獣化した僕達に感覚の違いという試練が…という展開は、そこまでなかった。
1部弊害がある奴らもいるけど、初めての事態に直面したのを考えればまぁ上出来なのでは無いだろうか。懸念していた身体能力の衰えは今の所見られない、というか寧ろ上昇している事実。これからできるようになるであろう"最大限"の前体験と考えればそこまで悪いものじゃない。現在の状態に違和感はあるとはいえ、それがあまりにも上昇しすぎているという事実もない。数年先の前借りの様な雰囲気だ。
僕の視力は上がらず、聴力が上がっていることも何となく風刺的に捉えてしまいそう。
それも、距離ではなく時間で計っている僕、優しー。まぁ、距離だと予測しにくいし面倒だからってのはある訳なんだけど。
…僕?今、あなたと言ったか。
ここではトレーナーとして過ごす僕に。練習をしないのかと。
昔、冴やら色々な人間とサッカーをしてきた事を知ったのだろう。紙面上に載ったのはサッカー専門誌では絶対に無いと言い切れるから、千切だし美容誌…?そういえば、小さい所に1回だけ乗った事あったような。それか。
美容誌って…雪宮とかも気付きそうなものだけど。
練習量増加と、僕の黒歴史暴露。
天秤に掛けたら前者の方が重いに決まってる。一応青い監獄に従事する身として。そこは譲っちゃいけない。
先輩に呆れられるかも、とか。
このプロジェクトから外されるかも、とか。
そんなことを考え出したらキリがないほどにタブーで、最悪だ。
そもそも僕に効く黒歴史って言うのは片手で数えられる程しか無いのだが。四六時中追いかけ回される立場上隠したい事なんて大体はメディアに晒されてきた僕には、隠すべき過去というもの、墓場まで持っていかなくてはならないものなんてほぼない。強いて言うなら、冴と付き合っていたことだろうか。世間はただ仲が良くて距離が近いだけと誤解してくれている節があるから、そこは便利に使用してなんぼなんだろう。情報は消耗品である。
ただし、"プロサッカー選手がもれなく付いてくる"趣味程度だが。歯応えは現役世代に比べればほぼ無いであろう僕でも、流石にアイツらの"断ったらストーキングする"という1種狂った選択肢に行かせることなんて出来ないのだ。アイツらがどうして僕とやりたがるのかなんて理解できないし、理解しようともしていないんだがそこはそれ、これはこれと言うやつである。日本語ってこういう時便利だな。痒い所に手が届く、だっけ?
急に後ろから人の声が聞こえてくる時の恐怖は滅亡するべきだと思う。来るって分かっていれば何の反応もしないけど、来ないと思っていた時は情けない反応をしてしまうから大嫌い。カイザーの超越視界を四六時中やる事も出来なくは無いのだが、如何せん疲れやすくなってしまう。この僕が日中の世話で全て使い果たして泥の様に眠るなんて、冗談でもありえない。
青い監獄は絵心先輩を王に据えた絶対王政。さしずめ僕は参謀ってところかな。偉い人間の言う事は死守、必ず実行することが最低限な、この王国では逆らう=死を表すのだ。
それにしてもクソ喰らえってカイザーみたい
はーい、と言って潔と凛の所へ走っていく2人。
何やってんだお前ら、とでも言いたげな凛の視線にどこか冴を重ねて見てしまう。
2人とも笑わないくせにちゃんと優しい所がある。
顔も含め、何度遺伝子を感じた事か。
そう、自分に何度言い聞かせた事か。
自分から離した手が、また繋がれるなんて。
自分で落とした硝子が、また元に戻るなんて。
考えられるはずもないのにな?
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編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。