第79話

大切なひとたち-2(最終話)
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2024/11/04 07:11 更新
なんとか薬剤師の資格を修得した新と奏。

新などギリギリで乗り切っており、この2年間学んだ事が、国家試験修得ですっぽり抜けた感がある。
おそらく薬学の知識が発揮されることは無さそうだと、奏は言う。

「まあ、どうであれ、2年が無駄にならずでよかったんじゃね?」と横原。
「あらちーは肩書きの為の修得だもんね」
「………元も子もない事言わないでよ。しかも褒めてくれてないし」

膨れっ面でテーブルに肘をつく。

3月も後半に差し掛かり、そんな新も代表取締役社長の肩書きに、役にたつ事があるのか分からないが、
“薬剤師、薬剤研究員”が追加される。

この間までは学生との二足草鞋だったが、社長業も熟す2年目のやり手若社長として頭角を著してきていた。
与えられた製薬会社の仕事を熟す、そのあたりはビジネス一家育ちゆえなのだろう。


本社秘書課で得たスキルを新会社のために発揮する横原も頼もしくある。
正式に辞令を受けて、今は新と奏と共に仕事を始めていた。
英語だけでなく、韓国語、中国語を修得して通訳としても活躍してくれている。
ちなみに大学時代にロシア人と友人になり、簡単なロシア語もなら理解出来るようだ。

「社交的だから、そこら中に友達出来るだろうけど、敵も作ってそう」
というのは新の意見だが、横原が苦笑いする辺り当たってるのかも知れない。



奏も新のそばで相変わらず振り回されている。
鋭い感覚を持ちながらも、素がポンコツな新のフォローに翻弄されている。
奏のおかげで新のポンコツ部分は表面化しておらず、クールな、やり手若社長として信頼されているのは知る人ぞ知る、奏のおかげなのである。

そんな奏にも立派な肩書きがある。
代表取締役副社長に”薬剤師、薬剤研究員”がつき、社長付秘書もプラスされている。
ちなみに、名刺に印刷はされないが社長専用家政婦でもある。


椿も佐藤直属の防犯会社に入社しセキュリティポリスとしての訓練部に所属している。
警視庁のそれは要人がメインだが、民間のSPは要請があれば出動できるため人気はうなぎのぼりだ。
新達のマンションに遊びに来ては、株を教えてもらい、そっちの勉強を始めたのは、まだ最近の事だ。
「この株は買い時。余裕あるなら買ってもいい。それからこの株は多少下がっても諦めずに持ってて。売買はまた相談してくれたらいいよ。相談料は利益の1割ね」
「しっかり取るんだ」
ふふ、と愛嬌のある笑顔を見せた新だった。



影山も海上自衛官として日本の海を巡回し海を守っている。
久々の数日休みに新達が住むマンションに遊びに来ていた時の事。
久々に会った影山は、厳しい訓練を受けたのが垣間見える体格になっており、影山の上半身の筋肉を触らせてもらった新と奏。

「すごいね!筋肉ってこんなに付くんだ」
「俺よりもっと筋肉質な奴いてるぞ」
「鍛え方によっては、鍛えられない場所はないって聞くけどホント?」
興味津々で聞く新に自慢げに影山は答えた。

「俺は全身ほぼ筋肉だぞ?すげーだろ?」
新の目が輝き無邪気に笑うと“アソコ”も触らせて、と、とんでもない事を言って迫ってきた。

「ね、どうやって鍛えるの?いいでしょ、触っても」
驚いたのは新以外の人間だ。

影山は「おまえっ痴漢かよ!」と新から逃げようとするが、動きは新の方が早かった。
ベルトを捕まれ、バックルに手を付けようとした時、新の両脇をうしろから横原が固めると、奏は新の手の届かない距離まで影山を下がらせた。
見事な連携である。

「何考えてんだ!」怒鳴ったのは横原である。
「立派なセクハラ!社員にやってみろ、訴えられるぞ!」
「何言ってんの、影山くんだからお願いしたんだよ?知らない人に言うわけないでしょ」
と悪気は全くない。
新の頭にゲンコツを喰らわせた大河は「あとで覚えとくんだね」と、怒気を含んだ声で言われ、睨まれた。
そして皆から大目玉をくらったのだった。


基は次期グループ総裁の新の兄に付いて世界中を飛び回っており、新の母から「賃貸は勿体無い」と屋敷に部屋を貰ってそこから出勤している。
が、ほとんど居てないのが現状で、新の母でさえ顔を合わすのは月に1〜2回であると言う。
長男とは会うのに基に合わないのを不審がり「じつはブラック企業だったの?」と本気で心配した程だ。
聞くと、新達のマンションに居てる事がわかり胸を撫で下ろす母親だった。


新の体調も、心の方も波があるがおおかた落ち着いていた。
心臓の方も年一回くらいの発作が起こるくらいだが、入院治療が必要なほどではないので自宅療養になっており大河を安心させるのだった。


そんな、こんなで4人が住むマンションの部屋は溜まり場となっている。
最初、横原が大河の為に買っていたソファベッドの使い勝手が思ったよりもよく、共有スペースのソファ全てがソファベッドに変わった。みんなが遊びに来たら、そのまま寝てもらえるのも利点だからだ。


皆、自分のために頑張ってきた。
これからもその努力は続く。
自分のために、すべては大切な人の笑顔を守るために。

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