9月19日。土曜日。
今日から、お彼岸。
お彼岸といっても、僕がすることはお墓参りくらいだ。
それもずっと前に生きていたご先祖様と、顔も覚えていない母の。
母が亡くなっていることを他人に言うと「可哀想」とか「辛かったね」とか言われるけれど僕が幼い頃に両親が離婚、その後亡くなったらしい。
あまり家に帰ってこないけれど一応父もいるし、何より僕には『大切な人』がいる。
寂しくもなんともない。
それでも、『大切な人』に出会えたことは事実だから僕を産んでくれたことには感謝しかない。
他に母が何をしてくれたかなんて、覚えているわけがない。
そんなことを考えながら、必要なものをカバンに詰めていく。
数珠と、お線香と、花と、お供物と…
こんな感じでいいかな。
外に出ると、冷たい風が吹いてきた。
昨日まではあんなに暑かったのに。
僕は暑いのが苦手だからちょうどいいかな…
お墓は家と近い。徒歩3分もかからないくらいだ。
いろんな考え事をしていたら、到着していた。
母達のお墓の前に行き、お墓のまわりの枯葉をとり、水と雑巾で汚れを落とす。
打ち水をし、お花を入れ、お供物を置く。
カバンからライターを取り出し、火をつけようとするが、なかなかつかない。
ライターは今日もご機嫌斜めなだ。
やっとの思いでライターに火がつき、線香に火をつけ振って消す。
線香の香りがする。
この匂いは僕は結構好きだ。
数珠を持って、手を合わせる。
この先もうまく行くように、見守っていて欲しい。
顔を上げ、お供物をカバンに入れる。
そのまま帰路に着く。
今日は何をしようか。
土曜日だし、予定も特にない。
久しぶりに、あの場所は行こうか。
家に戻り、荷物を最小限の貴重品に入れ替える。
見慣れた道。
いつもの道。
思い出の道。
『君』と通った道。
たくさんの思い出が詰まった道を歩いて、あの場所に着く。
彼岸花が咲いている。
一面の赤。
その奥には、花なんてとっくに散った桜の木。
そして…
桜の木の下には、『君』がいた。
僕に気づいてくれたのか、『君』は僕の方を見て一瞬驚いたような顔をしてすぐに前みたいにふっと微笑んでくれた。
その懐かしい声を聞いて思わず僕は流凛に駆け寄って、抱きついてしまった。
流凛はそっと僕のことを抱き返してくれる。
その後、いろんな思い出話をしていたらいつの間にか空が暗くなり始めていた
流凛にそう声をかける。
一瞬悲しそうな顔をして、またいつものように微笑んだ。
ベンチから立ち上がり、それぞれ帰路に着く。
何回も繰り返したこのやりとり。
どこか、安心する。
そう言って、お互い自分の家の方に向かって歩き出す。
※この小説はお彼岸をテーマにしていますが、作者の私がお彼岸について詳しいというわけではないので調べながら書いていますが間違い等については温かい目で見守っていただけると幸いです
それと、交換宣伝です♪
字数も多いしめっちゃ読みやすいのでぜひ読んでください!
交換宣伝してくださって本当に感謝です😭











編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。