犯人は現場に戻ってくると、何処かでそう聞いた。
戻って来ずとも、少しくらい痕跡は残ってるんじゃないかと思い、付近を可能な限り調べもした。
朝も昼も夜も、付近の変化が無いかを探し続けた。
そして、遂に見つけた。
一瞬視界に映った四角い箱とその色は、理科室や店でよく見たマッチに酷似していた。
鞄の中は……まぁ、あれだけ大きくて形の整った物なんて多くはないだろう。
確証は無くとも、あのあからさまな行動と格好を見れば、放火犯でなくとも不審者だということは理解に難くない。
今から追尾をするのも、ずっと見続ける事さえ今は辞めた方が良い。
そうは見えないが、警戒はしているのだろう。
時間と場所、外見の特徴のメモは取った。
今日は引き上げるとしよう。
帰宅後少しして、通知音と共に、画面にメッセージが表示された。
『犯人の特徴掴んだら教えてくれ』
『黒いパーカー、黒マスク、大きな鞄。多分ガソリン系だと思う。再犯狙ってるかも』
今考えても不審者の典型例みたいな奴だな……。
そういえば、可芙伶はどうして俺が追ってると知っているんだろう?
『今日の17時頃、現場に戻ってきてた。たまたま見かけちゃってね』
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Side_DD
『黒いパーカー、黒マスク、大きな鞄。多分ガソリン系だと思う。再犯狙ってるかも』
無理を承知の上で送ったメッセージに対しての返信は、予想とは外れて具体的な物だった。
此奴は前に攻め寄られた事を覚えていないのだろうか。
自分が何をしようとしているのか、俺が何をしようとしているのか、それをしっかり理解しているのか?
この件だけでいうのであれば有り難いのだが、何かに騙されそうで心配になる。
『今日の17時頃、現場に戻ってきてた。たまたま見かけちゃってね』
偶然にしては詳細まで見たんだな、とツッコみたい気持ちを抑えながら、スマホの電源を切る。
思考はエネルギーを消費する。
時間的にそろそろ夕飯の時間だ。
考えるのは後にして、まずはエネルギーを補給するとしよう。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。