今日は待ちに待ったバレンタインデー
普通の人ならば。
あなたも今まではそうだった。女遊びが激しかったせいで、色々修羅場もあったが、そう言うことに理解のある女子もいて、そう言う子達からはそれなりの量のチョコをもらっていた。
あなたも甘党なので、チョコはどれだけもらっても嫌ではなかった。
今年もそうだと思っていたあなただったのだが、、、
とにかく忙しすぎる
この忙しさは一体全体なんなのだろうか。
せっかくのバレンタイン。朝から数件ほどチョコを渡したいと言う連絡が来ていたのに、9人の男をスタジオに運ぶためだけのために断る羽目になった。
チョコ食べたかったのに、
そう思いながらも、仕事は仕事なので、仕方なくこなすことになったあなた。
甘党のメンバーたちは元気よく差し入れの置いてある机の方へ走っていく。
残りのメンバーはというと、そんなメンバーの姿を見ながらも黙々と弁当を食べていた。
朝ごはん食べずに来たから、やはり甘いものよりも主食優先なのだろう。
そして、ただ一人のメンバーは、これまた違うことをしていた。
チョンジェヒョン
バレンタインボーイだ。
朝の車の中から連絡がひっきりなし。
撮影の合間も電話がかかってきたり、かけたりと大忙しの模様だ。
じっと電話をかけている様子を眺めていたあなたは、電話が終わったらしいジェヒョンとパチリと目があった。
なぜかずっと見てくるジェヒョンに首を傾げれば、口元に弧を描いてこちらに向かってきた。
こいつが笑っている時は碌なことが起きない
目を逸らして無視するが、それでもジェヒョンは諦めないようであなたの隣に座った。
一応今知りました、と言う体で返事をしてみれば、拗ねたように頬を膨らませた。
こいつ本当に成人男性かよ。
自分の6個上とは思えないような可愛らしい雰囲気に、少し気持ち悪くなった。
本当にそれだけですか?と信じていないようなので、ポケットを全て見せてやれば、驚いたように目を見開いていた。
はぁ…と感心したような声を漏らしたジェヒョンを横目に、スマホのバイブレーションがなったので、通知を確認する。
メッセージアプリの通知で、その内容は、この撮影所の近くにいるのでチョコを渡せるなら渡したい、と言う内容のものだった。
ちなみに、この通知相手は大学一年から仲良くしている女子友達で、ソンミンの次くらいに信頼しているやつだ。
場所も、はっきりとは送っていないが大体近くにいるとのこと。こんなの行くしかないだろう。
未だ何か言い続けているジェヒョンを置いて立ち上がる。
適当に交わして部屋の外に出る。
撮影所の斜め向かいにあるカフェの前で待っているらしいから早足で向かうことにした。
待ってろ、俺のチョコ。
差し入れのテーブルにはメンバーだけでなく、メイクさんなども群がっていて、「あなたさんも食べますか?」と差し出してくる人も数人いた。
その人たちをやんわりと断って外に駆け出した。
カフェの前でスマホをいじっていたソヨンはいつも通りすらっとしたズボンを履いていて、何も変わっていないなと感じた。
走り寄れば、嬉しそうに口元に笑みを浮かべた。
うける、と大きな声で笑い出したソヨンに、あなたもつられて笑い出す。
ひとしきり笑った後に落ち着いた二人は、見つめあって抱きしめあった。
ガバッとあなたを離したソヨンは「何それ?」と訝しげに眉を顰めた。
詳しいことは言えないから適当に笑えば、ソヨンは大きくため息をついた。
わかってないでしょ、とあなたのおでこを軽くデコピンしたソヨンだったが、見つめる目は至って優しかった。
ありがとう、と照れたように返事をしたあなたに、ソヨンははいこれ、と袋を突き出した。
去年まではそうだよ、とはっきり返事をしていたのに対し、今年はどこか歯切れの悪い返事であなたは首を傾げる。
チョコではないのか?だとしたらなんなのだろうか。
はっ、とときめいたように胸を押さえたあなたに、ソヨンはまた茶番が始まった、と呆れた笑いをこぼす。
