彼は最後に…
屈託のない無邪気な笑顔で、
後ろ向きに歩きながら、手を振った。
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この時 私は、ある人を待っていた。
落胆する他の部員たちが着替え終わり、その部屋から出た いちばん最後に、
少しだけ間を置いて出てきた人。
彼はドアノブへ手をかけ、大きな音が響かないよう丁寧に、
その扉を閉めた。
ぱたんっ…
小さな音が、もう誰も居ない薄暗い通路に響いた。
どうしたのか、閉まった扉の前で、ドアノブから手を離さないでいる。
そのうち、
こつんっ…
チカラなく、扉へおデコを もたれさせた。
私は 堪らなく声を掛けてしまった。
ゆっくりと振り向いた彼は、安定の一言を私に向けた。
今日の試合の負けは、私の片想いの最後。
そんな事は、解っている。
そう。
今までの態度で、私だって ちゃんと理解していた。
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最初はそんな感じで、頭ポンポンされたりしてて、
って、そのうち フザケて頭をクシャクシャされるようになって…
それでもメゲナイ私は、どうしても先輩の返事が聞きたくて…
何かの勢いに任せて告った。
それなのに先輩は、
「 真面目かっ!」と、ツッコミたくなるくらい、真っ直ぐに私を見つめて、
私は、いつもみたくフザケて返されるのかと構えていたから…
余計に辛くて…
って、この空気を無かった事にしようと誤魔化して、先輩より先に帰ってしまいたかったのに…
先を行く私の背中に向かって…
トドメの一撃が飛んできたんだよ…
解ってるし…
いつも私には見せない真面目な顔で「 ごめん 」って言うんだもん…
バカな私にだって、、、
その言葉だけで解るよ。
案外…
酷いこと言うんだな…
私は振り向く事もできずに、走って帰った。
「帰った」と言うよりも、「逃げた」だ。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。