任務や報告書の作成等、
職務をこなして一段落ついて、息を吐く。
ふとした時に思い浮かべるのは彼女の姿。
先を進む彼女の後ろ姿は美しくて、気品がある。
華奢でしなやかなのに安心感があって、
風に靡く長い藍色の髪が柔らかそうで、
鮮やかな金の瞳が神秘的な、
あまり自分の事を話さない不思議な人。
優しい声も、
鼻をくすぐる香りも、
背中を合わせた時の体温も、
全てが、何度も彼女を好きにさせる。
7年前、初めてあの金の瞳と目線を交わらせた時、
無性に惹かれた。
太宰の横で、光の無い瞳のままこちらを見つめていた。
少し手を動かした時、
カサリと音が立ち、職務中だったことを思い出す。
ああ、彼女が隣にいたなら、
この程度直ぐに終わらせるのに。
彼女に補佐として付いてもらっていたクセに、
使いっ走りにばかりに使って、
緊張に晒し続けた太宰が憎たらしい。
確か、1糎四方に切った上で鶴にした
重要書類を提出させたことがあったんじゃなかったか。
その時彼女は、
一つ一つ綺麗に開いて、
精密に組み合わせて、
テープで整えて提出したと言っていた。
彼女自身もまた、手先が器用だから。
太宰は
「大丈夫だよ、森さんはその程度じゃ怒らないから」
なんて言っていた気がする。
そんな太宰が上司だったからか、
「胃がいくつあっても足りない」とよくぼやいていた。
今、彼女は太宰の代わりに幹部の座に就いていて、
太宰が帰ってきたら、
また補佐として働くことになるのだろうか。
それとも、他の幹部を押し退けて幹部のまま、
マフィアに居続けるのだろうか。
判らない。
判らないけれど、願わくば幹部のままでいて欲しい。
対等な関係で顔を合わせられるから。
幹部でいられないのなら、せめて、俺の補佐になって欲しいと願う。
コンコン、と扉がノックされる音と共に現実に帰り、また職務をこなし始めた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。