ぼんやりとした灯りの下、
良き友人であった彼の人が好んでいた
蒸留酒をちびちびと飲んでいた。
蒸留酒は度数が高いから、
一気飲みなんてしようものなら、
潰れてしまう。
そう云えば、彼は辛いのが好きだった気がする。
洋食屋で、よく激辛の咖喱を頼んでいた。
その時私は、
「よくそんなのが食べられるね。
味が判らなくなりそうなものだけれど。」
なんて言ったっけ。
小さく呟いた、その後に続けようとした言葉は、
アルコールに飽和して音にならなかった。
ただ、小さな息が漏れただけだった。
昔、元上司が言っていた。
「手に入れたものは
その瞬間から失うことが確定されている」と。
其の通りだ。
良き友だった彼はこの世を去り、
元上司は4年前に姿を消し、
共に彼らに振り回された彼は組織を去った。
………………全て、一瞬だった。
まるで各々がそうする様に打ち合わせていたように、
止まっていた歯車に急に潤滑油をさしたように、
一瞬ですべてが起こった。
厳密に言えば少しずつ違うのだろう。
彼が組織を去り、
敵対組織の長との戦闘の末に彼がこの世を去った。
その代償に
我が組織は合法に異能者を抱えられるようになった。
そして、その後に元上司も消えた。
あまりにも酷かったように思う。
良き友であった筈なのだ。
少し位、話をしてくれたって良いじゃないか。
でも、私にはそんな事を思う資格はない。
何故なら、彼を殺したのは私だからだ。
それだけじゃない。
何十人も、何百人も、何千人も、殺した。
組織の記録に書かれている量の5倍は殺しただろう。
頼んだ蒸留酒を飲み干し、静かにカウンターに座らせる。
カラリと氷とグラスのぶつかる音がして、
灯りが眩くそれを照らす。
綺麗だ。
まるで宝石のようで、私には似合わない。
ああ、痛いな。
コトリと音を立てて差し出されたグラスを持ち、
遠く、まばゆい思い出と共に飲み干した。
空虚な胸の内も、
吐き続けた謝罪の言葉も、
己の罪も、
分不相応な涙も、
全て脳に回ったアルコールに溶かされてしまった。
唯、酷い痛みだけが響いていた。
痛むのは、舌か、喉か、頭か、目の奥か。それともーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー…………。
彼女は最強で孤独な暗殺者。
静かな影となる哀れな怪物。
影を見つけられたものは、未だいない。
誰も、影を見つけられないのだ。
足元にあるのに。
これは、孤独な怪物が人間になるまでのモノガタリ。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。