仁人side
yd 「……あー、まじで熱い。なんなのこの温度」
露天風呂の縁に頭を預けて、俺は大きくため息をついた。
結局、勇斗と柔太朗に押し切られて、食事の時間までのわずかな隙に人気の少ない露天風呂へとやってきた。
佐藤くんは「僕は……さっきの友達と食べてくるから、気にしないで!」と、またどこかへ逃げてしまった。
悪いことをしたと思うけど、今は自分の体の熱さをどうにかするのが先決だ。
Sn 「仁人、顔真っ赤だぞ。大丈夫か?」
すぐ隣で、勇斗が心配そうに覗き込んでくる。お湯に浸かって少しリラックスしているのか、いつもより声が穏やかだ。
yd 「……大丈夫。ちょっと……お湯が熱いだけ」
言い返そうとしたけど、頭がふわふわしてうまく言葉がまとまらない。湯気に当てられたのか、視界が少しゆがんで、二人の体がいつもより大きく見える。
yn 「無理しすぎ。……ほら、こっちおいで」
反対側にいた柔太朗が、俺の腰に手を回して自分の方へ引き寄せた。いつもなら「触んな」って跳ね除けるはずなのに、今はその腕の冷たさが心地よくて、つい自分から柔太朗の肩に頭を預けてしまった。
yd 「……あ、柔太郎…お前……冷たくて気持ちいい…」
yn 「……え、」
柔太朗が息を呑む声が聞こえた。いつも余裕たっぷりのあいつが珍しく動揺している。
Sn 「ちょ、柔太郎だけずりぃ!! おい仁人!俺は!?」
勇斗が焦ったように俺の反対側の腕を掴んで、自分の方へ引き戻そうとする。
yd 「……勇斗も……うるさいけど、あったかい」
俺はぼーっとした頭で、今度は勇斗の胸元に手を置いた。自分でも何をしてるのかよく分かってない。ただ、二人の体温が混ざり合って、不思議と安心する気がした。
yn 「……ねえ、今の、聞いた?」
Sn 「ああ。……これ、のぼせてんのか?」
二人の視線が俺の顔に突き刺さる。いつもはあんなに拒絶してたのに、自分からすり寄ってきた俺に、二人は明らかに戸惑い、そしてそれ以上に何故か目をギラギラにしている。
yn 「仁ちゃん……もう一回、言って?」
柔太朗が俺の耳元で、低く、震えるような声で囁く。
俺はのぼせた頭で、二人の肩に腕を回しながら、自分でも無意識にふにゃりと笑った。
yd 「……二人とも、大好きだよ……」
それが本心なのか、お湯のせいなのか。
静まり返った露天風呂で、2人の息を飲む音がやけに大きく聞こえた。












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。