第16話

君と過ごすクリスマス🎄
7,508
2021/12/20 14:48
2021年も、クリスマスの鈴の音と共にもう終わろうとしている。

街は淡いネオンに彩られたクリスマスツリーが至る所に飾られていた。

華やかな景色を横目に、
私にクリスマスなんて無縁。そう思っていた。

今年は韓国で過ごすから家族とも過ごせないし。

買い物を済ませ足速に宿舎へ帰る。

木枯らしが冷たい…東京よりも北にある韓国の冬は、肌に冷気が刺さるかのように寒い。

エレベーターに乗り、ドアが閉まりかけた瞬間、人影が見えたので慌てて「開」ボタンを押した。

ゆっくり開いたドアの向こうに居たのはヒョンジンだった。
ヒョンジン
ヒョンジン
あっ ドアありがとう!
あなたさんも今帰り?
あなた
あなた
はい!練習生のレッスンも今日で終わりで、明日から冬休みです。
ヒョンジン
ヒョンジン
俺達もだよー。仕事納めだった。
あなた
あなた
そうなんですか!?クリスマスや年末年始も、何かお仕事あるかと思っていました。
ヒョンジン
ヒョンジン
12月の頭は歌番組が多いけど、この時期は落ち着くんだよね。
特に今年はクリスマスイブが金曜だから、クリスマスは土曜でお休みなんだ。
あなた
あなた
休暇が取れて良かったですねー
ヒョンジン
ヒョンジン
うん!
ごめん!気がつかなかった。買い出し行ってくれたの?荷物運ぶよ。
夕飯の買い物袋をヒョンジンが持ってくれた。

丁度エレベーターは宿舎のある最上階に着いた所だった。
あなた
あなた
すみません。ありがとうございます。
ヒョンジン
ヒョンジン
いつも夕飯ありがとう!今日は何?
あなた
あなた
皆さん食べられるかわからなかったので、クリスマスっぽい物は買ってきてないのですが、パスタにしようかなって。
ヒョンジン
ヒョンジン
いいねー!!楽しみ!!俺も手伝うよ。
宿舎はまだ誰も帰ってきていなかった。

荷物を置いて早速ヒョンジンと夕飯作りに取り掛かる。

メンバーが帰って来る時間はヒョンジンも把握していなかったので、温めて食べられるようにソースだけを作っておいた。

ヒョンジンは野菜を切り、サラダを盛り付ける。

私はトマト缶を開け、キノコとニンニクを炒めトマトソースと絡める。

完成してもまだメンバーは帰って来ないので、二人で先に夕食を取る事にした。
ヒョンジン
ヒョンジン
あー美味しかった!ごちそうさまでした。
あなた
あなた
サラダもごちそうさまでした。
ヒョンジン
ヒョンジン
いえいえ、大した事してないよ。
食器を下げ洗い物をしていると、ヒョンジンは椅子の向きを私の方に変え、じっと見つめていた。

その視線に気がつき、ちらりとヒョンジンの方を見る。
ヒョンジン
ヒョンジン
あなたさんは…日本に帰っちゃうの?
あなた
あなた
いえ、今年は帰れないです。コロナもあるので。うちの実家はお爺ちゃんもお婆ちゃんも一緒に暮らしているので。
ヒョンジン
ヒョンジン
そっか…。家族に会えないのは寂しいよね…。
あなた
あなた
寂しいけど、練習生になったばかりなので、大丈夫です!自主練習頑張ります!
ヒョンジン
ヒョンジン
帰らないなら、宿舎にずっといるんだ?
あなた
あなた
はいー。何の予定も無いので、ずっと宿舎とレッスン室の往復ですね(笑)
ヒョンジン
ヒョンジン
ねぇ…今からちょっと出かけない?
あなた
あなた
今からですか?
ヒョンジン
ヒョンジン
うん。まだ20時過ぎだし。
…よかったらちょっと付き合って。
ダメ…かな?
あなた
あなた
今日はもうやる事無いので、大丈夫です!
ヒョンジン
ヒョンジン
ほんと!?
あなた
あなた
はい!
どこ行かれますか?何か買い出しとか?
ヒョンジン
ヒョンジン
ちょっと待ってて。すぐ用意してくるから!
急いで部屋に戻り、身支度をしているようだった。

