突き返されたTシャツを握りしめたまま
私は何もできず、何も言えずにいた。
ジュンくんは1歩近づいてくると
私の肩に両手を伸ばした。
そこで言葉を切って
ジュンくんの表情が少し歪んだ。
そう言って私を見るジュンくんの目は
熱っぽく潤んでいて、綺麗すぎて目が離せない。
私の肩に置かれたジュンくんの両手が
背中に回された拍子に
ジュンくんの肩に掛かっていたタオルが落ちた。
抱きしめられた耳元に、ジュンくんの体温と
心臓の音がダイレクトに伝わってくる。
…熱くて、とても速い。
ジュンくんの緊張が私にまで伝染してしまって
こんなことしか聞けない。
それでも時間があまりない中会いに来てくれた。
それにこんなこと、絶対慣れてないはずなのに…
私まで躊躇してちゃダメだ。
顔を上げて、ジュンくんと目を合わせる。
【ジュンside】
そこからは夢中だった。
文字通り、夢の中にいるみたいだった。
「女の人とちゃんと両想いになって
付き合ったことがない」と言った僕のことを
きっとあなたは気遣ってくれたんだと思う。
あなたはあなたで男の人を
リードするなんて、きっと慣れてなんか
いなかったはずだ。
それでも僕をリードしようとしてくれている
その一生懸命さがらしくなく見えて
それが逆に可愛くて、愛おしくて。
心の声がそのまま声になって出てきてしまう。
抱き合って、ひとつになる瞬間。
それまで僕をリードしてくれていたあなたが
初めての余裕のない声を上げた。
掠れた甘い声が僕の耳元で響く。
その声を聞いた時に
僕があなたを守ってあげたいと思った
あの時を思い出した。
そんなあなたを好きだと思ったあの時を。
その彼女が今、僕の腕の中にいるなんて…。
本当に、夢みたいだった。












編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!