「 純喜、あなたならもう退院したけど 」
『 えっ。そうなん? 』
「 あんたさ、行動すんのが遅いのよ。 」
『 そんなこと言われてもなあ、、 』
俺の元彼女の、市川あなた。
事故に遭って、失明したって聞いた。
ただの元彼女なら、まあ関わることもないし、問題はないんやけど。
それとは違って、ひとつ大きすぎる問題がある。
『 おれが、ちゃんと言っておけばな 』
「 未練残りすぎてさ、あんたなんで別れたんだよほんとに 」
『 七実ちゃんなあ、何回も話したやろ? 』
ぜんぶ、おれが悪い。
あんな軽いこと、言うんじゃなかった。
退院したらしいし、連絡したいけど、3年以上いちども連絡していないわけで。
このタイミングでしたら、ただ心配してる奴みたいになるしな。
おれが伝えたいのは、そこじゃないし
『 腹減ったな 』
病院から帰る途中、昼飯でも買って行こう。
…と思ったのと同時くらいに、体が勝手に動いていた。
目線の先には、見覚えのあるシルエット
彼女は、白杖をついていた。
『 おにいさん、なにしてんすか 』
振り向いた彼女の顔は、
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。