チリン。ベルが鳴り 、扉が開閉された事を示す音である。扉を隔てて向こう側には 、シャツを着たサラリーマン 、学生らしき三人組が私服で遊んでいたり … 。
此処は大通りに有る 、何の変哲も無い喫茶店。其処で俺は 、とある人を待っていた。
… 先に言っておくと 、俺が早めに着いただけだ。お互いが多忙で 、上手くスケジュールが噛み合わずに 、今回の待ち合わせが久々なのである。
俺の交友関係はたかが知られて居るので 、分かる人は分かるだろう。あの馬鹿だよ。
誕生日の度に高級な物を送りつける 、あの馬鹿。交友関係が残念ながら 、今まで俺しか居なかった物だから。常識も知らず 、送りつけてくる。かく言う俺も 、交友関係については良く言えないし 、言う権利も無い。
だから 、俺の言う“ 常識 ”を知ったのは 、最近の話になる。
味も良く 、隠れた有名店として知られるこの喫茶店は 、俺と彼の 、行きつけの店でも有った。
… 再度扉が開き 、扉の近くであるこの席は 、冷房に混じる外の 、湿った暑い空気と入り混じった。 … やっぱり 、此処にして良かった。
彼奴の貧弱さなら 、熱中症になっていたからしれないからね。
再度 、チリンと音が鳴れば。其処には見覚えの有る影が一つ。すっかり伸びた髪を靡かせて 、サングラス越しに 、伏している目と目が合った。
… 此方側が手を振ると 、此方へと近づいてきた。
俺とお揃いの 、身バレ防止用のサングラスを身に着けて 、俺の幼馴染であり 、今を煌めく俳優でもある … “ 御巫 怜 ”が席に座った。
席に着くや否や 、彼は時計を確認して安心した物だから 、俺は少し可笑しくて笑ってしまった。彼が集合に遅刻した日なんて 、ナンパに絡まれている時以外無い。それくらい彼は生真面目な性格なのだ。
「 そうか 、良かった 」この文面だけを見ると 、彼は無愛想な人間に見えるだろう。 …… 実際 、彼は感情を激しく出す性分では無いと俺は知っている。けど 、本当は酷く優しく 、温かい人間だと俺は思う。
彼から貰った物は 、値段を無視すると良い物だ。エアコンのせいで乾燥すると言えば 、スチーマーを買ったり。些細な 、ふと出た言葉さえも彼は拾って 、形作ってくれる。
それがどんなに心の支えになったのか 、俺は数え切れない。
向かい合う様に席に座って 、彼はメニュー表とにらめっこをしている。 …… 迷っているのだろう。
「 決まったら 、君がボタンを押してくれよ 」
そう促して 、暫しの間思想に耽る事にした。 … その思考は直ぐに中断されて 、注文を知らせるボタンの機械音が耳に入った。
こういった飲食店で食事をする時 、いつも俺が注文をする。それは彼が口下手 … だからでは無く 、単純な身バレ防止策だ。
彼は周りの考えを気にする癖して 、自身の視線にはあまり目を向けていない。 … 心配をして 、対処するのはいつも俺の役割だ。
勿論 、この食事の金は彼持ちだ。今日は俺が主役なのだから 、と俺が彼に言ったのである。彼は他の場所で無くて良いのか … と尋ねたけれど 、俺は此処が良かった。
特別な思い入れは無いけれど 、どうでもいい様な思い出が詰まっている 、心地の良い場所だから。
注文を終え 、談笑で時間を潰す。話す内容は様々で 、近所の野良猫が上手に撮れただとか 、散歩中の犬の毛がふわふわで触りたかっただとか 、茶柱が立っただとか 、箪笥の角に足をぶつけたりだとか。
そんな会話は 、くすくすと笑いまで引き出してくれる。そして 、時間さえも止まっている気がした。
そして皿が机に運ばれて 、会話も一時中断となった。俺が頼んだサンドイッチと珈琲は 、目を細めると湯気が揺蕩っていた。
フランスパンに 、ハムとレタスと 、トマトを挟んだ至ってシンプルなサンドイッチ。中に塗られている甘辛のソースは 、野菜の水分と交わって丁度良い味になる。
御巫は目の前のパンケーキに目線を移していて 、心做しか嬉しそうだった。数段重ねられた生地は 、生クリームが乗せられていて 、雲の様な見た目は 、食感を安易に想像出来た。
案の定 、彼はお気に召したみたいだ。期間限定のソースが有るからと 、彼は注文している。 … 期間限定 、増量なんて言葉に弱い事は 、吉なのか凶なのか。
… 相手では無く 、そろそろ自分も食べよう。そう思い 、サンドイッチを大きく口を開けて頬張った。 … 硬いパンのザクッとした食感と 、パンの香ばしさ。トマトの酸っぱさと甘辛いソースが 、丁度良い塩梅を保っていた。パンの食感だけでは無く 、レタスの食感も良く 、思わず微笑む程だ。
そして 、数十分が経った頃。食べ物を食べ終わり 、飲み物を消化している最中だった。
そう言って手渡されたのは 、小さな包装がされた 、小さな袋だった。 …… 最初に思ったのは 、失礼にも程は有るけれど 、値段だった。
けど 、こんなに小さい物なら安心だろう。そう思い 、丁寧に包装を開けて 、中身を見た。
メッセージカードと共に有ったのは 、耳用のピアスだった。銀製で 、シンプルなので普段使いが出来そうな見た目だった。
… そう言えば 、耳は開けた事は無かったっけ。自身の耳を触って 、少し言動に困る。
そう言うと 、少し表情を変えた御巫が 、誇らしげに笑った。自身の髪を耳に掛けて 、あれが見える事も厭わずにして目に入ったのは 、プレゼントと同じピアスだった。
つまり 、お揃いだ。その事実に笑みがこぼれて 、嬉しくなる。
… 値段の話が出るまでは 、だけどね。

誕生日おめでとう花飴クン!
未来ヶ丘学園の名に恥じない 、未来溢れる才能を持った生徒に 、特別なイラストをご用意致しました!

…… あの人なら 、って思った?
残念 、キミに表舞台は似合わないよ!
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サングラスで潰れちゃってますけど 、目がお気に入りです。
イケメンに描けました。
花飴くんハッピーバースデー!!
良い一年を!
次は東雲くんです。
間に合うかどうか怪しいです。

















編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!