韓国の冬は寒い。

夜に外に出るなら暖かい服を用意しないと。
そう思い、洗い物を終えた後、私も準備した。
ヒョンジン
ヒョンジン
うーー寒!!
外に出ると、キンと空気が冷たい。
ヒョンジン
ヒョンジン
ごめんね。こんな格好で。
ヒョンジンはコートの下にフード付きパーカーを着ており、フードを被ってマスクで顔を覆っている為ほとんど顔が見えない。
あなた
あなた
いえ(笑)ヒョンジンさんは芸能人ですから。外でバレたら大変です。
それより、何処へ行くのだろう。
私はてっきり近所に何か買いに行くのかと思っていたが違うようだった。

電車に乗り何処かへ向かうようだ。

二人で出かけているのが誰かにバレてしまっては大事になりかねない。

人が周りにいる間はヒョンジンと少し距離を取り、他人のように振る舞うよう努めた。

ヒョンジンもそれがわかっているようで、時々私がちゃんとついてきているか、振り返り確認している様だった。
ヒョンジン
ヒョンジン
着いた着いた♪
あなた
あなた
公園…?
ヒョンジンの目的の場所は大きな公園の様だった。

夜の公園はほとんど人がおらず、街灯も少ない。

ヒョンジンは目元のギリギリまで上げていたマスクを少し下げ、顔が少し見えるようになった。

私の方を見てにっこり微笑む。
ヒョンジン
ヒョンジン
ちょっと待ってて。
そう言うと、公園の前にあるお店へさっと入り、暫くすると両手にカップを抱え店から出てくる。
ヒョンジン
ヒョンジン
寒いよね。はいこれ、あなたさんはカフェラテで良かったかな?
両手で受け取ると、すごく暖かくて、ほっとする。
あなた
あなた
ありがとうございます。
すみません。気を遣わせてしまって。
ヒョンジン
ヒョンジン
ううん。何も聞かず、ついてきてくれてありがとう。人にバレないよう他人のふりまでさせちゃって…
「行こうか」と二人で公園の中に入って行った。
ヒョンジン
ヒョンジン
この公園、好きなんだ。
あなた
あなた
よく来るんですか?
ヒョンジン
ヒョンジン
たまに、かな。
夜の公園は一歩入った瞬間から凛とした空気に変わる。

ヒョンジンがくれたカフェラテが暖かくて、甘くて、一口飲む度に心が解けていった。

ほとんど人影が無い夜の公園を、たわいも無い話をしながらゆっくり散歩する。

最近見たドラマの話、夢中になって描いている絵の話、この前一人で焼肉食べに行った話。

話題は尽きる事なく、ヒョンジンの目的の場所へ着いた。
あなた
あなた
わぁ…
一面が開けたと思ったら、大きな池の畔だった。

街灯が水に反射し、キラキラと輝いている。

池の真ん中には小さな島があり、大きなクリスマスツリーが飾られていた。

柔らかなシャンパンゴールドの灯りで彩られたツリー。

それも池の水面に映り、二つのツリーとなって見える。

さっきまで少し離れた距離にいたヒョンジンが、ぴたっと私の横についた。

急に変わった距離感にドキっとする。
ヒョンジン
ヒョンジン
あなたさんに見せたかったんだ。
真っ直ぐツリーを見つめたまま、ヒョンジンがそう言った。
あなた
あなた
すごくキレイです。
連れてきてくれてありがとうございます。
ヒョンジン
ヒョンジン
喜んでもらえて良かった。
ねぇ、俺達って周りから見たらどう見えるかな…
周り?

