車田先輩と交代した私。
ボールは月山国光側にあり、兵頭さんの「二ノ構!」という合図でフォワード陣営が私達の方に上がってくる。フォーメーションを変えながら、4人がかりで真ん中に集まってきたのだ。
私はすぐさま上を見上げた。
すると、大きな空調のような扇風機…フィールドの真ん中に位置する3つの扇風機が動き始めた。
相手の監督を振り返れば、何かタブレットのようなものを見ていたので、…そこに情報が載っているのだろうと推測出来る。
私は誰にも聞かれていないつもりで口を開いていたが、あの反応からしてマサキは何か気づいたのだろう。何いってんだコイツ…みたいな目で見てきた。
でも、そんなことを考えている余裕は無い…!
兵頭さんの合図で竜巻に向かって進む月山国光陣営。
「月山国光炎の陣!」という声と共に、こちらへ走り込む。
拓人の指示により止めようと動く先輩達だったが、竜巻の威力が強いらしく、中々止められない。
私も、竜巻に向かって全力疾走する。…が、私が到達する前に竜巻が消えてしまった。……あれ、私が交代した意味とは。
せっかく攻略出来るって宣言したのに、これじゃあ意味がない。段々パスを回してこっちに斬り込んでくる月山国光。
…まあでも、ここで落ち込んでる暇なんか無いよね。
一文字さんにボールが渡り、彼はシュート体勢に入る。
不本意だが、ここはマサキに任せようと思い、そのまま私は中盤の方へと走っていった。…多分中盤の方が竜巻が多そう。
そして、マサキはボールをカット。
月山国光陣営は「敵ながら見事だ…」と呟いていることから、悪い子達では無いのだろうなと言うことが判明する。
そのまま上がってくるマサキ。
今度こそ竜巻を…!と思い、マサキからパスをもらおうとする私だったが、マサキはなんというかこう…ツンって感じでパスを出してはくれなかった。
そのまま相手にカットされてしまい、ボールは月山国光へ。
前から思ってたけど、マサキも多分京介と同じツンデレって奴だろうか。
どちらにせよ、信じてもらう為には信じなくちゃならないのだから、私は信じるけど…。蘭丸のお顔がちょっと怖い。
そんなことを言っている間に、ボールは南沢先輩に。
しまった…竜巻攻略するつもりでいたから、本来のディフェンスポジションに戻らないと!
再び全力疾走をする私。
ダメだ…なんか今日凄く調子が悪い!なんか走ってばっかりな気がする!!
嘗ての仲間、同年代同士のアツいバトル…と言えば聞こえは良いが、今は革命派とフィフスセクター派の2択という考えに縛られている2人の、派閥を掛けた勝負なのだ。
そして、南沢先輩のシュート…“ソニックショット”が。
三国先輩は“フェンス・オブ・ガイア”で対抗し、見事セーブ。
人は必ず成長する、ってことだよ。
ボールを貰い、そのまま拓人にパスを出す。
竜巻が収まっている今のうちに仕掛ける、と言っているが、実際の所どうなのだろうか。竜巻の出る位置は、恐らくランダム。だとすれば、本当に本物の災害のような…
いやでも、流石に威力がコントロールされている筈。
私が考え始めていると、月山国光は今度は右に寄る。これが“三の構え”だそう。…一ノ構、二ノ構、三ノ構、…こんな上手くいく事ある?やっぱフィフスセクター側だから分かっているのだろうか。
どちらにせよ、彼らが右に寄ったということは、逆に左に竜巻が発生するのでは。
天馬にボールが渡ると、案の定竜巻が。
自分達の身を守ることは出来るけど、それじゃ同時にこっちにも筒抜けじゃないですかね。
まあでも、天馬なら…
行く手を阻む向かい風も、乗ってしまえば追い風になる、…この前特訓の時にそう言っていた天馬なら、きっと。
天馬は“そよかぜステップ”でディフェンスラインを突破。
月山国光陣営はだいぶ驚いているようだったが、同時に雷門陣営も驚き感心していた。
私が先に攻略して、皆にドヤッ!私の能力凄いでしょ!ってアピールしたかったのに!台無しじゃないですか!!!←
……まあ、天馬が攻略出来たのは嬉しいけども…
ボールは天馬から倉間先輩に渡る。
そして、それと同時に倉間先輩はシュート体制に。
シュートコースは完璧。
ライン上にディフェンスは0人。
入る!と思われた“サイドワインダー”のシュートだったが……
嘘でしょ…、まさか、兵頭さん、貴方も………
兵頭さんの化身、“巨神ギガンテス”による“ギガンティックボム”で、倉間先輩の“サイドワインダー”は完璧に封じられてしまう。
それから、再び竜巻が発生する。
兵頭さんはボールをそこに蹴り込み、「二ノ構」を宣言。…中央に3個、タクティクスは「月山国光炎の陣」って所だろうか。
でも、さっきの竜巻とは少し違うらしく…竜巻も動いている。
最早ほんとに災害級!?
