大学の友人達と食事に行っていたら遅くなってしまった。
マンションに入ると、なんとも言えない雰囲気が漂っている。一応事故物件なので、夜に見ると怖いものである。
突然、後ろの方でガタガタと崩壊するような音が聞こえた。
振り返ると、水色の髪の少年が瓦礫の奥に突っ立っていた。
私は危険を察知し、自分の部屋まで走り出した。
今このタイミングで説得しても殺されるのが目に見えている。なーくん達の力を借りた方いい。
私は何とか自分の部屋に入ることが出来た。
息を切らした私をなーくんは心配そうに抱きかかえる。
莉犬くんが奥で悲鳴を上げていた。
急いでリビングに行くと、水色の男の子が莉犬くんに真っ黒なナイフを突き立てている。
ころんくんは……なーくんとの話で聞いた。
双子の兄で、当時忌み子とされていて、本当は殺されるはずだった子。労働力のために生かされ、奴隷として働き、結局は悪風習の生贄として殺された。
なーくんをよく慕っているという話はよく聞くが……ころんくんはなーくんを前にしても憎しみの表情を浮かべている。
今を生きてる私が彼に言えることなんてあるのだろうか。
私が彼に何を言ってあげられるんだろう。
私は彼に何をしてあげられるんだろう。
私は彼らに何をしてあげれるんだろう……?
こんなの、ただのお節介だよね?
要らないよね?
邪魔だよね?
私なんか要らないよね?
彼は莉犬くんを突き放して、座り込む私の方に近付いてきた。
そうだ……。
大事な同居人という前に、彼らは悪霊……。
人間と通じることなんて、最初から不可能だったんだ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。