時刻は午後4時。
授業も終わって、教室で帰り支度をしていると…
「あなたちゃんっ!!」
『っ、!駿佑くん…!!』
「準備できた?? 一緒に帰ろ!」
なんて、教室の扉に寄りかかりながら、ニコニコの笑顔でそう言うのは
隣のクラスで、…彼氏の、道枝駿佑くん。
友達「今日もあなたのお迎えですか?笑 相変わらずラブラブやなぁ~!あなたと駿佑くんっ!!」
「まぁーなっ!笑 ほらあなたちゃん、帰ろ?」
『…うんっ!』
はいっと、優しく差し出された駿佑くんの手を、私がぎゅっと握れば
そのまま、私の手を引いて、ご機嫌な様子で歩き出す駿佑くん。
「あっ、そうだあなたちゃん!今週末どこ行きたいか考えた?」
『うーん、水族館…とか?』
「ええやん、水族館!!楽しみやねっ!」
なんて、無邪気に笑う駿佑くんの姿にドキッとして、胸が高鳴って。
駿佑くんと付き合い始めたのは、4ヶ月ぐらい前。
振られる覚悟で勇気を出して、私から告白をしたことがきっかけで。
…ぎゅっと繋がれた手も、隣を歩く駿佑くんの綺麗な横顔も。
今でも夢なんじゃないかってぐらい、全部が全部嬉しくて。
あぁ、私本当に駿佑くんの彼女になれたんだなぁ~
って、そう思う度に、嬉しくて。ドキドキして。
…でもね、、?
「あっ、そういえば!今日な?先生の荷物運ぶの手伝ったら、飴ちゃん貰ってん!」
羨ましいやろ~? ってそう言いながら、子供みたいに貰った飴を見せてくれる駿佑くん。
嬉しいのに。駿佑くんと付き合えて、幸せなはずやのに。
…駿佑くんは、誰にでも優しいから。
私にはもったいないくらい、優しくて、カッコイイから。
私と付き合ってくれているのも
告白をした私を傷つけまいと思った、駿佑くんの優しさなんじゃないかって。
本当は駿佑くんは、私のことなんか、好きじゃないんじゃないかって。
嬉しい、幸せって、そう感じるのと同じくらい
…不安になって、胸がきゅーっと締め付けられる。
「……っ!、………ちゃん!、あなたちゃんっ!!」
『…へっ、?』
「…大丈夫、、?さっきから何だか様子変やけど…。」
『えっ、あ、ううんっ、全然平気…! ちょっとぼーっとしてただけやからっ!あ、何の話だったっけ?水族館、、?私イルカショー見たいな~っ…!』
本当は、私だってこんな事考えたくないし
勝手に不安になって、マイナスな事ばかりを考えてしまう自分は、大嫌いで。
もうこんな風に考えるのはやめたいって、そう思ってるはずなのに。
付き合って4ヶ月。もう4ヶ月も経つっていうこに
手を繋ぐこと以上に、何も進展のないこの状況。
…私は駿佑くんと、、…キスをしたり、それ以上のことだってしたいって思うのに。
やっぱり駿佑くんは、私の事なんて好きじゃないのかな…?
って、そう不安になってしまう。
「あなたちゃ『駿佑くんは何が見たい?』
『やっぱりイルカ? あ、チンアナゴとか??笑』
「ねぇ、あなたち『可愛いよね、チンアナゴ。私も結構好きだし!』
「あなたちゃん、俺の話『楽しみだなぁ~…っ!』
『いっぱい見たいやつあるから、もしかしたら時間足りなく「あなた!!!」
『…っ、!…、、っ。』
自分でも、何やってるんだろうって思ってる。
でも、それぐらい今の私には、駿佑くんの気持ちが全然わからなくて。
少しでも話を…、不安な気持ちを誤魔化すように、私が話を続けていれば
名前を呼ばれたのと同時に、ぐいっと腕を引っ張られて、駿佑くんの方へと引き寄せられて。
気づいた時には、私は駿佑くんに抱き締められていて。
「あなたちゃん。…ええよ、そんなに無理しなくても。」
『無理なんか…、してないもんっ、、。』
「ううんっ、絶対嘘。だったら何であなたちゃんは泣いてるん?」
『…っ、、。』
「俺、ちゃんと聞くからさ。 本当の事、教えて…?」
なんて、ぎゅーっと私の事を抱き締めながら、優しい声でそう言う駿佑くん。
そんな駿佑くんの優しさに、今ならこの不安も、なんだか全部話せるような気がして。
『…駿佑くんは、、私のこと好き…?』
「へっ、?」
『だって駿佑くん、手を繋ぐ以上のことしてくれないし、それに駿佑くんは優しいから…!』
『本当は私と付き合ったのだって、私の事が好きなんじゃなくて、振ったら私が傷つくと思って同情して…!「ねぇ、あなたちゃん。」
「俺がいつそんなこと言ったん?」
『それは…、言ってないけど、でも…っ!!』
「嬉しかったから。俺もずっとあなたちゃんのこと気になってて…、好きだったからっ…!だから、あなたちゃんと付き合うことにしたんやで?」
『…っ、、。…でもっ、、。』
「それに俺、あなたちゃんが思ってるほど、優しくないで?笑」
『…えっ、、?』
「だって、俺。あなたちゃんに嫌われたなくて、今までその…、キス、、とか出来ひんかってん。…ごめんな、?不安にさせて。ほんまにごめんっ、、。」
なんて、今までの優しい声とは違って、少し震えた声でそう言う駿佑くんに
嫌われてた訳じゃなくて、駿佑くんも不安だったんだってわかって、何だか、安心して。
『私の方こそ勝手に勘違いしてごめんね…?』
「ううんっ、あなたちゃんは悪くないよ。俺の方がごめんっ。」
『ううんっ、私の方が!』
「いや、俺の方が…!……って、なんか、コントみたいやな?笑」
『だねっ。笑笑』
なんて、お互いの気持ちを伝えあった後は
しばらく2人でぎゅーっと抱きしめ合いながら、笑いあって。
「…そろそろ、帰ろっかっ、!」
『うんっ!』
「あ、待って!!1つだけ忘れてた!!」
『えっ、?…っ!!!』
真面目な顔をして "忘れてた~" なんてそう言う駿佑くんに
何を忘れたんやろうな~って思っていれば、駿佑くんの顔が近づいてきて
そのまま、おでこに優しくキスされて。
「よしっ!!じゃあ、今度こそ帰ろっ…!!」
なんて、私の手を取って歩き出した駿佑くん。
そんな駿佑くんは、後ろから見てもわかるぐらい、耳まで真っ赤になっていて、可愛くて。
あぁ、もう。やっぱり好きだなぁ~って、そう思って。
「あなたちゃん。
次のデート、覚悟しておいてな?」
『…っ!!』
なんて、別れ際。
駿佑くんが言ったこの一言で。
私も、彼と同じぐらい真っ赤になったことは。
…きっと、言うまでもないんだろう。笑
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。