童話には、何かしらの教訓がある。
ころんの住む村にも、ずっと昔から語り継がれてきた童話があった。
それは、ある少女が祖母のお見舞いを頼まれ、赤い頭巾を被り、祖母の家へ向かうという話だった。
道中、少女は大きな黒いオオカミに出会う。オオカミはにこりと笑って、こう言った。
「花が咲いている場所を知っているよ。おばあさんはきっと喜ぶだろう」
少女はうなずき、オオカミのあとをついて森の奥へと入っていった。
その先で、少女がどうなったのか__詳しくは、語られない。
このありきたりな話の教訓は大抵、「寄り道をしてはいけない」、「知らない人について行ってはいけない」という普遍的なものに落とし込まれるが、ころんの村の言い伝えはかなり直接的で特殊なものだった。
「あの森に入ってはいけない」
それが、この村に伝わるたった一つの教訓だった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!