そう言うと同時に扉を開け、鏡花を先に入れる。
それと同時にちょうど扉の近くにいた国木田君に声を掛ける。
鏡花を引き渡して、今度こそ、と踵を返す。
本当は首領から伝言を預かっているけれど、今のあの人には…太宰には、きっと要らない言葉だろう。
新しく居場所を見つけて、見せることの少なかった笑顔を見せて、少し明るくなって。
そんな人に、「古巣に戻ってこないか」だなんて言うのは酷だろう。
それに、これ以上に暗い世界に曝したくない。
振り返り際に、精一杯の笑顔を向けてから扉を閉めた。
私は、貴方の忠実なる下僕にはなれなかった。
これは命令違反だから、罰せられるべきなのだ。
それでも、きっとこの事を私は口にはしない。
彼らに誓ったから。
昼の世界に彼がいる限り、
夕刻の世界を彼が生きる限り、
天から彼が見ている限り。
私は彼らの最大限の幸せを願うのだ。
それが、私にできる最大の罪滅ぼしだから。
藍色のマフィアは、光の世界に影を残して歩き出した。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!