❣️🌸視点
心臓の音がうるさい
耳の裏がどくどくと波打って
荒い呼吸が乾いて沈む
くらい夜道は海底のようで
僕らは這い上がるように
海面を追いかけた
走れ、登れ、逃げろ
自分に言い聞かせた言葉と
握ったままのれるちの手
行く宛てがなくて
何も考えずに、真っ白な頭のまま
足は変わらず
あの展望台へと向かっていた
上り坂
足が限界突破してる、れるちも足がガタガタしてるし…、ッ
そろそろまかなきゃ、2人とも捕まっちゃう、
もう、れるちから何も奪ってしまわないように
僕が、出来ることは、それだけだと
パァンッ
鋭い発砲音が僕たちを貫く
頬を掠めた弾が髪を靡かせて
れるちの頬に付いた傷
細い何かで、切られたような跡
狙いはれるち
騎士はカースト制度では僕より身分が低いから
こんな世界だから、僕には刃向かえないんだ、
なら、
銃は高価だし、扱いが難しいから数が少ない
その数少ない兵器を、ここで出してきた
つまり
かなり限界に近いはず……
僕が走ることを辞めたことに何かを察したのか、れるちが腕を引っ張ってくる
違うの、ごめんね、
僕は、きっとこうなることが正解で、ッ
身分が高いからって、罰を受けないのは違うって
僕が
僕で
証明しなきゃ、
パァンッ
スローモーションに見えた
れるちに向かって行く弾を
泣き叫ぶれるちを前に、僕は動かなかった
ね、これが正解だって
知ってるでしょ、?
暖かかった
熱が
いつか
君が
____
ドサッ
痛いはずの胸が、さっきまでのちっとも変わらずどくどくと波打っている
違う、僕はもう目覚めないはずで……ッ
あれ……、僕……
ピントが合わない視界に、白い何かがふわりと舞う
腕を抑えて僕の前に座り込んでいるれるちが居た
切れたれるちの髪が、地面に散らばっていた
銃弾で髪が切れたんだ、
僕はれるちを庇おうとして突き飛ばされて
また、れるちに僕は守られてしまった
どうしていつもこうなんだろう
僕は
王子なのに
近づいてきた騎士達が、僕の腕を固定して縛りつけようと手錠のようなものを出してくる
だめ、れるちが殺されちゃう、ッ!!!
次々と叫び倒れていく騎士達
…れる……ち、?
右目が割れたガラスのように、ひびの入った
透明で透き通った色のない瞳になっていた
消えた色は空を切って
れるちが僕を置いて行けないことを知っているのか、1人の騎士の声を合図に一斉に僕を目掛けて騎士が襲ってくる
パリンッ
ガラスが割れる音がした
れるちの叫び声と同時に、周りいた騎士たちが呻き声をあげて
バキッ
関節が逆に曲がってる…
腕が捻れてすごい方向に向いている
首も直角に…、
血を吹き出して倒れた騎士たちを前に、呆然と立ち尽くす
ただ、ここに立っているのはれるちと僕だけで
無数に転がっている死体の中で、れるちが崩れ落ちた
片目を抑えて、ぼろぼろに泣いていた
れるちが
やったんだね、
れるちが、
殺したんだ、
僕を守ったのは、
れるちの
"魔法"だった













編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!