"学生時代、どんな生徒だった?? 何が一番楽しかった??"
大人になって、何度も聞かれるこの質問。
俺は、この質問が何よりも大嫌いだ。
学生時代なんて…、本当は1人でいる方が気が楽やから、好きなのに。
ただただ人の目ばかりを気にして、周りに合わせるように一緒にバカ騒ぎをして。
…楽しかった、なんて思ったこと、1度もない。
むしろ、思い出したくもないくらい、真っ黒に染まった俺の黒歴史。
だから、高校の同窓会なんて、仕事があるからって適当に嘘をついて
今まで参加したことなんか、なかったし。
何年かに一度、手元に届くこのうざったい招待状も
次は絶対、開けずに捨ててやるって決めたはずやのに…。
友達「……っ!、……やっ!誠也!! 今の話ちゃんと聞いてた!?」
「えっ、? あー、ごめんっ。笑 ちょっとぼーっとしてた。笑 」
友達「おいおいっ!!そこは久しぶりに会ったんやからちゃんと聞いとけや!!笑 」
「ごめんって!笑 で、何の話やったっけ?笑」
友達「だからな?俺が…」
正直、自分でもびっくりや。
あんなに行きたくなかった同窓会に、俺が今、参加しているんやから。
楽しくもない、思い出したくもないくらい最悪な学生時代。
…でも、一つだけ。思い出したから。
そんな最悪すぎる俺の過去に、光をくれた "彼女" の存在を。
…っていっても、向こうが俺の事を覚えている保証はないし
そもそも、今日ここに居るのかもわからへん。
実際問題、さっきから何度周りを見渡してみても、俺が探している "彼女" の姿は一向に見当たらない。
ここに長居するのも居心地悪いし、もう一度探しても見つけられへんかったら、このまま帰ろうかな~
なんてそんな事を頭の片隅で考えながら、ぐるっと、会場全体を見渡してみれば…
「、っ!…なぁ!なぁ、おい!!あんなやつ、うちの学年に居たっけ?」
友達「あっ、やっぱり誠也も気になる!?」
「え、あ、いやっ、、気になるっていうか…」
友達「クラスにさ、いっつも1人で居ためーっちゃ暗そうな女子居たやん?確か、あなた…?とかそんな名前の!」
「…!!!」
友達「そいつらしいんやけど、あんなに美人なら俺も告白しとけば良かった…って、おい!!誠也!?」
ビンゴや。
見た目が大きく変わってたから、一瞬わからんかったけど。そうだ、思い出した。
いつも、教室の隅っこの方に1人で居て。
あの頃の俺が喋っていたような、見た目が派手で、常にうるさい女子達とはまるで正反対。
少しでも触れてしまえば、今すぐにでも消えてしまいそうなくらい静かで、大人しくて。
でも、それでも。俺にとっては、誰よりも輝いて見えた
俺の、、"初恋の人" 。
「…あ、あのっ、!!」
『っ、!あっ!…えっと、、末澤くん…?』
「え、俺の名前覚えててくれたん、、?」
『ふふっ、笑 当たり前やんっ!末澤くん目立ってたし、何度か話しかけてくれたことあったでしょ? 私いつも1人だったから、嬉しくて。笑』
なんてそう言いながら、ニコッと微笑むあなたちゃん。
…やばい。
まさか覚えていてくれたなんて、思ってもいなかったから、想像以上に嬉しくて。
せっかくやから、ここは何としてでも話さんと…!
って、ニヤニヤするのを必死に堪えながら
「雰囲気…、昔と違うねんな、?」
なんて、そう聞いてみれば。
『あ~、うんっ。笑 …やっぱり、、変…かな、、?』
「ううんっ、似合ってるよ。凄く綺麗やもん。」
『ふふっ、笑 ありがとう。 誠也くんも大人っぽくなった? 身長は相変わらず小さいけど。笑』
「小さいは余計やん!笑 これ以上伸びんかってん、しゃーなしや!笑」
『えぇ~?笑』
雰囲気は昔と全然違うのに、あの頃みたいに、俺にだけに見せてくれた無邪気な笑顔は健在で。
そんなあなたちゃんの姿に、やっぱり好きやなぁ~なんて、思ったりもして。
『……………わく…の、、って言ったら…?』
「え、?」
『私が変わったの、末澤くんのためって言ったら…っ!、、迷惑…?』
「っ!!」
なんて、俺の様子を伺うように、上目遣いでそう言うあなたちゃん。
あぁ、もう。何それ、反則やんっ。
そんなの、可愛すぎるし、……期待する。
「迷惑なわけ…、ないやんっ。俺やって、あなたちゃんに会いたかってんから、、。」
『…っ、!…うんっ、私も、、。』
俺の言葉一つ一つに、頬を赤くしながら、嬉しいような、恥ずかしような
そんな素直な反応を見せるあなたちゃんは
やっぱり愛おしくて、…誰にも渡したくなくて。
「…なぁ、あなたちゃん。…これから2人で抜け出さへん?」
『…うんっ!!』
なんて、勇気を出して、俺が差し出し手を
嬉しそうに、ぎゅっと握ったあなたちゃんが
俺の "初恋の人" から、 大切な "彼女" に変わるのは。
…もう少しだけ、先の話。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。