学園長室の重厚な扉が、ゆっくりと閉まった
ぎぃ、と古い音が鳴る
廊下に出た瞬間、ひんやりとした空気が肌に触れた。
高い天井の石造りの廊下は、夜の光に包まれている
壁に並ぶランプが、橙色の灯りを落とし、長い影を床に伸ばしていた
そして、その廊下を先導するのは――
デイヴィス・クルーウェル…先生
革靴が床を叩く音が、静かな廊下に響いていた
コツ、コツ、コツ
私はその後ろを歩きながら、思い切り眉をひそめる
クルーウェル先生は、振り向かない
ぴたり、と彼の足が止まった。ゆっくりと振り返る
その視線は、獲物を観察する猛獣みたいに鋭い
彼は淡々と言う
ムカつく。すごくムカつく
その高価そうなコート、後ろから蹴ってやろうか??
クルーウェル先生は満足そうに小さく笑うと、また歩き出し、ひとつの扉の前で止まった
中からざわざわと声が聞こえる
笑い声。話し声。机を叩く音……
すでにクラスメイトたちが集まっているらしい
クルーウェル先生は一瞬だけ沈黙し――
淡々と述べられる
彼は口元をわずかに上げた
クルーウェル先生はそう言うと、ガラッと扉を開けた
教室の中はざわついていた
黒い制服の生徒たちが二十人ほど座っており、それぞれ違う寮章を胸に付けている
ざわざわと視線がこちらに集まる
ひそひそと声が飛び交う
私の女だという事実には、誰も気づいていないようだ
それはそれで 嬉しいような、悲しいような……
クルーウェル先生は教壇に歩み寄り、チョークで黒板を軽く叩く。カン、と乾いた音が教室を静まり返らせる
低く響く声
生徒たちがひそひそ話す
クルーウェル先生はちらりとこちらを見た
クルーウェル先生の目が細くなる
チラリ、と生徒たちの方を向く
昔ならこんなの余裕だった
不良の集まりの前で啖呵切ることだってあった
でも――
ここは魔法学校。知らない世界。知らない奴ら
一瞬だけ、胸の奥がざわつく
けど、私はしぶしぶ教壇の横に立った
腕を組むと、生徒たちの視線がさらに突き刺さる
ざわり、とクラスがざわめく
腕を組み直し、少し胸を張って続ける
クルーウェル先生は腕を組み、顎に手を添えてじっとこちらを見つめる
その時、ふと教室の後ろを見た
オンボロ寮の監督生と、小さな灰色の生き物――
グリムが、私をじっと見ている
私は思わず小さくつぶやいた
一拍おいて、不敵に笑う
教室全体の空気が一気に引き締まる
私は深呼吸し、心の中でつぶやいた












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。