中也がポートマフィアに来て一週間が経った。
向かい合って立つ彼とあたしの間にピリついた空気が流れる。彼もあたしも素手ではあるものの、互いに本気で戦えば無傷では済まないだろう。
先に動いたのは彼だった。
ギリギリで避けて尚、風圧を強く感じる蹴り。
多分異能で速さと重さを上乗せしているんだろう、器用なことだ。
一回、二回、三回。
次々に放たれる蹴りをなんとか避け続けてはいるが、あたしの方が体力は劣っているからこのままだと押し負けるのは確実だろう。
──それなら。
わざと、蹴りを受け止めた。響く衝撃に腕が痺れるけれど、このくらいなら特に問題ない。
掴んだ脚をぐいと引き、バランスを崩したところに拳を──。
脚をぱっと放す。そのまま転んだ中也に文句を言われたが
スルーした。
そう、戦闘訓練である。ただし、出来るだけ怪我しなければ異能だろうと武器使用だろうと何でもありの。
ふふん、と笑って中也を見る。くしゃくしゃと頭を掻きながら立ち上がった中也は悔しそうな顔であたしを見た。
……茶化したけれど、彼のそれが悪癖であることは間違いない。
だってあたしは、ピンチの時は格下相手だろうと
異能を出し惜しみなんてしない。負けたくないから。
もし中也と接戦になれば、あたしは絶対に異能だって使う。
このままじゃいずれ、彼は取り返しの付かない局面で負けるのではないかと少しだけ怖かった。











編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!