第19話

19
1,328
2022/12/04 13:57



~るぅとside~



中学校の頃、僕には大好きな彼女がいた。




彼女はとっても可愛くて、優しくて、元気で、僕にとって凄く大切な存在だった。



でも中2の冬、雪が降りそうな寒い夜に彼女から1本の電話があった。








るぅと
もしもし、どうしたの?
彼女
…あのね、私…るぅとくんと一緒にいられて幸せ。
るぅとくんには幸せになって欲しい……
急にそんなことを言う彼女。


るぅと
えっ、なに…?どうしたの?
彼女
ううん……なんでもないの…。
ただ、声が聞きたかっただけ……。
るぅと
そう…なんだ?
ならいいけど……
彼女
うん…ありがとう。
ばいばい……
るぅと
え、ちょっ……!!
それからプツッと電話が切れて、電話をかけ直してもLINEを送っても既読すらつかなかった。






その次の日、





彼女が帰らぬ人となったのを知った。







あの日の夜、彼女は部屋で冷たくなって倒れていて、彼女の胸元は赤く染っていて、手には血のついた包丁が握られていた。







自殺だった。



あの時の電話は、彼女からの最後のSOSだったのか…。


彼女は僕に別れを言いに電話をしたんじゃない。


きっと、自殺する最後まで苦しんでて、悩んでて、僕に助けを求めてたんだ。


救えたはずの命を僕が……






そう考えたら悔しさと悲しさで涙が止まらなかった。









机には、遺書と僕と撮ったツーショット写真が置かれていて、彼女の両親から
「るぅとくんに向けた手紙だよ。」
「この写真も君が持っていてくれ。」
って渡された。
手紙には、「幸せになって欲しい」「ちゃんと私以外の誰かを愛して欲しい。それが私の幸せだから。」そんなことが書かれていた。


彼女は僕が他の誰かと結ばれることを「自分の幸せだ」って許してくれた。


でも、僕は彼女を失ってから、誰とも付き合えなかった……


いや、付き合わなかった…。











ずっと、引きずっていたんだ。彼女のことを。





















~ころんside~


知らなかった。



そんな過去の出来事があって、るぅとくんが辛い想いを抱えてたなんて。



告白を受けない理由も……。



話し終えたるぅとくんの声は震えていて、今にも消えそうなくらいか弱かった。
るぅと
1人になるのが、失うのが怖くて。
辛くて。苦しくて。
ころん
…だから、今まで女の子からの告白も受けなかったんだ…。
るぅと
半分正解です
ころん
半分?
るぅと
もう半分はころちゃんですよ
ころん
ぼ、ぼく…?
なんで僕がもう半分の理由なんだ……?
るぅと
そう……
ころちゃんのことを初めて見た時から、
ずっと好きだったんですよ。
だから、僕は好きな人ころちゃんがいたから誰からの告白も受けなかった。
るぅと
付き合わなかったとしても、僕の隣は空けておきたかったんです。
大好きだった彼女と、ころちゃんのために。
もし、仮にころちゃんに告白されても、僕じゃ幸せにできないから断ろうって決めてたんです……
ころん
るぅとくん……
るぅと
でも、変ですよね……ッ
僕……っ…断ったくせに…ころちゃんのことっ…離したくなかったんです……
るぅとくんは涙を零しながらも笑みを浮かべる。


いつも僕に向けてくれる優しくて暖かい笑顔。



僕も自然と涙が流れて目の前が霞む
るぅと
ころちゃんっ……
















るぅと
付き合ってくださいっ……!!
















ころん
……ッ!//
もちろんだよっ…!!


手を広げたるぅとくんに思いっきり飛び込む。


するとぎゅっと抱き締めてくれるるぅとくんの暖かさに更に涙がこぼれる。







ころん
僕っ……るぅとくんのこと……ッ
ひとりにしないからっ……!!
るぅと
……!
僕もですよっ…
























~さとみside~
「付き合ってくださいっ……!!」




「…ッ!//もちろんだよっ…!!」






ふたりの愛の誓いの声が聞こえた。
さとみ
……あーぁ…。
ほんとに失恋しちまった……。
さとみ
……あっ。
俺の頬には涙が伝っていて、手で拭っても溢れてくる。





こうなることは知ってた……




るぅとは「俺がころんを奪う」なんていったら絶対阻止しに来るって思ったから、あえて時間を教えた。
阻止しに来るように仕向けたのだ。




でも、ころんへの想いは嘘じゃない。











俺が結ばれるENDなんて最初からなかった。




知ってたはずなのに…。







どうして、辛いんだろ……。















さとみ
大好きだったよ……ころん…。









ころん達には聞こえないであろう小声でそう呟く













空き教室前の廊下。









背を向けて歩き出した。






















プリ小説オーディオドラマ