第10話

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2025/05/20 11:13 更新
おおはらmen
はいはい、そこまで〜



少しおちゃらけた声が後ろから聞こえ、次に私は大きな腕に包まれていた。

雨栗
…誰だよ、離せよ。


いつもなら分かる筈の、声の主すら誰か区別できない。

失礼だとしても、聞かずにはいられなかった。

自分の声とは思えないほど低い声に、私は感情を抱くこともできた筈なのに。

混沌とした思考の内では、正常な判断すら無いようだ。




おおはらmen
何しようとしてたの?


優しい声の影響か、荒れ狂った波が過ぎ、異様に心が静かになる。

それを見計らって、また仮面病の症状が私を襲った。

自然と、仮面下の口角が上がってゆく。


雨栗
別に、何もしてないですよ?


私は精一杯、冷静を装った。
















馬鹿だ





お前は何もできない”無能”





だから、はやく死ね






この声の主は誰だろう。

永遠と罵倒する声は、いつ無くなるのだろう。



雨栗
……そんなに死んでほしい?
おおはらmen
ん?


自然と口から出ていた。

そんな言葉は幾つもの棘を含む。




正常な判断、と言うものを私は出来なかった。











men Side




雨栗
……そんなに死んでほしい?
おおはらmen
ん?


そろそろ問診の時間で、ぐりちゃんを呼びに病室に来たのだが。



やはり…。




前に、ぐりちゃんから過去の話を聞いていた。

仮面病の症状を含め、性格的にぐりちゃんは抱え込んでしまうクセがある。

今回もきっと。





この様子だと、幻聴の症状がでている。

話の脈が合っていないこと、突発的な発言から診てとれた。


仮面病の症状。

作り物の様な表情・感情の他に、幻聴を伴うこともある。

精神疾患を合併することも少なくない。






おおはらmen
ぐりちゃん、今辛い?


こういう時には、幻聴の症状等に出来る限り触れないことが大切。


雨栗
え…?


俺の腕の中で静かに包まれるぐりちゃん。

はっきりとしない返答を繰り返す。



雨栗
うん…辛い…
おおはらmen
大丈夫、俺は味方だから
おおはらmen
辛い理由話せる?


数秒の間の後、ぐりちゃんはゆっくりとその言葉を口にした。

雨栗
誰かがずっと…死ねって…
雨栗
早く死ねって、言ってくる…
おおはらmen
そっかぁ…
雨栗
だから、死なないと駄目って思って…


開けられた窓の方を見ながら、数分前の出来事を思い出す。

部屋に入ると、窓に足をかけていたのだから本当に焦った。


ただ、本当に無事で良かった。



















仮面病の症状と合併して、幻聴症状が見られた。

精神疾患を合併している可能性があるので、カウンセリングを行う。

症状が安定するまでは、抗うつ剤を投与していく。

その他、摂食障害や睡眠障害の可能性を踏まえ、夜間の見回り等を強化する。





安心したのか、もう寝息を立てて寝るぐりちゃんを横目に俺はカルテにまとめていく。



おおはらmen
(精神疾患ね、、)
おおはらmen
("専門外"なんだよなぁ。)



少なくとも、ここは奇病専門の病院だ。

ここの医師達は一応心理士の資格を持っているが、それでも" 彼 "が許さない。




……それもそうだよなぁ。





" 奇病持ちだった " 医師達に任せらんねぇよな。








気持ちも分かるけどさぁ。


俺達も人間だよ、少なくとも。

























俺は、カルテを持って病室を出た。

大きなため息を、聞かれないように気を張りながら。

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