第139話

〔末澤誠也〕同窓会
7,157
2021/02/04 09:05


"学生時代、どんな生徒だった?? 何が一番楽しかった??"



大人になって、何度も聞かれるこの質問。



俺は、この質問が何よりも大嫌いだ。



学生時代なんて…、本当は1人でいる方が気が楽やから、好きなのに。



ただただ人の目ばかりを気にして、周りに合わせるように一緒にバカ騒ぎをして。



…楽しかった、なんて思ったこと、1度もない。



むしろ、思い出したくもないくらい、真っ黒に染まった俺の黒歴史。



だから、高校の同窓会なんて、仕事があるからって適当に嘘をついて



今まで参加したことなんか、なかったし。



何年かに一度、手元に届くこのうざったい招待状も



次は絶対、開けずに捨ててやるって決めたはずやのに…。




友達「……っ!、……やっ!誠也!! 今の話ちゃんと聞いてた!?」



「えっ、? あー、ごめんっ。笑 ちょっとぼーっとしてた。笑 」



友達「おいおいっ!!そこは久しぶりに会ったんやからちゃんと聞いとけや!!笑 」



「ごめんって!笑 で、何の話やったっけ?笑」



友達「だからな?俺が…」




正直、自分でもびっくりや。



あんなに行きたくなかった同窓会に、俺が今、参加しているんやから。



楽しくもない、思い出したくもないくらい最悪な学生時代。



…でも、一つだけ。思い出したから。



そんな最悪すぎる俺の過去に、光をくれた "彼女" の存在を。



…っていっても、向こうが俺の事を覚えている保証はないし



そもそも、今日ここに居るのかもわからへん。



実際問題、さっきから何度周りを見渡してみても、俺が探している "彼女" の姿は一向に見当たらない。



ここに長居するのも居心地悪いし、もう一度探しても見つけられへんかったら、このまま帰ろうかな~



なんてそんな事を頭の片隅で考えながら、ぐるっと、会場全体を見渡してみれば…




「、っ!…なぁ!なぁ、おい!!あんなやつ、うちの学年に居たっけ?」



友達「あっ、やっぱり誠也も気になる!?」



「え、あ、いやっ、、気になるっていうか…」



友達「クラスにさ、いっつも1人で居ためーっちゃ暗そうな女子居たやん?確か、あなた…?とかそんな名前の!」



「…!!!」




友達「そいつらしいんやけど、あんなに美人なら俺も告白しとけば良かった…って、おい!!誠也!?」




ビンゴや。



見た目が大きく変わってたから、一瞬わからんかったけど。そうだ、思い出した。



いつも、教室の隅っこの方に1人で居て。



あの頃の俺が喋っていたような、見た目が派手で、常にうるさい女子達とはまるで正反対。



少しでも触れてしまえば、今すぐにでも消えてしまいそうなくらい静かで、大人しくて。



でも、それでも。俺にとっては、誰よりも輝いて見えた



俺の、、"初恋の人" 。




「…あ、あのっ、!!」



『っ、!あっ!…えっと、、末澤くん…?』



「え、俺の名前覚えててくれたん、、?」



『ふふっ、笑 当たり前やんっ!末澤くん目立ってたし、何度か話しかけてくれたことあったでしょ? 私いつも1人だったから、嬉しくて。笑』




なんてそう言いながら、ニコッと微笑むあなたちゃん。



…やばい。



まさか覚えていてくれたなんて、思ってもいなかったから、想像以上に嬉しくて。



せっかくやから、ここは何としてでも話さんと…!



って、ニヤニヤするのを必死に堪えながら



「雰囲気…、昔と違うねんな、?」



なんて、そう聞いてみれば。



『あ~、うんっ。笑 …やっぱり、、変…かな、、?』



「ううんっ、似合ってるよ。凄く綺麗やもん。」



『ふふっ、笑 ありがとう。 誠也くんも大人っぽくなった? 身長は相変わらず小さいけど。笑』



「小さいは余計やん!笑 これ以上伸びんかってん、しゃーなしや!笑」



『えぇ~?笑』



雰囲気は昔と全然違うのに、あの頃みたいに、俺にだけに見せてくれた無邪気な笑顔は健在で。



そんなあなたちゃんの姿に、やっぱり好きやなぁ~なんて、思ったりもして。




『……………わく…の、、って言ったら…?』



「え、?」



『私が変わったの、末澤くんのためって言ったら…っ!、、迷惑…?』



「っ!!」



なんて、俺の様子を伺うように、上目遣いでそう言うあなたちゃん。



あぁ、もう。何それ、反則やんっ。



そんなの、可愛すぎるし、……期待する。




「迷惑なわけ…、ないやんっ。俺やって、あなたちゃんに会いたかってんから、、。」



『…っ、!…うんっ、私も、、。』




俺の言葉一つ一つに、頬を赤くしながら、嬉しいような、恥ずかしような



そんな素直な反応を見せるあなたちゃんは



やっぱり愛おしくて、…誰にも渡したくなくて。




「…なぁ、あなたちゃん。…これから2人で抜け出さへん?」




『…うんっ!!』




なんて、勇気を出して、俺が差し出し手を



嬉しそうに、ぎゅっと握ったあなたちゃんが



俺の "初恋の人" から、 大切な "彼女" に変わるのは。



…もう少しだけ、先の話。









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