設定𓂃 𓈒𓏸 𓋜
・ヒロ&なおきりはあなたに長年片思い中。
・からぴちの皆は大きな家でシェアハウス
してる。(あなたも)
・あなたはからぴちのマネージャー。
ღ .:*・゜♡゜・*:.ღ .:*・゜♡゜・*:.ღ
生徒のいなくなった、空っぽの教室。
その教室にいるのは、私ただ1人。
自分の部屋にしては広すぎるその教室で、
私はなにも考えずにただぼーっとしていた。
時計の針がカチ、カチ、カチと
聞こえてしまうほどに静かな教室は
この大きな学校には不釣り合いだ。
チラリと校門を窓から見やると、
まばらまばらに人が帰っていく姿が見え
それと同時に朱色に染まってきた空が見えた。
何かを待つわけでもなく、
何かをするわけでもなく、
何か考え事をするわけでもなく、
過ぎ去っていく時間を眺めるだけ。
だけど、それが好きな自分もいる。
からぴちの撮影もあるだろうし。
私はマネージャーなんだから
ちゃんと見てあげなきゃ。
きっと今頃、ゆあんくんやるなちゃんが
尻尾振って私のことを待っているんだろう。
ふっ…笑 そう考えたら早く帰らなきゃかも。
帰ろうと椅子から立ちあがろうとした時、
急に後ろからヒロくんの優しいイケボが
教室に響いて少し驚く。
後ろを振り向けば、ヒロくんがニコ、と
誰をも魅了するほどに麗しい笑みを向けていて。
でも私は、そんなヒロくんとは対象的に
苦笑いをこぼしてしまった。
私は高校2年生。
ヒロくんは高校3年生。
もちろん、教室のある階は違う。
それに、違う学年のフロアに行くことは
禁止、というのは暗黙の了解だ。
まぁ、私は行ってもいいと思うんだけどね。
トラブルが起きない様にするため、らしい。
私が冗談めかしでそういうと、
真剣な顔をしてそう言い切るヒロくん。
カラフルピーチのメンバーの王子様。
まぁ、羊って言われることもあるけど、笑
それでもやっぱり王子様は違うなぁ。
私なんかのこと心配してくれるなんて。
とっても優しい人だ。
ニコリと微笑んだヒロくんを見て
私が椅子から立ち上がると、
それを待っていたとでも言う様に
スルリと手を繋がれる。
あまりにも自然で、
本物の王子様がやりそうなその行動に
私は一瞬思考が止まる。
ヒロくんには、私がどうやって見えてるんだろう。
私、これでもちゃんと高校生だし。
もしかして、私が迷子になりそうとでも
思ってるのかなぁ……?
本当、簡単にこう言うこと言っちゃうんだよなぁ。
ルックスも最高級で、イケボ。
それに優しくて甘い言葉をかけてくるときた。
モテない理由がないだろう。
現にヒロくんのファンクラブもあるらしいしね。
そろそろ完全に下校しないといけない時間なので
幸い、学校にいる人は少ない。
目撃されるとしたら、精々先生達くらいだろう。
だけど外に出たらどこに目があるかわからない。
だからずっと手を繋ぐって言うのは……
ちょっと私の命が危ない。
もしファンクラブの子にでも見つかったら
確実に”抹殺”される。
貴方に惚れてるファンクラブの子に
殺されるから、なんてどう言えばいいの⁉︎
言えないよ、そんなこと‼︎
じーっと繋がれた手を見つめるヒロくん。
……う。そんなに見つめられるとなんか
手汗かいてきそう……。
だ、大丈夫かな?
王子の手、汚してないかな⁈泣
ヒロくんはそう言っていつもとは違う、
少し小悪魔っぽい笑みを向けた。
その姿すら様になっているのだけど、
ちょっと……今のは、心臓に悪い‼︎
きょとん、とした顔をして私から手を離した
ヒロくん。だけどそのきょとんとした瞳の奥が
この状況を心底愉んでいるということを、
私は知っている。
ずっとからぴちのみんなを見てきたんだから。
それくらい、わかって当然というものだ。
ヒロくんが私の横にくっついちゃうんじゃないか
ってくらいぴとっとくっついて下駄箱まで向かう。
幸い、誰にも見られずに済んだけど
この調子だと手は繋いでいなくともあらぬ
誤解を招いてしまいそうですんごくコワイ。
どうか私にあらぬ被害が飛びません様に……!
