第44話

ウソかマコトか① *フリーナ
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2026/02/11 08:03 更新











フリーナ
 ふふん!
どうだい、この完璧なケーキ!


フリーナ
 芸術的すぎて、食べるのがもったいないくらいだろう?










フリーナの自室





僕は胸を張って、お皿に乗ったショートケーキを指し示した





正直に言えば、少しだけ形が崩れてしまったけれど……





まあ、僕が切ったという付加価値があれば、それすらも「演出」の一つさ!











あなた
 うん、すごく綺麗だよ 
ありがとう、フリーナ







君がいつものように優しく微笑んで、フォークを手に取る






……あぁ、これだよ、これ!







この、何万人もの喝采よりも僕を高揚させる、







キミだけの声!







演者になれる!って何度も何度も舞台に誘ったけど、








キミは恥ずかしがって舞台には来てくれなかった








僕と並び立てる存在じゃない、だって言ってたけど








僕はキミと演じたいのに!








誰よりも特別なキミと、








舞台の景色を分かち合いたいのに!











フリーナ
……ま、まあね! 僕が切ったんだから当たり前だよ!
君も、食べれることを光栄に思うといいよ!









僕は隣に座るキミの顔を盗み見ながら、






余裕ぶって紅茶を一口啜った






本当は、キミが「美味しい」と言ってくれるかどうか、






不安で心臓がバクバク鳴っているなんて






キミが好きないちごのショートケーキ






エスコフィエに頼んで、作ってもらったんだ






……神様である僕の口からは、死んでも言えないけれど






フリーナ
……ねえ。美味しい?



あなた
うん、最高に美味しいよ
フリーナと一緒に食べると、もっとね








キミがふふっと笑って、僕の顔を覗き込んでそう言った








……ずるい。ずるいよ、それは!







僕がどれだけ頑張って「完璧な僕神様」を演じようとしても、






キミの行動ひとつで全部台無しだ!







フリーナ
……っ、そ、そうかい! 
だったら、明日も、その次の日も!



フリーナ
最高のモノを振る舞ってあげよう!






僕は顔が熱くなるのを隠すように、少しだけキミの肩に寄りかかった





キミからはいつも、お日様みたいな安心する匂いがする。





フリーナ
……ねぇ、あなた?


あなた
なあに?


フリーナ
僕は、世界中の人々に愛されるスターだ
……でもね、キミにだけは、スターとしての僕じゃなくて……ただの『僕』を見ていてほしいんだ







言葉にすると、急に恥ずかしくなって、こわくなって






逃げるようにキミの肩に顔を埋める







言葉にした瞬間、喉の奥がキュッとなったんだ







気障なセリフ、でも






これは、嘘偽りのない、僕の"本心"で






……なのに。




フリーナ
……なんてね! 
今のはちょっとしたジョークさ! 驚いたかい?




急に怖くなった







本当の僕なんて、空っぽで、弱くて、ちっぽけな女の子なのに






それを見せたら、キミは失望して僕の元を去ってしまうんじゃないか?







そんな恐怖から、僕はまた気恥ずかしさを誤魔化すように、ジョークだと言って逃げようとした







本当の僕を見てほしい。







その言葉は、嘘偽りのない願いなのに。










あなた
ふふ、驚かないよ
私は、どんなフリーナも大好きだから


フリーナ
…!!


フリーナ
そうだろう、そうだろうとも!


フリーナ
僕は完璧だからね!
どんな僕でも大好きになるのは必然の事さ!


フリーナ
……約束だよ
僕の隣は、キミだけの特等席なんだから
誰にも譲っちゃダメだからね!




必死にそう告げた僕を、キミは静かに見つめて



あなた
……ふふっ





キミは同意の言葉を口にする代わりに、ただ愛おしそうに笑って、僕の頭を優しく撫でてくれた






その温かさが、僕の孤独も、臆病な逃げ道も、全部優しく包んでくれる気がして






言葉なんてなくてもわかる






キミが今、僕に触れている事が、何よりの「答え」なんだ。





僕は顔を上げて、






キミの瞳の中にいる、






幸せそうに頬を染めた一人の女の子ボクを確認した







フリーナ
……ねえ、あなた。明日は何をしようか?




僕はキミの手を引いて、窓を勢いよく開けた






窓の外には、陽光がきらきらとダイヤモンドみたいに
乱反射する、






美しいフォンテーヌの街並みが広がっている








フリーナ
パレ・メルモニアまで散歩するのも、
新しいスイーツ店を制覇するのもいい!
キミとなら、ただの散歩だってとっても楽しい!





胸の中にあった重たい雲はもうどこにもない!






代わりにあるのは、キミと一緒に歩き出す、きらきらした希望の光だけ!






フリーナ
さあ、見ているがいいよ、世界!


フリーナ
僕らの『これからの物語』は、どんな演目よりも輝かしくて、最高にハッピーなものになるんだからね!




キミと笑い合いながら、僕は確信していた





僕の本当の人生ステージは、今、この瞬間から、





これ以上ないくらいキラキラに輝きながら始まったんだ!








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