練習開始。
みんなもう新曲の振りの通しができてて
僕はみんなに追いつこうとただただ必死だった。
確かに遅れている焦りから来る緊張もあるけど、
僕はそれより…
今回の曲のサビでヒョンジンさんと面と向かうところ
がある。そこでどうしても意識して緊張してしまう。
これはいつになったら治るのだろう。
ずっとこのままでいる訳にはいかないのに。
曲が流れて、靴が床に擦れる音が響く
よし、間違えずにやれてる
次の振りは
そのとき、動揺したのか
軸がよろけて
ヒョンジンさんの手に当たってしまった
途端に全身に電気が走るような痛みを感じた
やってしまった、と後悔した時には遅い
僕は顔を歪めて、その場に蹲ってしまった
ヒョンジンさんは何が起こったかわからず
動揺している…
あぁ、またヒョンジンさんを傷つけてしまう、
どうして僕は……
息がしずらい、
自分の鼓動で周りの声が遠のいていく
僕、僕……
みんな心配してくれているのに
僕はその場に居られなくなって
駆け足で練習室を出た
堰を切ったように荒く息を吐き出す
何故こんな身体になってしまったんだ
何故僕はあの人のことを思い出せないんだ
ずっと、ずっと僕だけ記憶の中を彷徨ってて
みんなに迷惑だけかけて
このままだとあの人のことをもっと……
ボロボロ涙が出てきた。
前が見えない
苦しい、誰か────────
廊下に響いたのはあの人の声
彼の悲しそうな声色に心苦しくなり
顔を向けられない。
必死に声を絞る
僕に触れないように行き場を失った彼の手
やるせなさからか、拳を握る強さが
増していくように見えた
話してしまうことで彼を更に傷つけるのではないかと
怖くなった。
でも縋るような瞳で頼み込む彼を前に
黙り通すことなんて
僕にはできない、。

















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。