第16話

堕ちる
603
2021/11/09 13:50
大学の友人達と食事に行っていたら遅くなってしまった。

マンションに入ると、なんとも言えない雰囲気が漂っている。一応事故物件なので、夜に見ると怖いものである。

突然、後ろの方でガタガタと崩壊するような音が聞こえた。

振り返ると、水色の髪の少年が瓦礫の奥に突っ立っていた。
ころん
ころん
殺してやる
私は危険を察知し、自分の部屋まで走り出した。

今このタイミングで説得しても殺されるのが目に見えている。なーくん達の力を借りた方いい。
私は何とか自分の部屋に入ることが出来た。

息を切らした私をなーくんは心配そうに抱きかかえる。
ななもり。
ななもり。
あなた、どうしたの?
ジェル
ジェル
もしかして、さとちゃんが動き出したんじゃ……
莉犬
莉犬
うわぁ!?
莉犬くんが奥で悲鳴を上げていた。

急いでリビングに行くと、水色の男の子が莉犬くんに真っ黒なナイフを突き立てている。
莉犬
莉犬
助けて!!
ころん
ころん
うるさい
ころん
ころん
みんなみんな死ねばいいんだ
ななもり。
ななもり。
ころちゃん!?
ジェル
ジェル
ころん!?やめろ!!
ころんくんは……なーくんとの話で聞いた。

双子の兄で、当時忌み子とされていて、本当は殺されるはずだった子。労働力のために生かされ、奴隷として働き、結局は悪風習の生贄として殺された。

なーくんをよく慕っているという話はよく聞くが……ころんくんはなーくんを前にしても憎しみの表情を浮かべている。
ころん
ころん
僕達は悪霊でしょ
ころん
ころん
どうして、人間と一緒に人間のようにこの世にいるの?おかしくない?
ころん
ころん
僕は人間が大嫌い
ころん
ころん
僕は全員殺さないと気が済まない
ころん
ころん
その女がたとえなーくんの大切な人だとしても殺してやる!!
ジェル
ジェル
やめろ!!
ジェル
ジェル
彼女はめっちゃ優しい人やねん。悪霊の俺達に手を差し伸べてくれてん。せやから殺さんとってくれ!
ななもり。
ななもり。
ねぇ、ころちゃん。俺達と一緒に
“生きよう”よ……
ななもり。
ななもり。
俺、今が一番幸せだよ
ななもり。
ななもり。
だから……“俺の幸せを壊さないで”
今を生きてる私が彼に言えることなんてあるのだろうか。
莉犬
莉犬
ころちゃん、やめてよ……
ころん
ころん
うるさい
私が彼に何を言ってあげられるんだろう。

私は彼に何をしてあげられるんだろう。




私は彼らに何をしてあげれるんだろう……?




こんなの、ただのお節介だよね?

要らないよね?

邪魔だよね?




私なんか要らないよね?



彼は莉犬くんを突き放して、座り込む私の方に近付いてきた。
ころん
ころん
死んで




そうだ……。



大事な同居人という前に、彼らは悪霊……。



人間と通じることなんて、最初から不可能だったんだ。



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