見渡すと、ぽつん、ぽつんと一定の距離を保ちながら二人組がまばらに居る。

薄暗くて顔は見えないけれど、きっとカップルなのだろう。

今日はクリスマスイブ…恋人達が愛を深め合う日だ。

そう思ってハッとする。

周りを見渡して見えるのはカップルで、
それは側から見たら、ヒョンジンと私もそう見えるわけで…

ヒョンジンの方を見上げると、
ヒョンジンは私が見る前からずっと私を見つめてくれているようだった。
ヒョンジン
ヒョンジン
どう見えるかな
あなた
あなた
こ…恋人…同士に見えちゃってたりして…
言いながら恥ずかしくなって、顔がみるみる熱くなってしまい、もうヒョンジンの顔が真っ直ぐ見られなくて俯く。

するとシャラっと私の首に何か巻かれた感覚があった。

触れると…アクセサリーのような…?
ヒョンジン
ヒョンジン
写真撮ろう?
そう言うとマスクとフードを外し、手で髪をバサバサっとかき揚げ、すっと整える。
クリスマスツリーをバックにスマホでツーショットを撮影するヒョンジン。
ヒョンジン
ヒョンジン
よく撮れてる。見て。
そう言って写真を見せてくれた。

なんてキレイな顔なんだろう。

さすがアイドル。
生で見てもカッコイイのに、写真の中のヒョンジンもカッコイイままだ。

ついヒョンジンに目が行ってしまったけれど、
私の首元に巻かれたキラリと光る物…

オープンハートの真ん中には小さなダイヤモンドが揺れていた。
あなた
あなた
あの!これ…!
ヒョンジン
ヒョンジン
ふふっ クリスマスプレゼント
「街で見つけて、あなたさんの事が頭に浮かんだから買ったんだ。気に入ってくれたら嬉しいな」とはにかみながらそう言った。

クリスマスプレゼントをいただけるなんて思ってもいなかったから本当に嬉しかった。

ましてやヒョンジンからだなんて。

冬である事を忘れるくらい、心がぽかぽかと暖まる。
ヒョンジン
ヒョンジン
キレイ…よく似合ってるよ。
ヒョンジンの真っ直ぐな瞳に見つめられながらそう言われ、ドキドキする。
ヒョンジン
ヒョンジン
見てー
そう言ってヒョンジンが首元から身につけていたアクセサリーを取り出した。

シルバーの平たく丸いトップがついたネックレスだった。
ヒョンジン
ヒョンジン
よく見て
トップは表から見るとツルンとしているが、
ひっくり返すと、私が付けているハートのトップがピッタリ重なる様な窪みが刻まれていた。
ヒョンジン
ヒョンジン
あなたさんに付けたトップで型取りしたんだ。
これなら、おそろいっぽいでしょ。
あなた
あなた
お揃い…
ヒョンジン
ヒョンジン
嫌だった…!?
あなた
あなた
いえ!!
ヒョンジン
ヒョンジン
よかったら、たまにつけてね。
あなたさんがそのネックレス付けてる時は、俺もこれ付けるから…
あなた
あなた
はい!たまにと言わず、毎日つけます!
思わずそう返事してしまったけど、良かったのかな…。
お揃いの物を持つなんて
ヒョンジン
ヒョンジン
嬉しい!気に入ってくれて。
じゃぁ俺もプライベートで毎日つけよう。
屈託無く笑うヒョンジンの顔を見ていると、迷いが薄れる。
つけていいんだと思わせてもらえる。
ヒョンジン
ヒョンジン
もうちょっと歩こうか。
反対側から見ると夜景と重なるんだよ。
そう言って、手を差し出す。
あなた
あなた
あ…あの…
手を繋ごうのサインに、緊張しすぎて固まってしまった。
ヒョンジン
ヒョンジン
俺も結構緊張してるんだけどな…
ヒョンジンが緊張してる!?
手を繋ぐ事に!?

断ってはいけないと、勇気を振り絞って、ヒョンジンの手に自分の手を重ねた。

ヒョンジンは嬉しそうに笑ってギュッと握ってくれる。
ヒョンジン
ヒョンジン
良かった。手を取ってくれて。あー緊張した!嫌われたらどうしようかと思った!
手を繋いだまま、緊張を解こうとするかのようにピョンピョン飛び跳ねているヒョンジンが堪らなく可愛い。
ヒョンジン
ヒョンジン
2PM先輩の「My House」ってこんな気持ちなのかな…
そう言ってヒョンジンは頬を赤らめ、
ゆっくりと歩き出した。

淡い光の中、幻想的な景色を眺めながら…


---「君と過ごすクリスマスーヒョンジン」fin---

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