鋳琉麻side
もういきなり過去の話に入るか
俺の家は、両親が毎日ケンカしてた
何を理由にケンカしてたのかまでは覚えてねぇ
毎日毎日、大声でケンカして、そのたびにご近所さんが怒鳴り込みに来て……
地獄みたいな空間だった
学校でも、イジメがあった
俺の家の近くに、俺のクラスメイトがいて、大げさに俺の家のことを話して、当時小学生だったみんなは、それを信じた
俺は毎日毎日みんなからイジメられた
先生はみんな、見て見ぬふりをして、助けてくれなかったんだ
そんな俺にとって、唯一の救いだったのが、湊禿
こんな俺に優しくしてくれて、俺は湊禿に会うたびに湊禿に甘えてばかりだった
俺は、気づけば湊禿の家に居座ってた
学校が終わると、自分の家ではなく、湊禿の家に向かって帰っていた
湊禿は、帰ってくると、いつも笑顔で「おかえり」って言ってくれた
当たり前のことかもしれないけど、俺にとってはすごく嬉しいことだった
だって、両親はいつもケンカに夢中で、俺が学校行くときも、帰ってきたときも無視だったから
それに、ご飯が用意されてることすら嬉しかった
毎日あったかいご飯が食べれて、めちゃくちゃ嬉しかった
ピピピッ ピピピッ
風邪引いたときも、湊禿はずっと世話してくれた
わがままを言っちゃいけないって思いながらも、どうしても湊禿の優しさに甘えちまう自分がいた
「愛されてる」って、初めて自覚した
「愛情」って……こんなにあったかいものなんだなぁっていうのを、湊禿が教えてくれた
だけど……俺が中学生になった頃
恐ろしいことが起きた
トコトコトコトコ
俺の親父が、何故か湊禿の家に来てた
親父は、湊禿をボッコボコにしてて、湊禿はボロボロになりながらも、俺を守ろうとしてくれた
たしかに俺は、湊禿の子供じゃない
だけど湊禿は、自分の子供のように育ててくれた
親父がくれなかったものを、湊禿は全部くれた
その五分後、警察が来て親父は逮捕された
湊禿もすぐに病院に運ばれて、手当てを受けた
骨折とか打撲とか………なんか色々すごかったらしい
なんにせよ、俺は湊禿が無事ならそれでよかった
かっこ悪く湊禿に抱きついてめっちゃ泣いてたんだよ
だけど、それくらい嬉しかった
湊禿が居なかったら、俺はどうなってたか……
想像するだけでゾッとする………
………すげぇ楽しい
こんな風に楽しめるのも、この人たちのおかげだ
今まで、話したことはなかった
変に同情されたくなかったから
でも………話したら、なんかスッキリした
この考えは、もう曲げない
もう、決めたから
俺は、らんに心臓を移植する
NEXT 💬×5



















編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。