「全然~敬語じゃなくていいんだよ~!実の家族なんだし!」
幼い少女のように笑う彼女は、俺の実の母親。
彼女は病気を患っているため、入院生活を送っている。
……父様の病院で…、
「貳は体調とか悪くない?何かあったら、お医者さんの父様に治してもらうんだよ~!」
そう母様は笑顔でいい、
俺の頭を撫でる。
……ここは病院。
俺の父、『片方雄二』はこの片方病院の院長だ。
どの医者にも敵わない、日本一の実力を持つ。
医者になるために生まれてきたといっても過言ではない、
天才だ。
けど、それは彼の表の顔…。
そんな天才が足を踏みはずし、とんでもなく最低な人間になった。
この病院の地下は大きな研究所だ。
とんでもない実験をしていた。
〝人を不死身にする薬…。”
彼らは、『イモータリティ・メディスン』っと呼んでいる。
まぁ、実際に不死になるわけではない。
身体の治りが早かったり、少しタフになるだけだ。
目立つ傷はちゃんと残る。
火傷跡なども、残る場合がほとんど。
そして、その凄く扱いにくい薬を実験するのだ。
実験という名の拷問。
虫、薬物、人力、全てを使って被検体を拷問する。
まぁ、それが彼の裏の顔だ。
…母様は、それに気づいてないと思う…。
だから俺がどれだけ母様に訴えても、
………信じてもらえないだろうなぁ…。
「……うぅ…っ」
その時、俺は突然泣き出してしまった。
「ふ、貳!?どうしたの?痛いところでもあるの…?」
母様はその幼い顔を不安そうにしかめながら俺の顔を覗き込む…。
「ひっく…っ…ズーッ…、ううん、大丈夫…っちょっと寂しくなっただけだよ…っ俺は大丈夫だから、安心して…っ」
あふれ続ける涙を必死にぬぐいながら言った。
けど、俺の涙はあふれるばかり…、
「ふ、貳…?」
母様の心配そうな声が聞こえた。
その声を聴くたびに、泣けてしまった…。
「ごっごめんっ…、一回っ…ひっくっ……部屋から出るっ…。また明日ね…っ」
「え?、あ…うん…。お大事にね?」
母様の言葉を聞きながら俺は部屋を出た。
「……ひっくっ…うぅ…っ」
「…ズーッ……、」
「…………ふぅ…。」
何とか落ち着けた…。
「…はぁ、俺…なんでこんなこと…。」
そんなことを独り呟いていると、
「…おや、貳。こんなところにいたのですね。」
その瞬間、背筋が凍る。
ゾワッと、鳥肌が全身に走る。
「と、父様っ!?」
俺は、奴から距離を取ろうとした。
けど…、その行為は彼にとってはお見通しだった、
彼は俺の腕を握る。
「っ!?」
「逃げないでください。」
相変わらず、感情の読めない声色だ。
「な、何の用です…?実験はもう終わったはずじゃ…、」
すると、父様は俺の手を引いて言った。
「今回は別の用事ですよ。」
そう、優しい声で…。
「……はっ」
一瞬、自分の目を疑った。
「…う……うぅ……ッ」
そこには、無残な姿の12歳ぐらいの少女がいた。
両腕はあり得ないほど伸びドロドロに溶けていて、足はもう太ももより下はなくなっていた。
左側の頭の頭皮もねじれ曲がって、片目も飛び出て、頬にはイボみたいなものができて何倍にも膨れ上がっている。
「うぁ……、ぅ……っ」
それでも彼女は生きていた。
「こちらは被検体です。」
父様はそういう。
「被験者って…、あの薬の…?」
そう聞くと、彼は軽く頷いた。
「前にも言いましたが、この薬は扱いが難しいのです。」
「貴方は身をもって体験してるから知っていると思いますが、この実験は人の生死が関わっているんです。」
「そう、実験も被験者を殺す勢いでやっているんです。」
「なので、薬の摂取する量が少なすぎると、過度な実験で死んでしまします。」
そのまま、「けど」と続けた。
「この薬は多く摂取してもダメなんです。」
「彼女がいい例ですね。」
そして、彼は少女を指さして言う。
「彼女は薬を多く摂取してしまったせいで、あんな姿になってしまいました。」
「体が耐えられなくなって、突然変異が起きたんでしょう。」
そう言いながら、父様は彼女に近づいた。
「うあぁぁぁあああああ゛あ゛ぁ゛!!!!!!」
すると彼女は、赤ん坊のように声を上げて泣き叫んだ。
「ほら、知能レベルも低下している。」
「この変異の研究も進めたいところですね。」
「っ!?」
そう言う彼に対して鳥肌が立った。
すると彼はハッとしたような顔で言った。
「あ、本題でしたね。」
「貴方にやってもらいたいことはただ一つ。」
そう言うと、彼はためらいも何もなく、淡々と言った。
「お‟手伝い”です。」
「……え?」
お手伝い…?
