ソルトside
ビッグランが終わってから約2週間、やっとマネージャーの仕事にも慣れてきた頃の話だ。
私はキッチンで1人、ココアを飲んでいた。時刻は午後9時。夜空に星が輝いていた。
この時間はみんなそれぞれ自由に過ごしている。あれ…?そういえば、ロロさんとリューヌさんを見ていない。どこに行ったのだろうか。
普段なら気にならないはずなのに、何故かこの日は気になり、拠点を探してみた。そして、決闘場のドアの前に来た時…
……ピュン!…ダダダダッ!
殺意の塊のような雰囲気に耐えられず、私は逃げるようにキッチンに戻った。
リューヌside
俺とロロは、相棒でありライバルでもあった。
午後9時。定刻通りに始まった俺とロロとのツキイチタイマン。武器は俺がジェットスイーパー、ロロがRブラスターエリートだ。
お互いに煽り合うと、タイマンは幕を開けた。射程は同じくらいだ。しかし相手は爆風範囲も広い。だが、弾を避けつつ少しずつ前に出て行く。
こっちはギアもしっかり揃えて、爆風の対策はしてきた。あんなクソエイムの弾に当たるはずがない…!
俺は大きく踏み込んでロロの背後に回り、メインを撃つ。しかし、1発もヒットしなかった。
見下し顔でロロはポイズンミストを投げる。身動きが取りにくい。さらに、ロロに思いきり蹴り飛ばされて壁に激突してしまった。その先でもポイズンを投げられ、再び動きが制限される。
衝撃で座り込んだ俺を上から見下ろし、メインの攻撃を浴びせながらロロは言う。俺はジェッスイをそいつの喉に突きつけて言った。
そろそろポイズンの効果が切れる。そのタイミングを見計らい、ロロにタックルを入れる。
倒してやりたかったが、よろけさせただけでもまあ良い。そのまま胸ぐらを掴み、今度は逆に俺がロロを壁に叩きつける。次の攻撃を察したのか、彼は唇をギュッと噛む。
俺はジェッスイの先端をロロの腹に突きつけ、左右に捻じるように動かした。しかし、ロロは痛みに顔を歪めながらも片手でジェッスイを掴み、もう片方は自分のブラスターを構えていた。依然、唇は強く噛み締めたままだ。
だが、この強烈な痛みには勝てないのか、攻撃は飛んでこない。片手を離せば更に痛みが増す。それがわかっているからポイズンを投げることも不可能。そんな状態で彼に出来ることは、歯を食いしばって悶えることだけだ。
こう見ると俺がただの鬼畜野郎に見えるかもしれないが、こんなのはよくあることだ。ロロだって、先月は疲弊した俺にメガホンレーザーを向け、瀕死寸前までじわじわダメージを与える性悪プレイをしたものだ。
不敵な笑みを浮かべながら、俺はジェッスイに込める力を強める。
今だ。腹に蹴りを入れた後、口の中にジェッスイの先端を突っ込む。Ink in mouthだ。射程の長いこの武器なら喉までインクが届くはずだ。
最後の抵抗で逃げようと前に出しかけたロロの足を踏みつけ、ジェッスイのトリガーを引いた。薄っすら涙を浮かべるロロ。俺がジェッスイを抜いてやると、インクを吐き出して彼は言った。
悔しそうな顔で彼は言った。そりゃ悔しいだろう。今回のタイマンではほとんど俺が攻撃してたのだから。
そう言い残して、彼は決闘場を後にした。
巷ではOnlyのロロとリューヌはどっちの方が強いのか、なんて論争もあるみたいだが、それをしてる奴のほとんどは2人の間で行われている事を知らない。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!