教室のドアを開けると、すでにそこには朝の喧騒が満ちていた。
自分の席へ向かうと、前の席に座る仗助くんと億泰くんが、珍しく早い到着でこちらを振り返る。
「お、あなたが来たぞ」
「 今日はいつもより遅かったじゃねーか」
「……あはは、ちょっと色々あってね」
私は曖昧に笑って、カバンを机に置いた。
「なあ、今日転校生が来るらしいぜ。どんな奴か知ってるか?」
仗助くんの問いに、私の脳裏にはあの端正すぎる横顔が浮かぶ。
正直に「隣の家の人だよ」と言おうか迷ったけれど、彼のような浮世離れした美少年と隣人だなんて、変な噂が立つのも少し怖い。
「登校中にすれ違ったよ。……見たことないくらいの、すごいイケメンだったよ」
「へぇ〜、イケメンかよ」
興味を失ったように億泰くんが鼻を鳴らし、話題が別の方へ移ったところで、予鈴のチャイムが響いた。
ホームルームが始まり、担任が教卓を叩く。
「よし、今日は転校生を紹介するぞー。入ってこい」
教室中の視線がドア一点に集中する。
現れたのは、朝別れたばかりの、あの彼だった。
「皆さん、はじめまして。支倉未起隆です」
その声が響いた瞬間、クラスの女子たちの間に黄色い悲鳴のようなざわめきが広がった。
けれど私は、ただポカンと口を開けて彼を見つめることしかできない。
(まさか、本当に同じクラスになるなんて……!)
「じゃあ、支倉の席はネミの隣な。ちょうど空いてるし、そこでいいだろ」
先生の何気ない一言が、私の心臓を跳ねさせる。
「あ、お隣さん!」
未起隆くんはこちらに気づき、その無表情な顔に弾んだ声で私を呼び、彼は迷いのない足取りでこちらへ向かってくる。
その瞬間、教室中の視線が痛いほど私に突き刺さった。
驚きと、困惑。そして、ほんの少しの喜び。
「お隣さん」という言葉が持つ特別な響きが、嵐の前触れのようにクラスの空気を震わせていた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。