蘭はあの後、すぐに自分の部屋へ戻った。
家族に、あの場にいたことがバレる前に。
そして、今日もまた、手帳を開き、日記を書く。
体に傷をつけてはいけない仕事なこともあり、リスカはできない。
だから、私にとって、この手帳に思いっきり思いをぶつけるのは、リスカと一緒。
そう書いて、私は机の上に手帳を置いておいた。
家族で会議を終えた後、蘭ちゃんがまだ帰ってきていないことに気づき、部屋を見にきた。
家の間取りとして、リビングを通らなくても、玄関から部屋に直行できるから。
いるのかなー?って。
ドアノブに手をかけると、鍵はかかっていなく、開いていた。
私は申し訳ない気持ちもありながら、ドアを思いっきり開けた。
そして、暗い部屋の中、ベットに寝転んでいる蘭ちゃんを見つけた。
蘭ちゃんは、座ったまま寝ていた。
相当、疲れているんだろうな…
私は、蘭ちゃんは本当にすごいと思う。
好きなことを仕事にして、お金貰ってて、“ずるい”とか言ってる人いるけど、それは絶対違うと思う。
だって、好きなことを仕事にするって、自分が得意だと思っていたことを批判される覚悟がいるんだよ?
アンチで傷つくし、認められないと辛いし。
そして、机に目を落とす。
手のひらサイズの赤い手帳。
開かれていたページには、たくさんのことが書かれていた。
パラパラとページをめくっていく。
すると、近日の方の日記はぐちゃぐちゃに書かれていることがわかる。
“死にたい”
“辛い”
“やめたい”
“苦しい”
“上手くいかない”
たくさんの言葉に目が止まる。
そして、ある日の日記を見て涙が出てきた。
私の泣き声で起きた蘭ちゃんに、私は強い声を出して歯向かう。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。