第78話

大切なひとたち-1
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2024/10/29 08:00 更新
大河は国家試験をなんなく突破した。

大河の家族を含めて佐藤家は一晩中大騒ぎをした。
飲めや歌えやで冷静沈着なイメージがまる崩れした、大河の医師一家。
「医者は酒入ると人格変わるんだ」
以前、ブランデー入りの紅茶を大河に飲ませた事のある新は納得したのだった。

女性陣はアルコール片手にカラオケでイントロクイズなるもので盛り上がり、大河の祖父と父親同志もいろんなアルコールを飲み交わした結果、今、布団の上で大の字である。

「一時は殻に閉じこもってしまって、どうしようかと思ってたのに、一人前にしてくれて……新くん!ありがとう!!」
と、イントロクイズから脱落した、新と奏の主治医である大河の姉は、新に抱きついた。

「ほんとうね。ありがとう!」新の背中からは大河の母親が抱きつきサンドイッチ状態になり、身動きがとれなくなった。

「あっ、ずるいー!私のあらたよー!」
「新くんも私の子!」
と残りの酔っ払いも加わり、新は倒れてしまい完全に埋もれてしまう。

基は埋もれた新を引きずり出すが、上半身しか出てこず亀のようになった新を見て笑い転げた。
奏はそんな新の顔をつつく。

「早く助けてよっ!」と叫ぶが、基はスマホで録画を始める始末。
そんな新に気づかず大河は、横原とゲームの話で盛り上がっていたのだった。

面白い動画が撮れたと満足した基は、奏と二人で埋もれた新を引っ張り出した。
早く助けてくれなかった事に拗ねた新に

「この動画送ったげるから怒らないの」
「いらないよっそれよりその動画消して!」
「怒らない、怒らない…ふっふ、はは」

思い出したのか、また笑い出す基。
笑上戸はいいけど……とため息が出た新だった。


残念ながら影山は海上のため、椿も研修中で抜けれないため宴会には不在だが、二人とも自分のことのように喜んでくれたと聞いた新。

新はアルコールを口にしていないのてシラフだった。
酔っぱらいの相手も嫌になり、宴会をしている部屋を出てお風呂場に向かった。
実家の広いお風呂に入ったあと自分の部屋へ戻り、酔っ払いからの安眠妨害を防ぐため部屋に鍵をかけた。
ベッドに横になるとすぐに眠くなり、そのまま目を閉じた。

眩しさで目が覚めた。
明るかったが朝ではなかった。
部屋の電気を消し忘れたのかと思ったが、誰かが付けたようだ。
人の気配がして視線を動かすと、大河が隣で寝転がって、こちらを見ていた。

「え?」
「俺を締め出すなんてひどいね」
「………どうしたの?」
目を擦りながら身体を起こそうとする新をベッドに押し付け、大河は馬乗りになる。

「もってぃは自分の部屋、横原は奏の部屋、俺だけ行くとこなかったんだけど?ひどくない?」
「…….ごめんなさい」
「ゆるさない。新のお母さんが鍵あけてくれなかったら廊下で寝るとこだったんだよ」
「………..」

酔っ払いに起こされるのが嫌で閉めた鍵。
その鍵を開けたのは酔っ払いだが、起こしたのは自分の恋人。その恋人も酔っている。
「結局、酔っ払いに起こされるのか」と苦笑いが出た。
馬乗りになった大河は、まなめかしく妖しいほどの笑顔を浮かべて新を見る。

「酔ってるね大河くん」
「酔った俺はキライ?」
「どんな大河くんでも大好きだよ」

口角をあげて笑うと新の唇に噛み付くようにキスをした。きつく舌を吸い上げられ逃げ場を失い、大河に応えようにも隙間もない。
キスをしながらシャツをめくりあげ、肌を指で撫でる。
唇を離すと、新から甘い吐息とともに声がもれた。

「んっ…はぁ….っあ」

大河は薄く笑う。
首筋に唇を這わせながら、新の身体の中心を手で触れると身体が軽く反れた。
身体がその先を期待し始めると大河の動きがピタっと止まる。

「…….た、たいがくん?」

新が声をかけると、大河の身体がのしかかってきた。

「え?」
顔を覗くと目を閉じて、軽く寝息をたて始めていた。
「………うそ…..」
頬を軽く叩いてみるが身動き一つしない。

「んもぉ〜!酔っ払い大河くん大っ嫌いっ」

あるあるパターンだが、実際にされると結構腹が立つ。真っ赤な顔をして、そう叫ぶとタオルケットを持ち、自分の部屋からでて行った。 
朝、目が覚めると新がベッドに居なかった。
新の部屋に来た記憶はあるのだが、一緒に寝た形跡もなく、部屋の主が居ないのは自分が何かをしでかしたと判断し、身支度を済ませて新を探した。

居間に、新は兄と居た。
出勤する為、皆より早く朝食を摂る兄と笑談していた。

「おはようございます」と声をかけると、新の兄はにこやかに挨拶を返してくれたが、新は顔を背けた。

「あ、大河くん。少し話あるから新の横に座ってくれる?俺だけ食べながらで悪いけど」
言われた通り、新の隣に座る。

「4月から大学院で研究をするんだよね?」

もちろん、新と奏の専属で体調管理をするつもりだが、実際には研修医として病院勤めもしながら、研究もしたいという希望がある。

「卒業後は新の製薬会社で研究を続けるといいよ。新の会社だから融通はきく」

兄は初めからそのつもりで製薬会社を立ち上げたのだろう、と新は思った。

「色々とありがとうございます」そう言って頭を下げた。

「で?何?喧嘩でもした?昨日というか今日、新が俺んとこ来るから驚いたんだけど」

大河は苦笑いをした。

「じつは、酔って記憶なくて……何か、仕出かして新を怒らせたんだな、と思って」
「そうか、なら、しっかり話さないとね」

そう言って食べ終わったトレーを持って「行ってきます」と、居間から出て行った。

「お兄さんの部屋に居たんだね。新の部屋なのに追い出すような事してごめん」
そう言って謝る大河に新は冷たい視線を向ける。

「酔っ払った大河くんは嫌いになったから」とプイっと顔を背ける。

「ごめんね、もう呑まないよお酒は」
何度も新に頭を下げる姿を、自分や新の身内に見られてるなど、思いもしない大河だった。

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