しかし、四人一組という説明に反し、そこに立つ猫を模したメイド風のコスチュームの女性は二人きりだ。
「キャリアは今年でもう十二年にもなる……」
瞬間、プッシーキャッツの金髪の方が目にも留まらぬ速さで緑谷の懐へと潜り込み、肉厚な猫の手グローブで彼の顔面を鷲掴みにする。
「心は十八!!」
「へぶ」
凄味の利いた顔で「心は?」と詰め寄られ、緑谷は断末魔のような声で「じゅ、じゅうはち!」と絞り出した。
次いで、赤みを帯びた茶髪を揺らす、もう一人の女性が唇を艶やかに綻ばせた。
「ここら一帯は私らの所有地なんだけどね。あんたらの宿泊施設はあの山の麓ね」
「遠っ!!」
「え、じゃあ何でこんな半端なとこに……」
遅まきながら、生徒たちの背中に嫌な汗が伝い始める。騒然とする周囲の中で、あなただけは一人の少年に視線を留めていた。
プッシーキャッツの華美な喧騒とは対照的な、小学生ほどの男児。彼は色のない瞳——否、剥き出しの嫌悪を湛えた双眸で、うろたえる一行を静かに射抜いていた。
ふいに、視線がかち合う。少年は不意を突かれたように一瞬だけ目を見開いたかと思うと、その瞳に嫌悪以外の色が差し、きゅっと細められた。
淡い赤が耳たぶに広がるのを見て取った直後、彼はぷいと乱雑に顔を背けた。
それが拒絶なのか、あるいは別の何かなのか。
あなたにはよく分からなかったが、ただ変な子供だという印象だけが胸に残った。
「今はAM9:30。早ければぁ……十二時前後かしらん」
「ダメだ……おい……」
「戻ろう!」
予兆を察し、あなたはすぐ近くにいたお茶子の腕を無言で掴んだ。その自らの行動に、特に論理的な理由は思い浮かばなかった。
「え、どしたんあなたちゃ……」
『準備しろ』
「じゅ、準備って、まるでそれじゃあ——」
「十二時半までに辿り着けなかったキティはお昼抜きね」
みるみる血の気を失っていくお茶子の横顔。バスへと縋るように駆け出す数名の背。その混乱を眺めて、ようやくあなたの頭の中で「合宿」という実像が輪郭を持ち出した。
「わるいね諸君」
足元が揺れた。土がボコりと脈打ち、意志を持つ波のように流動し始める。奔流は止まることなく盛り上がり、膝元を浚い、ついには抗う術もなく身体を絡めとった。
「合宿はもう、始まってる」
崖の上、最後に視線が合った相澤は、その口角をかすかに釣り上げていた。
ああ本当に。どこまでも性格が嫌らしい奴だ——!












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。