すると彼は、何かを訂正するかのようにいった。
「実は、ある実験でこの薬『イモータリティ・メディスン』は一度人の体内に入っても、もう一度その人から摂取することができると分かったんです。」
「薬は血液を通って心臓のところに行くので、心臓の血液はもう薬そのものなんです。」
「そして、貳にはそのお手伝いをしてほしいのです。」
そう言い、彼は声色を変えずに言った。
「できるだけ彼女が生きたまま心臓から採血をしてほしいんです。」
「…は!?」
驚いた。
何を言ってるんだコイツは…、
「私はほかの実験で忙しくてですね。なので貴方に手伝ってほしいんです。」
「安心してください、貳は器用ですから、きっとうまくできます。」
そう言い、奴は俺の頭を撫でる。
「さぁ、最初は私も横で教えるので、分からないことがあればちゃんと聞いてくださいね。」
そう言い、俺にメスを渡してきた。
「がんばってください。」
それだけを告げて…。
「……っ」
俺は、少女のほうへ一歩ずつ近づく。
「うわぁぁぁぁあああああんっ!!!!あ゛ぁ゛ぁぁあああ!!!!」
泣き叫ぶ彼女の肩を押さえて、胸にメスの歯を立てる。
「んあ゛あ゛あぁ゛ぁ゛ぁ゛あああ゛ぁ゛!!!!!!んぎぃ゛ぃ゛い゛い゛!!!!!」
彼女の叫び声が響く。
「……ご、…ごめんなさい…っ」
グチャッ
「……、」
全てが終わった…。
手がまだ震えてる…。
「素晴らしいです。貳。」
声が聞こえた。
聞きたくもない声…。
そして、その手が俺の頭を撫でる。
「……なにが……、素晴らしいだよ……っ」
怒りを抑えきれなくなった俺は、父様の手を払った。
「おっと、どうかしたのですか?」
「いい加減にしろよ!!なんで…、なんで俺なんだよ!!なんで俺が汚れ仕事をしなきゃいけねぇんだよ!!」
「いつも実験台として痛い事されてんのに…っ今度はお手伝いという名の殺人じゃねぇか!!」
「俺だって普通に生まれて!!友達作ってっ!!学校行って……っ!!普通に…っ…生きてぇ…っ!」
「普通に…っ愛されたい…っだけなのにぃ……っ」
「ふざけんなよ…っ!!」
「……ふざけんなぁ……っ」
気が付けば、自分の気持ちを泣きながら全て話していた。
「…貳。」
彼は、呟くように俺の名前を呼ぶ。
「貳、辛かったのですね。」
そう言い、
俺を抱きしめる。
「…っ!」
よしよしと、泣いている小さい赤ちゃんをあやす様に頭を撫でてくる。
…なんなんだよ…、
なんなんだよこいつは…。
奴の行動を読み取ることができない。
俺を純粋にあやしているのか?
それとも…、何か企んでいるのか?
怖くなって、俺は父様の腕の中から脱出した。
「あ、どうかしたのですか?貳。」
いつも通り、マスクのせいで何を考えてるのか、どんな表情なのかわからない。
それが余計に怖いのだ。
「と、とにかく…、これ以上母様に迷惑をかけたくないんだ…。だから、もうやめてくれ…。」
「……お願い…します…。」
頭を下げた。
深々と。
また涙が溢れそうになった。
必死に抑えた…。
「その心配はいりませんよ。」
「…え?」
彼は一言、こう言った。
「そ、それは…、どういう…?」
そう聞くと、彼は
「…貴方なら、分りますよ。」
そう、意味深に言った…。
あれから数週間、
アイツは…、俺のお願いをちゃんと聞いているようだ。
実験にされることも、手伝うこともない。
正直、とても嬉しい。
あの痛みや苦しみから解放されたのだから。
最近は毎日母様の病室に向かっている。
「母様。」
「あ、貳!いらっしゃい!」
相変わらず、幼い顔だ…。
…母様は…、
13歳で俺を妊娠した。
幼い頃から病気を患い、この片方病院に入院した。
その時に父様に会って、恋に落ちたらしい。
恋心というのはすごいものだ…。
そして、まだ小さく弱い身体なのに俺を妊娠し、出産した。
そのせいで、体はズタボロ。
年齢的にも、身体的にも、家族などには下ろすように言われたらしい。
けど、父様と母様は…、
それでも俺を生むことを決めた。
家族を作るって…、
……変わった夫婦だ…。
当時、誰もが思っただろう。
旦那は大病院の天才院長で、
嫁は13歳の病人少女。
下手したら捕まるレベルの夫婦だ。
まぁ、実際結婚はできなかったんだけど…、
二人の家族や友達は、誰一人このことを世間に話さなかった。
あの二人の幸せそうな顔を見ると、話すことはできなかったって…、
俺はいつも思う。
よく何歳かもわからないおじさんを、13歳の女の子が好きになれるなと。
確かに父様は見た目はすごく若く見える。
実年齢は不明。
でも父様…、母様が入院しているときから院長やってるからなぁ…。
……若くて40前後だろう。
まぁ、13歳というのはそういう物なのだろう。
純粋に人を好きになり、恋に落ち、
…………幸せな家庭を作ろうと______
「貳?」
「うひゃっ!?」
いきなり話しかけられ、変な反応をしてしまった。
「え、あ、か、母様…、どうしたのですか?」
「あ、いや、ぼーっとしていたから…、考え事?」
「……まぁ、そうだね…。」
流石に、母様と父様のこと考えてたとは言えない。
「……ねぇ…貳。」
「…ん?」
すると、母様が、いきなりこんなことを言ってきた。
「…人生、ノリと勢いで何とかなるからねっ!!」












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。