ナイフを持った男が、
すかさず威嚇する。
年配の女の人が、
涙と悲鳴を飲み込んで、
コクコクとうなずいている。
そんな中、
少年が、
不意に両手を上げた。
少年の声は、
全く震えていなかった。
な、なんなの……?
目の前に立っているのは、
たしかに小さな背中の少年なのに、
その行動と声は、
百戦錬磨の経験を積んでいるかのような、
落ち着きを感じる。
こんなことって、
あるんだろうか?
強盗も同じことを感じたのか、
少しだけ気圧されてように、
目を険しくして怒鳴りつけてる。
その声量に、
みんなの体がびくつく。
真正面から、
こんな敵意むき出しの怒声を受けた少年が、
平気でいられるわけ……。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。