転校してから数日が経った。
最初は緊張していた学校生活も、少しずつ慣れてきていた。
……とは言っても。
まだクラスのみんなと沢山話せるわけじゃない。
相変わらず、自分から話しかけるのは苦手だった。
) キーンコーンカーンコーン
昼休みのチャイムが鳴る。
僕は鞄から弁当を取り出した。
今日はどこで食べよう。
そう考えながら立ち上がった、その時だった。
聞き覚えのある声が響く。
振り返ると、帆さんが大きく手を振っていた。
突然の誘いに戸惑う。
すると隣から緒莉さんが顔を上げた。
前の席の愛杏さんも振り返る。
さらに奥から瑠都さんの声。
気付けば断るタイミングを失っていた。
そういうと…
と帆さんが嬉しそうに笑った。
みんなと食べる昼食は思ったより賑やかだった。
教室に笑い声が広がる。
思わず口元が緩んだ。
帆さんが僕のことを見た
愛杏さんまで乗っかる
少し恥ずかしくなる。
すると瑠都さんが笑いながら言った。
その言葉に少し驚いた。
でも不思議と嫌な気持ちはしなかった。
放課後。
瑠都さんが振り返る
緒莉さんが頷く
気付けば五人で校内を歩いていた。
図書室。
体育館。
生徒会室。
屋上の見える廊下。
みんなが楽しそうに話している。
その様子を見ながら、ふと思った。
楽しい。
本当に。
久しぶりにそう思った。
だけど。
心のどこかで別の声がする。
” 期待しちゃダメだ。”
” また同じことになるかもしれない。”
僕はそっと視線を落とした。
翌朝。
教室に着いた僕は席に座る。
そして筆箱を開いた。
その時だった。
中を見つめる。
いつも入れているはずの青いペンがない。
もう一度探す。
机の中。
鞄の中。
ポケット。
どこにもない。
隣から緒莉さんの声が聞こえた。
だけど僕は答えられなかった。
頭の中に浮かんだのは、
前の学校での記憶。
まさか。
そんなはずない。
でも——。
僕の手は小さく震えていた。












編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。