ようこそCLUB Passion へ。
ここは選ばれた貴方しか入ることが出来ない場所。
均等化されてしまった現代社会に馴染むことが出来ぬ方々の為の世界。
きらびやかなシャンデリアに、交わされるグラス、あっという間に始まる命の売買。
難しいことは考えずに楽しんで。
麻雀?カジノ?宝くじ?何でも構いません。
ギャンブルなんてそんな物でしょう。
均等化された世界では、そんなことも出来ませんからね。
え?私ですか?
お気になさらず。私はbtler。いわば皆様の使用人。報酬により、何でもこなします。
我々に正確な名前などありません。お呼びの際はどうか番号で御呼びください。
さぁ、今夜もこの非合法の店を楽しんで。
どうかこのことはご内密に。
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「・・・なんだここ。」
姉さんを求めてネオン街をさ迷い歩いていると、何やら一つの店にたどり着いていた。
同じような店は何件もあるはずなのに、この店のネオンは妙に惹かれるものがあった。
手元の黒い招待状が鈍く光った気がした。
「いらっしゃいませ。guest。」
「・・・え?」
いつのまにやら店の大きな扉の前に、俺よりも背が低い男の子が立っていた。
背は低いけど、背筋はしゃんと伸びていて、まばゆい金髪に蒼い目をもち、燕尾服を纏った男の子は、俺の持っている招待状を指指す。
「貴方のそれは、この店に来ることができる証。ようこそいらっしゃいました。さあ、参りましょうか。」
「・・・あんた、名前は?」
俺はそれしか口に出来なかった。
「私ですか?私はguestと違って番号で呼ばれています。お呼びの際はNo.300と御呼びくださいね。」
扉が開く、分からない。
ここから先は俺の知らない世界。
いったい何があるんだろうか。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!