞さえも、祭りの特別な余韻のように感じられた。
ぜんこぱすが、窓の外の夜景を眺めながら、興奮した様子で言った。その声はまだ少し枯れている。
ラテも満足そうに頷く。その顔には、純粋な楽しさと少しの日焼けが健康的に輝いていた。
めめんともりは、そんな二人の様子を微笑ましく見守っていた。
タクシーが到着したのは、国際通りから少しだけ離れた、静かなエリアに佇む「ホテル コレクティブ」。近代的ながらも、琉球ガラスや紅型のアートが随所にあしらわれ、沖縄の伝統とモダンが見事に融合した、洗練されたホテルだった。
チェックインを済ませ、案内されたのは高層階の「ハイフロアスーペリアツイン」。
部屋に入ると、大きな窓が一面に広がり、眼下に広がる那覇の夜景に三人は息を呑んだ。
ぜんこぱすは我先にとバスルームに駆け込んで行った。
めめんともりは大きな窓のそばに立ち、眼下に広がる那覇の夜景を見下ろしていた。
ラテもその隣に並んで呟いた。
シャワーを浴び終えた三人がそれぞれのベッドに腰掛ける頃には、時刻は午後11時を回っていた。しかし、祭りの興奮からか、誰もすぐに眠ろうとはしない。
ラテがスマホでフライト情報を確認しながら言った。
ぜんこぱすが言う。
ラテの目が輝いた。祭りの疲れも見せず、まだまだ元気なようだ。
めめんともりが尋ねる。
ラテが考え込んでいると、ぜんこぱすが、おずおずと口を開いた。
その言葉に、めめんともりは何かを思い出したようにふっと微笑んだ。
めめんともりは、その時のことを思い出すように少し楽しそうに目を細めた。
ぜんこぱすが、興味深そうに身を乗り出す。
彼女自身の体験として語られる言葉には、確かな熱と実感がこもっていた。
ラテが、ぽつりと呟いた。その声には、強い興味が滲んでいる。
めめんとから語られる情景だけで、そこがどれほど魅力的で温かい場所なのかが伝わってくる。ラテとぜんこぱすの頭の中には、それぞれの「秘密のバス停」のイメージが膨らんでいった。
二人の即答に、めめんともりは満足そうに頷いた。
旅の最後の日の計画が決まった。それは、ただの観光ではない。めめんともりが大切にしている、美しい思い出の場所を辿る、少しだけ特別な寄り道。
めめんともりが言うと、三人はそれぞれのベッドに潜り込んだ。
窓の外からは、国際通りの賑わいの名残が遠くに光って見えている。しかし、部屋の中は、心地よい疲労感と明日への新たな期待に満ちた穏やかな静寂に包まれていた。













編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。