第4話

彼女
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2026/03/13 12:00 更新
 任務や報告書の作成等、

 職務をこなして一段落ついて、息を吐く。


 ふとした時に思い浮かべるのは彼女の姿。


 先を進む彼女の後ろ姿は美しくて、気品がある。


 華奢でしなやかなのに安心感があって、

 風に靡く長い藍色の髪が柔らかそうで、

 鮮やかな金の瞳が神秘的な、

 あまり自分の事を話さない不思議な人。


 優しい声も、

 鼻をくすぐる香りも、

 背中を合わせた時の体温も、

 全てが、何度も彼女を好きにさせる。


 7年前、初めてあの金の瞳と目線を交わらせた時、

 無性に惹かれた。


 太宰の横で、光の無い瞳のままこちらを見つめていた。


 少し手を動かした時、

 カサリと音が立ち、職務中だったことを思い出す。


 ああ、彼女が隣にいたなら、

 この程度直ぐに終わらせるのに。


 彼女に補佐として付いてもらっていたクセに、

 使いっ走りにばかりに使って、

 緊張に晒し続けた太宰が憎たらしい。


 確か、1センチメートル四方に切った上で鶴にした

 重要書類を提出させたことがあったんじゃなかったか。


 その時彼女は、

 一つ一つ綺麗に開いて、

 精密に組み合わせて、

 テープで整えて提出したと言っていた。


 彼女自身もまた、手先が器用だから。


 太宰は

 「大丈夫だよ、森さんはその程度じゃ怒らないから」
 
 なんて言っていた気がする。


 そんな太宰が上司だったからか、

 「胃がいくつあっても足りない」とよくぼやいていた。


 今、彼女は太宰の代わりに幹部の座に就いていて、

 太宰が帰ってきたら、

 また補佐として働くことになるのだろうか。


 それとも、他の幹部を押し退けて幹部のまま、

 マフィアに居続けるのだろうか。


 判らない。


 判らないけれど、願わくば幹部のままでいて欲しい。


 対等な関係で顔を合わせられるから。


 幹部でいられないのなら、せめて、俺の補佐になって欲しいと願う。


 コンコン、と扉がノックされる音と共に現実に帰り、また職務をこなし始めた。

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