そう神様に祈りながら私はヒロくんと
私達が住む家へと向かい始めた。
会話こそは全然ないけれど、私達を取り巻く
空気はあたたかく、心地よい。
何も言わず、自然な動作で車道側に寄った
ヒロくんは本当に紳士的なんだと思う。
きっと、ヒロくんに彼女ができたら
その彼女さんは幸せだ。
やけに真剣な顔をして私を見るヒロくんを見て
私は背筋をピン、と伸ばす。
そして、ヒロくんが口を開いた時だった。
後ろからガバーっと抱きつかれ、
私は、素っ頓狂な声を上げてバランスを崩す。
だけどそれも、後ろにいる”なお兄”に
受け止められて、転ばずにすんだ。
というか、転んだらなお兄の責任だし。
ヒロさんの問いかけに無駄にキランッと
したドヤ顔で反応するなお兄。
というかなお兄なんでここに……?
そうですよね〜???
なお兄は私達よりも年上の大学2年生。
大学は私達が通ってる学校とは真逆にある。
だから帰る時は道が被るはずがないのに……
なぜ、なお兄はここにいるんだ?
そう言ってきゅるん、という効果音が
つきそうなほどに可愛らしい笑みを向けた
なお兄を見て、私は『んグッ』と詰まる。
こんな可愛らしい顔をされちゃったら
もう何も聞けない。
というか、なお兄も私のこと心配してたんだ…。
私ってそんな危なっかしいのかな……。
地味に傷つくんですケド。
じ〜っと見つめ合う2人。
その間にパチッと火花が散ったのは、
きっと私の見間違い。
なお兄の提案に私がコクッと頷いただけで
なお兄は嬉しそうに目を細め、まるで犬を褒める
ときの様にわしゃわしゃと私の頭を撫でた。
その手つきは強引ではあれど、嫌だとは思わない。
その撫で方が、少しだけ優しく感じるのは
私だけなのかな……?
なおきりさんの手が止まった瞬間くらいに、
スルッと手を繋がれる。
そのままキュッ、と離れない様に私の手と
ヒロくんの手を絡んで繋がれる。
その行動に一瞬目をぱちくりしてしまうが、
嫌な気分はしない。なお兄もヒロくんも、
とっても優しい人なのだから。
なお兄はそう言うとそそくさとヒロくんと
繋がれていないもう片方の手を絡めとってくる。
両隣にエグいくらいの顔面偏差値を誇る
ヒロくんとなお兄。
しかも、手まで繋がれている。
人通りは少ない方だが、私達を目にとらえた
通行人の人達は驚いた様に目を見開いて
私達を二度見する。
お願いです、神様。
せめてヒロくんやなお兄のファンクラブの子達
に抹殺されて死亡するというしょうもない
死に方は回避させてください……。泣
ღ .:*・゜♡゜・*:.ღ .:*・゜♡゜・*:.ღ
動画撮影が終わり、パソコン越しでみんなが
お疲れ様、と言い合う。
その様子をマネージャーとしてみていた私も
『お疲れ様です』と声をかける。
まだ英語の課題が終わってないんだよな〜。
……でも、のあちゃんだって大学生だし、
私よりも大変か……。
……うん。
じゃっぴもゆあんくんもそう言ってるし
のあちゃんも大変だろうから手伝お〜。
夕飯を作り終わって、
みんなで食べて今は夜の11時半。
本当は、そろそろ寝てしまいたいんだけど
英語の課題が思った以上に終わらない。
私の部屋は、静寂に包まれており
私がシャーペンを走らせる音しか聞こえない。
にしても、難しいなぁ……。
椅子にグッ、と体重をかけて上を見上げる。
見慣れた天井に、課題の答えなんて
書いてあるわけなくて。
私はしばし頭を抱える。
私はそう考えると、課題を閉じて
ベッドにダイブする。
すると、ピコン♪ とスマホが鳴った。
あ。たっつんからだ。
明日……。まぁ、大丈夫か。
私はそう打つと、スマホの電源を切り
部屋の電気を消した。
続く𓂃◌𓈒𓐍𓈒
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!