大学生の頃から、二人の間にはいつも軽い空気が流れていた。お互い、何をやっても受け入れるし、付き合ってあげる。これが二人の空気感だった。
ソヨンの言葉にきゃーと黄色い歓声のような物をあげるあなた。
何も変わっていないなとソヨンは少し嬉しく感じたその時、向かいのビルの入り口からこちらをじっと見つめる2人の人影が見えた。
明らかにこちらを見ている。あなたの仕事の人だろうか。けれど、その目線は完全に仕事の相手というものだけでは済まされないような思いまでこもっていそうだった。
つくづく面白い人間だな
ソヨンはそう思いながら、未だ茶番を続けているあなたに声をかけた。
ソヨナの皮膚の秘密はそれか…と感心したように頷きながら顔を近づけてきたあなたに、ソヨンはのぞいている二人に悪戯してやろうと、自分からも顔を近づけた。
今にもキスをしてしまいそうな、長至近距離で顔を合わせている二人
あなたとソヨンからしたら、このくらいの距離感はいつも通りの範囲内なので、あなたは全くもって不思議がらなかった。
顔を話したソヨンはバシッとあなたの背中を叩く。
少し痛がりながらも、ありがとう、といったあなたに、ソヨンは満足そうにすると「じゃあもう行くね。」と言った。
面白そうに笑って言ったソヨンは、そのままクールに去っていった。
あなたも早く戻らないとと思い、早足でビルに戻ったのだった。
楽屋に戻ってみれば、そこはドヨンとした空気でお通屋みたいになっていた。
どうかしたのだろうか。
いつも元気なヘチャンですら落ち込んだように頭をもたれさせていた。
肩をすくめたメイクヌナはそのまま楽屋を出ていってしまい、あなたとメンバーだけが残された。
トボトボと立ち上がって部屋を出て行こうとするメンバーに困惑していれば、ただ1人が大きな声で「ヒョン!」と叫んだ。
困惑しているあなたとは裏腹に、他のメンバーたちは呼んだぞ…とざわつき始めた。
言いにくそうにしながらも、「うざがられるかもしれないんだけど、」と続けたマーク。
うざがられるかもってわかってるなら聞かないで欲しいんだけど…と思ったあなただったが、なぜか空気が重い感じだったので言えなかった。
彼女…?
マークの言葉を待った持って理解できなかったあなたは、眉を顰めて首を傾げる。
俺は彼女がいたのか?
どういうこと?!とあなたの胸ぐらを掴んでグラグラと揺らしてくるマークに、あなたは「やめろって。」と腕を無理やり剥がす。
マークの言葉に、あなたはあぁ、と納得したように頷いた。
ソヨンと一緒にいるところを見られただけだ
あなたの言葉に、楽屋には一瞬安堵の空気が流れた。しかし、マークが「でも…」と言葉を続けたことによって、再度空気は固まったのだった。
困惑するしかないこの状況。
あなたとソヨンの様子を盗み見していたマークとヘチャンは慌ててメンバーに伝えにいった。
あの冷たいあなたが女の人と笑顔で会話をしていたこと、しかも顔を近づけてキスをしていたこと。
他のメンバーもその話を聞いて、大きい反応こそしなかったものの、内心そんなことあるか?と驚いていた。
実際にこうやって話を聞いてみれば、彼女ではないようだし、キスもしていないらしい。
全て、マークとヘチャンの勘違いだったようで、大半のメンバーがほっと安堵の息を漏らしていた。
ていうかなんでそんなこと気になるの?と訝しげに聞いてきたあなたに、全メンバーがうっとした声を上げる。
何せ、マーク、ヘチャン、テイル、ドヨン以外あなたにまともに対応するメンバーはいない。
そんなメンバーたちが急に自分の色恋沙汰を気にし始めるなんて、気にならないわけがなかった。
なんでよ…と嫌そうにしながらも、適当にはいはいと言いながら「車乗ってください。」というのだった。
この後、チョコレートを持っているのがバレて大騒ぎになるのはまた別の話。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。