第70話

影響
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2024/10/20 08:00 更新
新は以外としつこかった。

奏の持ち物から出てきた“玩具”に対する疑問に、誰も大河さえ何も答えてくれないからだ。
横原は大河からの叱咤から逃れるべく、奏は恥ずかしさから逃れるべく、さっさと自分の部屋へ帰った。
大河も帰りたい気分だったが、それを許す新ではなく、しっかりと腕を絡めていた。

「なんで教えてくれないの?」
「んー、新には必要ないモノだから、かな」
「だってみなちーが持ってたんだよ?みなちーには必要で俺には不要なモノって事?」
「そういう訳じゃないけど……」
大河を困らせてる事に気付いているが、知りたい方が勝る新だった。

「新。お願いだから、忘れて?ね?」
懇願する大河に今これ以上聞いても埒が開かないと、新は推し黙った。
諦めてくれたか、とホッとした大河だった。



「ごめんね大河くん。つらかったよね。でも素直に教えくれないから、こうなるんだよ?」
「……………..」
ベッドに突っ伏してる大河の頭を優しく撫でる。
新に寸止めを何度もされて、耐えられず口を割るハメになったのだ。
「耐える大河くん可愛かったよ」
と囁く新は意地悪で妖艶な悪魔だった。

二人で過ごせる最後の貴重な時間を“玩具”に振り回された夜となった。
朝、いつも通り新に起こされた。

「今朝はカフェでモーニングしてお買い物でしょ。早く起きて!」
「う…ん」
「母さんからリフォーム案が届いてるの。一緒に見たいから早く目を覚ましてきて!」
そう言ってバスルームに大河を連れて行く新。

髪の毛を拭きながらバスローブ姿でバスルームから出てきた大河に、つかさず抱き付いた新。

「大河くん、怒ってない?」
「ん?何を?」
「昨日、意地悪した事」
しばらく考えた後、記憶が蘇ってきた。

「あー、あれね….あんまし、詳しくなって欲しくない事だから言いたくなくて。それで新が不満に思ったんだから仕方ない」
苦笑いをする大河を見て、怒っていない事にホッとした新だった。

「昨日、あのあと、何も言わず寝たから怒ったのかと思って」
大河は新のおでこに軽くキスをした。

「怒ってないよ。ただ昨日は疲れて寝落ちしたみたい」
続いて頬にも音を立ててキスをすると、くすぐったそうに肩をすくめ笑った。

「大河くん、あの玩具、なんで知ってたの?」
「なんで、って…..現役の男子高校生だから?」
知らないの新と奏くらいだよ、と言いたい大河だった。
「もう、この話おしまいっ」と大河はドライヤーをしに逃げていった。
人気のカフェで、たっぷりのフルーツが乗ったたアサイーボウルをたいらげて、携帯専門店に向かった。
スマートウォッチの取り扱い説明を受けている大河の隣で大人しく見ていた新。
心電図アプリをはじめ、高性能なバイタルアプリを搭載したものである。
すぐ使用できるようにしてもらうと、新の左手首に巻き付けた。

「え?大河くんのじゃないの?」
「新のだよ。じゃ、次はカバーとバンド探しに行こうか」
そう言って笑顔を見せると付属品の入った紙袋を新に渡し専門店をあとにした。

優しい大河の笑顔にドキっとする。
見慣れてるはずなのに、いつまでも初めて向けられた時のような、ときめきまで感じる新は大河をどこまで好きになるんだろう、と自問していた。

「束縛するようで悪いんだけどね、体調変化があると、すぐ分かるように連携させて貰った。バイタルアプリ以外の機能は新の好きに使ったらいいから。特に夜につけてて欲しいんだけど、いい?」
新を見るとまだスマートウォッチを眺めていた。
束縛に感じて嫌なのだろうか、と心配になり立ち止まると新の顔を覗きこんだ。

「……..もしかして迷惑?」
パッと顔を上げて花が咲くような笑顔を見せた。

「ううん、嬉しいよ、体調の心配までしてくれてありがとう!夜だけじゃなくて、ずっと付けてるよ。指輪と一緒に」お互いに笑い合って次の店に向かった。

まだ外は真夏のように暑いがショップにある服はすでに秋だ。
「ほかに欲しいものない?」
「ふふっ、大河くん過保護」
「だって…..しばらく会えなくなるし新が喜ぶ事したいだけだから」
しんみりした大河に新は耳元で囁くと、大河の顔が一気に赤く染まった。

「ランチして、限定スイーツ買ったら部屋に帰ろっか、リフォーム案も見て欲しいし」

そう言って大河の腕に絡みついた新だった。
新の母親が送ってきたリフォーム案は、ちょっと触るどころでは無い案で、まるで二世帯住宅だった。
実際、新達と奏達で暮らすのだからそうなるのは分かるが、今のままでも充分だと思う大河だった。
玄関は一つで、開けるとダイニングルームとキッキンルームがあり一枚窓の広々とした空間が広がりその左右にプライベートルームと寝室や浴室がある、そんな図面だった。

「共有スペースはダイニングキッチンと玄関なんだ」
「春からは俺ら二人だろ?広すぎないか?」
大河と横原はリフォームは今でなくてもいいのでは?と言ったが、新は「好きにさせとけば機嫌いいから」と止める気はないので従うしかない。

佐藤家の人間のやる事は凡人には理解できない、と二人の意見は一致した。

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