話し声が聞こえる。右から左から。
様子を見に来てくれたのかな。迷惑かけちゃったよな。悪いことしたな。
にしても、騒々しい。
寝かせたいのか起こしたいのか、どっちなの。
ゆっくりと目を開けば、ベッドの周りにいる七人の大きな大人。そしてその隙間から見える、先ほど目覚めた時よりさらに暗くなった窓の外。
小人なら絵になるのかもしれないが、こんなに図体の大きい男達が周りを囲んで俺一人を凝視している景色は圧迫感が半端じゃない。
かすむ目を擦り、そんなことを考えていると、藍と同じように後方に立っていたたっちゃんがベッドサイドに腰掛けるリベロの二人を掻き分けて、据わった目のままこう言った。
甲斐くんに遠慮がちに肩を掴まれているたっちゃんと、西にがっちり羽交締めにされている藍。
そんな対照的な二組が喚いている中、話し声と共に部屋のドアが開く音がしたので、俺は上半身を起こしてそちらに視線を移した。
登場した面々の口から出た解散宣言に、拘束されたままの二人がやんややんやとやじを飛ばす。
腕を組む関さんの一言で、途端に黙る二人。
わらわらとドアの前でつっかえながら、渋々部屋を後にする一同。
みんなの背中を押してドアの外へ追いやる関さんが、一人残る様子の祐希さんにそう告げる。
無言で頷いた祐希さんはその背中を見送るとドアを閉め、こちらを振り返った。
部屋に来てから一度も口を開いていない祐希さんの表情からは、何も読み取れない。
いつもなら嫌悪や憎悪や、感情の揺らぎも、眉の動き一つで判るはずなのに。
静かにこちらへと近づく祐希さんはどれともとれない面持ちをしていて。それなのに、逃してはもらえない気配はしっかりと放っている。
ベッドの側に立った祐希さんの開いていた手が拳に変わり、腕が振り上げられる。
反射的に、来る衝撃に備えてぎゅっと目をつぶった。
けれど。
予想に反した軽い感触。
振り下ろされた拳は、ぽすっと間抜けな音を立てるかのように、力なく頭上に着地していた。
俺だけじゃなく、みんなね。
そう付け足し、俺の頭に手を置いたまま、ベッドに腰を落とした祐希さん。
さっきまでの気配が嘘のように消え、むしろ弱々しいほどに力なく、言葉を紡ぐ。
握った拳を緩め、控えめに頭を撫でながら、じっとこちらを見つめるその姿は。
あまりに真っ直ぐで、懇願するかのように、一心で。
とても腹を立てている人とは思えないくらい、悲しそうな顔をしていた。

























編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!