憧吾にとっては衝撃的すぎる事ばかりだった。
京が本気でVISTYを好きだと思った事がない?俺を助けられない?
承認欲求のような変な感情が渦巻いている。
俯きながら、途切れ途切れに話し始めた。
この顔が、俗に言う"儚い表情"なのだろうか。
眉をぴくりとさせる。
京の"弟"……前に葵から聞いた事があった。
「京は昔、弟がいた」と。その曖昧な葵の回答に少し違和感を感じた事を覚えている。何かを隠した葵の表情がずっと引っかかっていた。
"見つけ出す"ということは行方不明になっていたと言うことなのだろうか。
だが、弟を探すにしろ呑気に作曲やライブなんて出来なかっただろうに。
……という事は、人聞きは悪いが"弟を探すためにVISTYを利用していた"という事だ。
憧吾の胸がちくり、と痛む。あんなにメンバーに、ステラに優しかった当時の御山京は偽りだったって事か……?
少し俯きながら口を動かす。
"VISTYは捨てた身" "憧吾を支えられないと思う"その言葉が脳でずっと再生されている。
でも、俺は……
呆れたような顔で憧吾を見る京。瞳には諦めが見えていた。
嬉しくて、憧吾は反動で京の手を両手で握っていた。
とりあえず、今は再度連絡先の交換をした。脱退した際に京はメールアドレスを変えていたから。
嬉しさのあまり、憧吾は浮かれていた。
盗み聞きしていたロクタは小声で呟き、イツキの方へ戻って行った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。