そう思いつつも、どこの竜巻にボールが入っているのかは見逃さない。
拓人は「神のタクト」で道筋を作り、天城先輩はそこに向かおうとするが、竜巻が強すぎて動けないみたいだ。
蘭丸が向かおうとしたが、マサキがそれを追いかけた。
私も行きたい!…けど、人数が多すぎても意味がないだろう。ならば、…どちらかがボールを止めてくれるのならば、私は…!!
今小競り合いみたいなの要らないから!!そう言いたくなりそうだったが、そんな説教こそ今は要らないだろう。
そういえば昔も、今のマサキと蘭丸みたいにロンと誰かが言い合いとか色々してたっけ…と感慨深くなってしまう。けれど、ほんとにこれこそ要らなさすぎる。分かっているのに抗えない。
そして、ボールは月山国光フォワード南沢先輩へ。
私は、ディフェンスに間に合わないと分かった為、大声で叫び始めた。こうなったら精神攻撃だ、((
だがしかし、南沢先輩はシュートを放ってしまう。
…畜生、間に合わなかった……
なけなしの言葉を述べると、南沢先輩は少しだけ反応したようだった。自分でも思った以上に力の無い声に思わず頭を抱えそうになる。
こういう時、クロなら、ロンなら、…回復のお姉さんなら、なんて言ったんだろう。どんな言葉をかけてあげた?
私は気を遣うとかそういうのに乏しい。
空気読まず、分からないことは分からないっていうし、発言だってしちゃう。…自分でも、分かってる。
でも、…そらしてほしくないじゃん。
自分の気持ちから。正直な心から。…大好きなサッカーから、目を逸らしてほしくない。
竜巻が邪魔をした所為で、フェンス・オブ・ガイアは不発。
南沢先輩のソニックショットにより、月山国光が先取点1点を奪取したのだった。
ーーー
そして、南沢先輩が自陣に戻っていく中、私もポジションに戻る。パパは、とりあえず自分の役目…私の場合はディフェンスを全うした後、余裕があったら攻撃に参加すれば良いって言ってたけど、今のままじゃ攻撃しなければ点は入らないだろう。
そんなことを思っていると、マサキが天城先輩に声をかけているのを見かけた。
……蘭丸がそんなこと言うわけない。
マサキが言い切るよりも前に、天城先輩は蘭丸に向かって歩き出した。それと同時に、マサキはツリ目状態の笑みを浮かべたのを、私は見てしまった。
本当に、信じてないんだね。仲間のことを。
なんか…違和感があるような、無いような。
気の所為…だろうか。
そう言われた蘭丸はマサキの所に向かおうとする。でも、拓人が「霧野、」と言いながらそれを止めた。
…マサキはシードじゃない。
でも、雷門を…特に蘭丸を混乱に陥れようとしているのは事実。クロのことは多分知っている、…シャドのことも。彼らとつながっている?…この前のことからして、シャドとは繋がっていなさそうだった。あるとしたらクロだけど、今更彼がそんなことする筈ない。そもそもここに戻ってくることすら難しいのがママの故郷なのだから、そう簡単に連絡を取れるとは思えないし。
つまり、本人の問題ってところかな。
それならば、とりあえず私は………
言えることだけを簡潔に言い、右サイド奥に向かっていったのだった。
ーーーーーーー
in観客席
試合を見ている2人は、続けざまにそうつぶやいた。
そんな会話を続けていると、一人の女性が近づいてきた。
赤い髪に、青色の瞳。…その外見は、どことなく彼と似ている。
だけど、その積極的な喋り方や女性的外見で、すぐに彼ではないと悟る。…髪の長さからして違うし、外見は女性味が強い。なにより、彼が自分達にそんな満面の笑みを向ける筈がない。
だけど、ロキからしたら彼女はここにいるべき人ではない。
逆にシャドからすれば、…「遂に来てしまったか」、と。
その二人の反応で、彼女は幾らか察したらしい。
何も言わず立っている二人を他所に、ご機嫌な様子で帰っていく女性。
見えなくなると、ロキは観客席にてシャドを詰め寄った。
そう言ったということは、クロに紹介されたわけではない。そして、それでも尚触れてほしくない、と。
そう言っていることは嫌でも伝わってきた。
ロキは唇を噛みながらシャドを睨み返す。
するとシャドは、ニッコリと微笑みながら「何か?」と言い放った。
シャドはゆっくりと目を細める。
ロキがそういうも、シャドは平然と喋り返した。
…そう、シャドのやるべきことは、でぃすぴあことピアトルから、目を離さないようにすること。
挑発したように言うシャドに向かって、…今度はロキもまた、小さく微笑みながらそういった。
その笑みは、まるで自嘲するかのようにも見て取れたのだった。


























編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。