「お邪魔します」
「いいって。誰もいねえし」
外でお昼を食べてダラダラしてからようやく宇髄の家に来た。
宇髄は高校生にして一人暮らしである。
「一人暮らしにしては立派なとこ住んでるよなお前」
「そりゃどーも」
ボロくないアパートに住む宇髄は普通にいい部屋に住んでいた。なんでも実家が金持ちだかなんだかでお金は援助してもらっているらしい。
何度か家に来たことはあったが泊まりは初めてだ。
「風呂も綺麗じゃん。シャワーだけじゃないのな」
先に風呂を確認するとちゃんとしていたので一安心する。湯船に浸からないと落ち着けないのだ。
「だろ。2人入れるぞ」
「はぁ?流石に1人で入るよね?」
てかお前のデカい身体じゃ無理だろ、と言うと
「一緒に入りたいって?」
なんてわけのわからないことを適当に返されたので俺も
「なわけ」
と適当に返事をした。
「なーなー、映画鑑賞しようぜ。ポテチある。コーラもある…けどお前炭酸飲めないんだよな」
冷蔵庫を開けて聞く宇髄に
「飲めないんじゃなくて飲まない。舐めてる?」
そう返す。
「いや何も言ってねえのよ。実はオレンジジュース買ってありまーす」
「…舐めてるでしょ。流石に」
「でも好きだろ?」
「うるさいな」
そう言いながら俺も手伝おうと立ち上がると
「いや座ってていいから」
と言われた。
「なに、急に。気遣うなよ。ジュース代も払って貰ったみたいだし」
「いいんだって。クリスマスプレゼント」
「はぁ?」
なんなの、と思いつつ正直お金に余裕があるわけではないので安心する。
「何みんの」
「んー。あ、タイタニック見たいな。見たことある?」
「ない」
即答すると宇髄は笑った。
「祐介って映画好きそうな見た目しといてあんま見ねえよな」
「映画ねむくなる」
「祐介って真面目そうなのに授業中も寝てるもんな」
「点数は取れてる」
「いつもテスト前俺が教えてるからだろーが。ねぼすけ」
コップをもらったのでありがとうと言っておいた。
「お前だいぶ第一印象と違うよな」
「別に」
「意外と甘えん坊だしな」
「…はぁ?うるさい。いつ俺が宇髄に甘えたの」
「んははっ、いや咄嗟にうるさいが出てる時点でだいぶ派手に怪しいから」
怪しいってなんだよ、と思いながら、むかついたのでとりあえず軽く殴っておいた。
「お、ネコパンチ」
「舐めてるでしょ」
「舐めてる」
(ほんとわけわかんない)
そう思いながらも居心地がいいのは事実だった。だから今一緒にいるのだ。
「待って、俺持ってんのよ。タイタニックのDVD」
「宇髄は意外と映画見るよね」
「まあな」
しかもDVD派なのだ。宇髄は。
「お、あったあった」
宇髄は大きな体を折り曲げてプレイヤーにDVDを入れる。
「タイタニックってラブストーリーなの」
「まーまー、知らないで見ても面白いから」
−数分後−
(意外と面白い…)
見始めて1時間くらい。ローズが飛び降りようとするのをジャックが止めるシーン。
「あ、ここ知ってる」
「一番有名なとこ」
ロマンチックだよな、と宇髄は言う。
「わっ」
想像以上に早い段階でキスをしたのでびっくりして声が出た。
「んははっ、わって。祐介は絶対洋画向いてないよな」
「うるさいな」
(向いてないとか言うなら洋画選ぶなよ…)
と思いつつ見進めると宇髄からの視線を感じるようになった。
(またなんかあんの)
と思っていたらヌードモデルの話になってきた。
(あー…そういうことね。また俺のこといじろうって魂胆だな)
ちらっと宇髄の方を見ると目が合う。
「なーに期待してんだヘンタイ」
にやにやする宇髄。
(コイツ)
そうやっていつも初心でピュアな俺をいじめるんだ。
「してない。してない」
「あははっ!2回言った」
なんて言っていると画面いっぱいにヌード姿が映し出された。
(うわ、流れ的に超ロマンチックで超いいシーンなのに…。1人でみたかった…)
本来は芸術的で素敵なシーンのはずなのに宇髄が隣にいるから気にしてしまうしガン見するのも憚られて、なんとなく目を逸らす。
「お子ちゃまにはまだ早いか」
「こっち見んな。映画に集中して!」
「へいへい」
暫くすると車が出てきた。
「船の中に車」
「割と乗ってることもあるよな」
「へぇ…」
なんて当たり障りのない会話をしていたら2人が乗り込んでいった。
(…なんで?)
と思ったけど一旦別のシーンに切り替わったので取り敢えず画面をみつめる。するとすぐにまた車のシーンに戻ってきた。
「うわっ!」
急にローズが車の窓を叩いたものだからびっくりして叫ぶ。
「何して…」
口に出した時に理解した。
(間違えたそういうことか。一瞬気づかなかった)
隣を見ると案の定宇髄はニヤニヤしていてムカついた。
そのまま最後まで駆け抜けていったが泣きそうになって鼻をすする度に宇髄がこちらを見てくるから思う存分泣けなかった。
「どーよ。ド派手に面白かっただろ。さすが語り継がれるだけあるよな」
笑って言う宇髄に
「…1人で見たかった」
とぼそぼそ返す。
「俺はお前と見れて楽しかったぜ。祐介は劇場で見るの向いてないよな。結構声出る」
なんなんだこの男は。
「家だから出してるだけ。流石に映画館では出ない」
そう返してお菓子のゴミを片付ける。
「もう5時半か。ご飯頼む?」
「え、出前とんの」
あまりに自然に言ってきたからスルーしそうになったが出前なのか。
「おうよ。出してやるから好きなの選べ」
「太っ腹…」
選んでいる途中でふと思い出す。
「あれ、クリパは?」
「そういやそうだったな。チキンでも頼むか」
「適当だな。それメインじゃないの」
まーまー、と適当に返す宇髄。この適当加減が居心地が良い所以かもしれないと思った。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。