第140話

〔道枝駿佑〕本音
7,410
2021/02/05 11:25


時刻は午後4時。



授業も終わって、教室で帰り支度をしていると…




「あなたちゃんっ!!」



『っ、!駿佑くん…!!』



「準備できた?? 一緒に帰ろ!」



なんて、教室の扉に寄りかかりながら、ニコニコの笑顔でそう言うのは



隣のクラスで、…彼氏の、道枝駿佑くん。




友達「今日もあなたのお迎えですか?笑 相変わらずラブラブやなぁ~!あなたと駿佑くんっ!!」



「まぁーなっ!笑 ほらあなたちゃん、帰ろ?」



『…うんっ!』



はいっと、優しく差し出された駿佑くんの手を、私がぎゅっと握れば



そのまま、私の手を引いて、ご機嫌な様子で歩き出す駿佑くん。



「あっ、そうだあなたちゃん!今週末どこ行きたいか考えた?」



『うーん、水族館…とか?』



「ええやん、水族館!!楽しみやねっ!」





なんて、無邪気に笑う駿佑くんの姿にドキッとして、胸が高鳴って。



駿佑くんと付き合い始めたのは、4ヶ月ぐらい前。



振られる覚悟で勇気を出して、私から告白をしたことがきっかけで。



…ぎゅっと繋がれた手も、隣を歩く駿佑くんの綺麗な横顔も。



今でも夢なんじゃないかってぐらい、全部が全部嬉しくて。



あぁ、私本当に駿佑くんの彼女になれたんだなぁ~



って、そう思う度に、嬉しくて。ドキドキして。



…でもね、、?




「あっ、そういえば!今日な?先生の荷物運ぶの手伝ったら、飴ちゃん貰ってん!」



羨ましいやろ~? ってそう言いながら、子供みたいに貰った飴を見せてくれる駿佑くん。



嬉しいのに。駿佑くんと付き合えて、幸せなはずやのに。



…駿佑くんは、誰にでも優しいから。



私にはもったいないくらい、優しくて、カッコイイから。



私と付き合ってくれているのも



告白をした私を傷つけまいと思った、駿佑くんの優しさなんじゃないかって。



本当は駿佑くんは、私のことなんか、好きじゃないんじゃないかって。



嬉しい、幸せって、そう感じるのと同じくらい



…不安になって、胸がきゅーっと締め付けられる。





「……っ!、………ちゃん!、あなたちゃんっ!!」



『…へっ、?』



「…大丈夫、、?さっきから何だか様子変やけど…。」



『えっ、あ、ううんっ、全然平気…! ちょっとぼーっとしてただけやからっ!あ、何の話だったっけ?水族館、、?私イルカショー見たいな~っ…!』





本当は、私だってこんな事考えたくないし



勝手に不安になって、マイナスな事ばかりを考えてしまう自分は、大嫌いで。



もうこんな風に考えるのはやめたいって、そう思ってるはずなのに。



付き合って4ヶ月。もう4ヶ月も経つっていうこに



手を繋ぐこと以上に、何も進展のないこの状況。



…私は駿佑くんと、、…キスをしたり、それ以上のことだってしたいって思うのに。



やっぱり駿佑くんは、私の事なんて好きじゃないのかな…?



って、そう不安になってしまう。




「あなたちゃ『駿佑くんは何が見たい?』



『やっぱりイルカ? あ、チンアナゴとか??笑』



「ねぇ、あなたち『可愛いよね、チンアナゴ。私も結構好きだし!』



「あなたちゃん、俺の話『楽しみだなぁ~…っ!』



『いっぱい見たいやつあるから、もしかしたら時間足りなく「あなた!!!」



『…っ、!…、、っ。』




自分でも、何やってるんだろうって思ってる。



でも、それぐらい今の私には、駿佑くんの気持ちが全然わからなくて。



少しでも話を…、不安な気持ちを誤魔化すように、私が話を続けていれば



名前を呼ばれたのと同時に、ぐいっと腕を引っ張られて、駿佑くんの方へと引き寄せられて。



気づいた時には、私は駿佑くんに抱き締められていて。




「あなたちゃん。…ええよ、そんなに無理しなくても。」



『無理なんか…、してないもんっ、、。』



「ううんっ、絶対嘘。だったら何であなたちゃんは泣いてるん?」



『…っ、、。』



「俺、ちゃんと聞くからさ。 本当の事、教えて…?」




なんて、ぎゅーっと私の事を抱き締めながら、優しい声でそう言う駿佑くん。



そんな駿佑くんの優しさに、今ならこの不安も、なんだか全部話せるような気がして。




『…駿佑くんは、、私のこと好き…?』



「へっ、?」



『だって駿佑くん、手を繋ぐ以上のことしてくれないし、それに駿佑くんは優しいから…!』



『本当は私と付き合ったのだって、私の事が好きなんじゃなくて、振ったら私が傷つくと思って同情して…!「ねぇ、あなたちゃん。」



「俺がいつそんなこと言ったん?」



『それは…、言ってないけど、でも…っ!!』



「嬉しかったから。俺もずっとあなたちゃんのこと気になってて…、好きだったからっ…!だから、あなたちゃんと付き合うことにしたんやで?」



『…っ、、。…でもっ、、。』



「それに俺、あなたちゃんが思ってるほど、優しくないで?笑」



『…えっ、、?』




「だって、俺。あなたちゃんに嫌われたなくて、今までその…、キス、、とか出来ひんかってん。…ごめんな、?不安にさせて。ほんまにごめんっ、、。」




なんて、今までの優しい声とは違って、少し震えた声でそう言う駿佑くんに



嫌われてた訳じゃなくて、駿佑くんも不安だったんだってわかって、何だか、安心して。




『私の方こそ勝手に勘違いしてごめんね…?』



「ううんっ、あなたちゃんは悪くないよ。俺の方がごめんっ。」



『ううんっ、私の方が!』



「いや、俺の方が…!……って、なんか、コントみたいやな?笑」



『だねっ。笑笑』



なんて、お互いの気持ちを伝えあった後は



しばらく2人でぎゅーっと抱きしめ合いながら、笑いあって。




「…そろそろ、帰ろっかっ、!」



『うんっ!』



「あ、待って!!1つだけ忘れてた!!」



『えっ、?…っ!!!』




真面目な顔をして "忘れてた~" なんてそう言う駿佑くんに



何を忘れたんやろうな~って思っていれば、駿佑くんの顔が近づいてきて



そのまま、おでこに優しくキスされて。




「よしっ!!じゃあ、今度こそ帰ろっ…!!」




なんて、私の手を取って歩き出した駿佑くん。



そんな駿佑くんは、後ろから見てもわかるぐらい、耳まで真っ赤になっていて、可愛くて。



あぁ、もう。やっぱり好きだなぁ~って、そう思って。





「あなたちゃん。



次のデート、覚悟しておいてな?」




『…っ!!』





なんて、別れ際。



駿佑くんが言ったこの一言で。



私も、彼と同じぐらい真っ赤になったことは。



…きっと、言うまでもないんだろう。笑










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