第10話

1-7 衝撃
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2023/12/29 08:51
大和憧吾
は……?
 憧吾にとっては衝撃的すぎる事ばかりだった。
 京が本気でVISTYを好きだと思った事がない?俺を助けられない?
 承認欲求のような変な感情が渦巻いている。
大和憧吾
じゃあ、なんでVISTYにいたんだよ……
御山京
憧吾も、知ってるでしょ
 俯きながら、途切れ途切れに話し始めた。
 この顔が、俗に言う"儚い表情"なのだろうか。
御山京
僕に弟がいたこと
大和憧吾
……!
 眉をぴくりとさせる。
 京の"弟"……前に葵から聞いた事があった。
「京は昔、弟がいた」と。その曖昧な葵の回答に少し違和感を感じた事を覚えている。何かを隠した葵の表情がずっと引っかかっていた。
御山京
僕はその弟を見つけ出すためにVISTYに入ったんだ
 "見つけ出す"ということは行方不明になっていたと言うことなのだろうか。
 だが、弟を探すにしろ呑気に作曲やライブなんて出来なかっただろうに。
御山京
で、ある日弟が見つかったからVISTYを抜けたんだ
 ……という事は、人聞きは悪いが"弟を探すためにVISTYを利用していた"という事だ。
 憧吾の胸がちくり、と痛む。あんなにメンバーに、ステラに優しかった当時の御山京は偽りだったって事か……?
御山京
これを聞いて分かったでしょ?僕は憧吾の力にはなれない。VISTYは捨てた身。そんな僕がまともに憧吾を支えられないと思う
 少し俯きながら口を動かす。
 "VISTYは捨てた身" "憧吾を支えられないと思う"その言葉が脳でずっと再生されている。
 でも、俺は……
大和憧吾
でも、俺は京に助けて欲しいんだ
 呆れたような顔で憧吾を見る京。瞳には諦めが見えていた。
御山京
……分かったよ。でも、力になれなくても怒らないでよ
大和憧吾
……!ああ!
 嬉しくて、憧吾は反動で京の手を両手で握っていた。
 とりあえず、今は再度連絡先の交換をした。脱退した際に京はメールアドレスを変えていたから。
 嬉しさのあまり、憧吾は浮かれていた。
ロクタ
へぇ。京ちゃん、そっちの味方なんだ
 盗み聞きしていたロクタは小声で呟き、イツキの方へ戻って行った。

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